105/1310
ひとりきり
颯介は、くすくすと笑った。最初から心配なんか、してなかったよというような様子に祐斗は、信用されてるのかと思うと少し嬉しかった。
「それにして…急ぐ必要ない仕事なんだよね?何でわざわざ今日、また行くんだろ」
祐斗にも分からず首を傾げた。
颯介は、もうその事に対して興味を失ったのかパソコンに視線を向けた。かたかたと静かにキーボードを叩く音だけしか、聞こえなくなった。
祐斗がぼんやりとしていると、こつこつと足音が近付いてきた。ドアが開きむつが顔を出した。着替えにでも帰っていたのか、いつものオフィスカジュアル的な服装から、スキニーパンツとパーカーになっていた。
「あ、おかえり。出るよ」
「はい、行ってきます」
「颯介さん、あたし直帰する。終わり次第、祐斗も帰らせるね。あとお願いしまーす、祐斗さっさと行くよ」
「了解。気を付けてね」
颯介に見送られ、祐斗はむつの後に続いてエレベータに乗り込んだ。




