竜興くん内政に奔走する?
大変長らくお待たせいたしました。
俺の名は、竜興である。
平凡な日常を謳歌する、しがない美濃の人(自宅警備員)だ……。
さて…、今年は当初の予定の通り、2つの大きな戦に介入をする事ができた。
『桶狭間の戦い』と『野良田の戦い』だ。
結果は大満足である。
『信長』も『長政』も戦いには勝ったものの、歴史とは異なり大きく躍進はできなかった。
土岐家の影響力を、かなり増大できたのではないかと思っている。 俺も鼻が高い。
それに、竜興のライバル2-トップを追い落としできたのは、生き残りの意味を考えれば非常に嬉しい。
歴史上では、奴らは実際に俺を追い落とし、没落させた犯人だ。
自宅警備を愛する歴史好きとしては、世話になったゲームの主人公を貶めるのは多少心が痛むが、そこはガマンである。
「スマン! 恨むなら、俺を斎藤竜興にしやがった奴を恨んでくれぃ」
俺は目を閉じ、そう呟いた。
さて、供養(w)も終わった……気を取り直そう。
俺は領主である。 まずは、本腰を入れて内政に心を砕くべきであろう。
手に入れた土地を管理もしないで放置しては、並み居る強豪がひしめく戦国の世を生き残れない。
おれは、直轄領(自分の縄張り)は、生命線だと思っている。
親父からもらった鷺山城(稲葉山の近く北東)と一緒に大切にして行きたい。
自分が直接差配するのは、新たに手に入れた木曽川と日光川のあいだに挟まれた土地である。
(現在の木曽川町、津島市、愛西市といった所。但し、この時代では島や湿地の部分もある。)
メインの計画としては、津島の町や蟹江をさらに発展させようと思っている。
美濃と尾張そして北伊勢の一大商業圏を確立していく方針だ。
木曽三川の網の目状に流れる水運は、我が家の本拠地.金華山や大垣、津島、熱田の他、日光川・牧田川ともつながっている。
『烏江湊』から関ヶ原-不破-柏原の陸路を経由して、六角氏の琵琶湖水運とも連携している。
俺はすでに、川並衆と佐治水軍を引き込んだ。
伊勢湾の支配も、今のところは順調である。
今後は、土岐水軍を設立し各地の水軍衆・海賊を支配下に置きたい。
海上の輸送ルートの支配と警備、それと、輸送力そのものが狙いである。
まずは、商業を重視して資金を稼ぐことにした。
信長が握っていた津島の権益をまるまる手に入れられたのは正直デカイ。後は影響力を拡げるだけである。
港、川湊、宿場と産業道路を整備して行きたい。
まあ、川並衆や商人・地侍を使い、無理のない範囲で『貧農救済事業』として整備事業を進めていこうと思う。
当然ではあるが、集めた人夫は『有事』には足軽として使う予定だ。
一方の農業の開発は、生産性の良い村をモデルにして技術を底上げしてゆく方針だ。
農業指導員の育成が必要だろう。接ぎ木や、挿し木、挿し芽、摘花なども普及させよう。
新田開発だが、こちらは治水と連動して慎重に行ってゆきたい。
『木曽三川は暴れ川』である。
実際に美濃・尾張・北伊勢の治水とは、木曽三川との戦いである。
地元の言葉に「四刻八刻十二刻」というものがある。
これは、大雨が降った時の洪水の到達予測時間の事であるらしい。
揖斐川はおよそ四刻(8時間)、長良川は八刻(16時間)、木曽川は十二刻(24時間)で洪水が到達することを意味している。
この地域の住民が、川と正面から戦い、水害に敏感であることが良く分かる。
治水を避けて通れない。
とりあえずは、従来通りの堤防の強化を行うつもりだ。
予備知識や入念な事前調査もなしに、いきなり霞堤やその他を作ったりはできない。
信玄の甲府とは、水量・流域面積が違いすぎる。
測量だけでも一大事業になる。(今は戦国だムダなことに労力は使えない。)
それに、様々な利権の調整なしに、大規模な治水事業や三川の完全分流などはできないのだ。
