清洲へ堂々の凱旋をする! 『尾張の一番長かった日(下)』
長い一日が終わります。
時刻は3時から5時といったところか。
信長勢、今川義元を討ち取り勢いづき、追撃戦を展開した。
「勝ったぞ!」
信長は小さく呟いた。
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信長勝利の報が、尾張南東部(星崎あたり)にのみ拡がった。(虚報)
民の中に紛れ込んだ土岐家の手の者(道化定重・松原義保)が、お祝いの気分が盛り上がるように順次扇動している。
いつの間にか、出所不明の酒が出まわる始末である。
道化だけに、こういうのが上手いのであろうか?(いい拾い物をしたものである)
勝利の報告に民衆が外へとあふれだす。
いずれ、落ち武者狩りも始まるだろう。
帰りの街道を民衆で封鎖する作戦は、とりあえず成功した模様だ。
同3時
星崎付近とは打って変わって、清洲城下が敗戦のうわさに不穏になる。
竜興の手の者が『信長討ち死!』の報告を送り城内を混乱させているのだ。
その混乱の隙に、半兵衛の配下が留守居役の何名かを『協力者』に仕立てあげた。
ニセの命令で、将兵の家族を城内へ受け入れる。
犬山勢(仮)が、訃報を聞きつけ、清洲城へ応援に駆けつける。
門番の確認もそこそこに、城内受け入れの命がでる。
何の問題もなく中島豊後守・竹中重元配下の兵500が、清洲城内に侵入した。
他にも近隣から1000ほどの一般の兵士(地侍や農民兵)たちが清洲城下に集まって来ていた。
4時 竹中父子は、清洲城の主要部の実質制圧を完了させた。
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同4時 信長軍の勝利は疑いもなく確定した。
お祝いの民衆が、ぞろぞろと桶狭間近くに現れ始める。
そうしているうちに、今川方の大高城、鷲頭・丸根砦が放棄された。
信長も兵力差を考え、これ以上の無用な追撃を避けた。
5時
物見の報告により。信長は、大高城、鷲頭・丸根砦が完全に放棄されたことを確認した。
信長は、鳴海城の岡部勢の動向を警戒し大高城に入る。
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同5時
斯波義銀・織田信安・信賢父子が、2000の兵を引き連れ、堂々清洲城入りを果たした。
熱田での勝ちいくさを聞き、城下が沸き立った。
「守護様が、今川の尖兵を撃退したそうな」
「ありがたや」
「さすがは守護さまじゃ」
「熱田のお宮を守られたそうじゃ!!」
「なんとも目出度い」
「美濃から援軍を呼んだそうじゃ」
「それならば、勝てるかも?」
「じゃな!」
噂が噂を呼び、民衆に大歓声で迎えられた。
清洲城の留守居役達は、旧主である斯波義銀を城内へと受け入れざるを得なかった。
元々清洲城は、彼の家のものである、何も問題ないのである。
斯波氏は、数年ぶりの清洲帰還である。
清洲へ堂々の凱旋をする、義銀であった!
