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ひとりきり
むつは腕時計で時間を確認した。
「なら、授業受けて終わったらすぐに戻ってくる事。そしたら、あたしと一緒に現場行って、仕事を片付ける。良いね?」
提案ではなく、決定事項のように言われ、祐斗は否とは言えずに頷いた。
「なら、早く帰って大学行きなさい」
「はい。すみません、行ってきます」
「いってらっしゃーい」
慌てて立ち上がった祐斗を、西原は手を振りながら見送った。むつはすでに別の事を考えているのか、祐斗の方を見もしなかった。
祐斗は、少しそれを気にしつつも鞄を持つと走って出た。少し遅刻するかな、くらいで急げば十分に間に合う。
仕事で失敗するよりも、授業をおろそかにする方がむつと颯介は怒る。祐斗はそれを分かっているだけに、走るしかなかった。