《『広野川事件』や『宝暦治水事件』の教訓を胸に刻んでおくべきであろう。》
― 『宝暦治水事件』では、薩摩藩士51名が幕府への抗議のため次々に自害した。
他に藩士33名が劣悪な環境により病死し、工事完了後に薩摩藩総指揮の家老平田靱負も自害した。
まあ、江戸幕府が腐っていやがるとも言えるが……。
お手伝普請で、かかった費用は40万両だったそうだ。
ハッキリ言って、薩摩が幕府に恨み骨髄で倒幕したとしても当然とも思える。
江戸城を火の海にしなかっただけでも、薩摩藩士は凄い自制心の持ち主だと俺は思う。
『薩摩はスゴイ!!』 シビレる憧れるぅ~。 ―
まあ余談は、そのくらいにしよう。
川を制することを考える前に、『川と共存し利用させてもらう』という考えで対応したい。
そもそも下流部を整備しすぎて、美濃に大きな被害が出てしまっては『本末転倒』の大問題である。
というわけで、いざ洪水の際に逃げ込める『安全な避難場所』を設けることにしようと思う。
多少消極的ではあるが、まずは人命の救助 そこからスタートだ。
こちらは現地の者を使うこととする、基本は、受益者負担である。
そして産業については、いろいろ思っていることがある。
青苧なんかは栽培が楽である、というか現代だと『しつこい雑草』扱いだ。
それなのに、上杉謙信の資金源になったらしいから、これは使えると思う。
栽培して上手くいくようであれば増産させよう。
まあ、青苧座がうるさいかも知れんが、製品と布地を美濃から売れば問題はなかろう。
素材の名前を、『青芋・カラムシ』などと変な名前ではなく、『真麻』とでもしておこう。
『まおちゃん』いいではないか。
名前の美しさは、大切である。
それよりも、美濃の生糸と競合しないように注意したい。
そういえば……、そろそろ三河が、綿花を栽培しているのだったか?
ちょうど今頃から、『三河木綿』が産業として販路を拡大して大きく成長し始める時期のはずである。
商人を使ってまずは種を手に入れよう。
これから起こるであろう三河一揆のどさくさに、三河の綿花は火をかけておこうかな?
起きなければ、仕掛ければいいや。農民と職人をひき抜く手筈を整えておこう。
京の商人には、『三河で取れる、”木綿”とかいう代物は、田舎の肥だめの傍の雑草から取れる、頑固なカビのようなモノの塊』とか噂を流して、『三河木綿』のめを潰しておこう。
こちらは『濃尾上布』と命名して、木綿の利権を確立しておくとしようか……。
それなら、栽培は三河にやらせても良いだろう、土岐家が原材料を一括して安く買い上げるのだ……。
「うんうん、これならいけそうだ」
「お一人でにやにやと、何を考えておいでなのですか? 」
泰香が、書斎で独りニヤついている俺に声をかけて来た。
「俺の考える、領地の内政のプランだよ!」
俺は、計画書を無双を込めて書いていたところだ。
「はあ、見せてもらってもいいですか?」
「だ~め、機密だから」
「そうですか? では、仕方がありませんね。お手伝いは一切ナシと云うことで……」
そう言い放つと、すげなく立ち去ろうとする。
「あ~っ、うそうそっ、手伝って~! おまえが手伝ってくれなきゃ困るよ~」
慌てる俺!
「それはそうと、例の物が出来たそうですよ」
「マジ!」
(というか、計画書の件はスルーですか?)
「真面目に、偽りなくそうです!」
「やりぃ~!」
まあいいや、早く例のモノを見たい!
俺は、待ちに待った吉報に心を高鳴らせ、書斎から飛び出し廊下を走り抜け……、草履を履くのももどかしく外へと駆けだした。
「……はあ~、やれやれ。 若様もまだまだ子供ですねぇ! そこがまあ可愛いのですけれど……」
元気に走り去る竜興の後ろ姿を微笑みながら見送り、そう呟くのであった。
まずは一話、お送りいたしました。