清洲城の主導権はさり気なくも、強引に斯波義銀に移行した。
「何を呆けておる、先ずは籠城の準備を先にいたせ!」
斯波義銀は、今川の来襲に備え、清洲城の守りを固める様にと改めて指示を出した。
熱田を護った実績というものは、とてつもなく大きい。
皆が素直にその指示に従った。
義銀は、周囲の者に気炎を吐いた。
「信長のせいで、尾張の外交はメチャクチャである。
今や、四方が敵ばかりではないか! かような状況を招くとは、為政者としてなってはおらん。
信長の奴に任せた儂が愚かであったわ」
「……」
(この状況下で、信長の擁護をできる者など誰もいなかった)
「信賢!守護代として儂の補佐をせい」
斯波義銀は、織田信賢に『尾張守護代』として働くよう命じることを宣言した。
「ははっ」
織田信賢が義銀の要請により、正式に守護代を拝命した。
「南の護りを頼む、那古屋城に入ってくれ」
「お任せあれ」
彼の麾下2000の兵で那古屋城の守備をあらたらめて命ぜられた。
「信安、美濃との早急な交渉を頼む、多少の譲歩は構わん今は危急存亡の折じゃ!」
「はっ、心得ております、お任せあれ!」
「うむ!それとは別に、早急に竜興殿に繋ぎをつけてくれ」
そして、元岩倉城主織田信安には、美濃とのパイプ役を勉めるように命じた。
早急に『美濃との正式な同盟』を諮る為だ。
土岐義龍の元へと早馬が走った。
この時点で、竹中の手の者によって信長派を完全に捕縛した。
反対派の排除が、秘密裏になされた。
清洲城に集まった、国人・地侍は1500名は、斯波義銀の配下となった。
織田家中の旧斯波派・旧土岐派の家臣も、それぞれに取り込みが行われた。
夕方7時
― 稲葉山城 ―
土岐義龍は、斯波義銀の要請に応じ2500の兵を送る約束をした。
長井利道、不破光治、相場国信、松山正定らが、清洲城に入城する予定だ。
それに先行して、土岐竜興が清州城へ参上した。
予定通りである。
「竜興殿、誠に心苦しいのではございますがご助力をくだされい」
土岐の若殿に頭を垂れる義銀。
「お顔をお上げください、義銀殿」
「いやしかし」
「尾張を想う義銀殿の気持ち、この竜興よく判りました。喜んでご協力いたしましょう」
爽やかで、誠実な土岐竜興の態度に清洲城の人間は皆、好感をもった。
斯波義銀は今後の籠城戦を考え、子女および人質をより安全な岩倉・犬山へと移送した。
(実は完全な情報封鎖のためである。)
守護の命に、留守居役も従わざるを得なかった。
とりあえずは、国府宮へと移動を開始した。
国府宮、妙興寺、真清田を抜け、一行は夜道の中、岩倉へと向かった。
移送には、土岐家の兵が護衛にあたった。
夜8時
守護代織田信賢、那古屋城に入城した。
守護代として、彼が尾張防衛の主力を率いる事となる。
斯波氏の復帰に伴い、状況の好転を感じた国人・地侍が那古屋城にも集まってきた。
その数700名ほど、すべて信賢の岩倉勢の与力に組み込まれた。
夜に紛れ、重元とその配下の兵500は山崎城へと移動した。
~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~
織田信賢の援軍に偽装した美濃兵(明智)が庄内川周辺を警備して回る。近づく使者を徹底的に捕縛してまわった。
「怪しき者は、捕らえよ!必要ならば殺しても構わね」
光秀の非情な命令が飛ぶ。
庄内川以南では、様々な情報が飛び交った。
ただ、川を無事に渡った使者は一人もいなかった。
一時期は、『信長勝利』の噂も立ったが、それはいつしか『斯波氏の復活』へとすり替わっていた。
『熱田の宮を御護りしてくださった』 守護様として、なかなかの人気振りである。
深夜すぎに、『今川撃退の報』がもたらされる。
しかしそれは、主である尾張の守護.斯波義銀の功績となった。
詳しい内容は、攪乱目的の虚報により塗り潰され、ただ、めでたいと相成った。
深夜のため、民衆は何も知らないでいた。
清洲城内には安堵の溜息が漏れた。
この頃には、信長の親派は皆、守護はに鞍替えしている、頑迷な者は人知れず手により排除されていた。
― 翌朝 ―
清洲・那古屋城下は、朝からお祭り騒ぎである。
今川の退却が確定的になると、お祭り気分も盛り上がった。
『守護の手勢により撃退された』とも噂された。
「復活した守護が、配下に命じ今川勢を撃退したのだ」
「流石は、守護様!」
「織田義賢様が、守護代になられたそうじゃ」
「お父君の、信安様が土岐家と懇意じゃから、美濃から援軍をいただけたそうな」
「いや、守護様が要請したんじゃないのか?」
