117/1310
ひとりきり
祐斗は何かを忘れているような気もしたが、今は吉岡の後に続くしかない。吉岡は時折、祐斗がついて来てるかを振り返って確認している。
吉岡は明かりもないのに、行く場所が分かっているのか、するすると歩いていく。実際には歩いているというより、なめらかに滑っていくようだ。
そして、吉岡は一つの部屋の前で足を止めたかと思うと、すうっと入っていった。
祐斗は躊躇いもなく、そのドアを開けた。さっきの部屋とは違って、いつも使われているかのように簡単に開いた。
部屋に入るとそこは、書斎として使われているようだった。祐斗は懐中電灯を消した。この部屋だけは、何故か明るい。後から入ってきたむつと西原もペンライトを消した。
「吉岡さんが二人居る」
祐斗の言った通り、革の張られた大きなソファーに座った吉岡とその後ろに控えるように立つ吉岡が居た。
ソファーに座っている吉岡は、にやにやとしていて気味が悪かった。