「そうかな?」
「なんにせよ目出度い」
もちろん、守護の活躍と伊勢家の働きが噂の中心だ。
昨夜より、斯波家の復活を喧伝し、日和見だった国人・地侍を取り込んだ。
土岐家としても、『義銀・信友に協力し尾張を救った美濃』として、民衆にいい印象を与えた。
清洲や那古屋では、信長の生存は未確認であった。
「おそらくは、いつものように上手く逃げ回っているのでは」という噂《情報》が出まわっていた。
「「信長なんてどうでもいい」」
それ以上に、頼れる守護が帰ってきたのである。
しかも、美濃・近江・越前にも伝手があるのだ、頼もしいではないか。
「信長も多少は頼れるが、なにせムラっ気があるし、何より敵が多すぎる」
「自分勝手でわがままだ」
「今川が襲ってきたのも、元をただせば信長が好き勝手したせいだ」
「あれでは、国主は務まらない、精々が奉行人の器である」
「いや、それもムリだろう?」
尾張中で、気楽なうわさ話に花が咲いている。
昨日の、いきなりの出陣も、密かに「逃亡を計ったでは無いのか」と市中では噂されている。
9時半
清洲に美濃からの援軍2500が到着。
これで、尾張の危機は完全に去ったと皆が安堵した。
土岐竜興が、『斯波の帰還と今川撃退』の、お祝いに訪れる。
ここで、会談がもたれた。
まだ若い斯波義銀である、とりあえず適当な子女を養女として迎え、土岐竜興に側室として輿入れさせることで合意した。
土岐竜興には、すでに六角家からの正室が内定しているためである。
養女であるし、そんなものであろう。
犬山城に使者が走り、守護.斯波義銀の命が伝えられる。
犬山城にもようやく、尾張の危機が去った事が告げられた。
協議の末、一部の兵を那古屋へと廻した。
守護と守護代の声掛けに、尾張の国人・地侍は恭順の意思を示した。
11時
美濃の援軍1000が、那古屋城の守備の手伝いに入った。
物見の報告では、星崎城主 岡田重善が信長方に付いた模様である。
信長も尾張に向けてしきりに物見を放っている、敵対の意思ありと推察された。
~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~
この戦の結果、
土岐・斯波・織田(岩倉)家のトリオが庄内川以北を完全に制した。
那古屋城・山崎城も固めている。
津島・国府宮・真清田・熱田等の各寺社は、守護に好意的だ。
尾張の国人・地侍は、守護である斯波義銀公に恭順の意思を示した。
潔癖な信長は、彼ら裏切り者をそう簡単には許さないだろう。
彼らが、新しい美濃の盾となるのだ。
信長に付いている、森家や荒子の前田家とかも、優遇させる予定だ。
もちろん離間の策のためである。
(とは言え守護に従うのだ、よく考えれば当然ではないか?)
土岐家としては、津島と日光川以西を斯波家より移譲された。
ついでに、切り取った服部氏の旧領、蟹江・市江島を領有する。
竜興は、使者を送り佐治水軍を味方に引き入れる予定だ。
これで、伊勢湾岸周辺の権益は我が土岐家が確保することができる。
念願の海と、港そして水軍だ。
「先ずは、信長いじめはこの辺でいいだろう」
俺は信長の強かさと我慢強さを見誤っていた……。
ようやく、迷い犬の”銀ちゃん”を、お家(清洲城)へ返すことが出来ました。
自宅警備員は、心優しい奴なのです。
竜興は、念願の木曽三川流域を手に入れました。
治めにくい地ではありますが、とても嬉しいみたいです。
長良川を使えば、自宅の離れ(改造船)に居ながら、各地を巡回出来ますからね。
竜興は自閉症的ひきこもりではありません。が、
”自宅がいちばん落ち着く””部屋にいるのがベスト”なひきこもり体質ではあります。
すぐに部屋に帰れる安心感が、いいのでしょうか?
漢字のルビが見えにくいというご指摘をいただきました。
読みにくいというご意見が多ければ、読みやすさ重視で変更するつもりですが、
いかがでしょう?
ご意見、良いアイデアをお待ちしております。
ぜひ、感想も下さいねっ!
あと作者のうっかりミスで、要らん一文が話をややこしくしていました。
>次に『喜太郞の改名、そして……』の冒頭部分も
いまいち意味が分からない…
これも盲点でした。
『自宅警備員な俺』という話が間に入ってしまっているのを忘れていました。
投稿順を変えたために起こった矛盾ですね。
竜興の彼女は女性です、年上の美少女です。
親父ではありません(笑)
”先の話は、親父のことである。”
とりあえずここだけ削除しておきました。
あとで改めて推敲いたします。




