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取り憑かれた公爵令嬢  作者: 龍翠
番外編(S)・後日談(A)

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257/259

旅行1

壁|w・)書こうと思いながら書いてなかった旅行編だー!

例のごとく宣伝も兼ねてるよ!


 学園を卒業して一年ほどの頃。爵位を正式に継ぐ前に必要なことを学んでいると、レイが訪ねてきた。先触れはあったがまだ用件は聞いていない。とりあえず自室に案内しておいた。

 同席するのは、半強制的にさくら。言っても離れないので諦めている。


「実は、一度クラビレスの方に帰ることになったんだ」

「へえ。そう」

「う、うん」

「…………」

「…………」


 沈黙である。何がおかしいのか大人しく座ってクッキーをかじっていたさくらが笑いを堪えているが、本当に何なのか。


「ええっと……。後ほど、正式に連絡があるとは思うんだけど……。父上が、リリアを是非ともお招きしたいって」


 それはまた、突然だ。確かにリリアはアルディス公爵家を継ぐことになるが、それはまだ先の話だ。今はそのために、専門的なことを学んでいるところなのだから。つまり、今のリリアは公爵家の令嬢、ただそれだけである。


「どうして私を呼びたいのよ」

「…………」

「ああ、そうね、そうでしょうね……」


 レイの視線がわずかにさくらに向いたことで察しがついた。さくらのことはすでにあちらの国にも伝わっているのだろう。

 ということは、今後はこういうことが増えてくるのかもしれない。少しだけ、憂鬱だ。


「私を呼び出したいけど直接は言えないから、リリアを呼び出すってこと? そういうの、嫌い」


 さくらが不満をたっぷりこめてそう言うと、レイは苦笑しつつも分かっていますと頷いた。


「さくら様の性格だと間違い無く不興を買うと思いまして。こうして直接説明しにきました」

「なるほどー。ならばよし?」


 単純すぎないだろうか。

 リリアは小さくため息をつくと、レイに向き直った。


「お父様にも相談したいから、少しだけ待ってもらえる?」

「もちろん」

「というわけで、さくら。聞いてきなさい」

「あいあいさー!」

「え」


 さくらが立ち上がり、大急ぎで部屋を出て行く、レイはそれを、唖然とした様子で見送っていた。一体何をそんなに驚いているのだろうか。


「リリア様。普通は精霊様を伝言に使うということはしません」


 少し離れた場所で待機していたアリサがそう教えてくれた。納得した。普通なら、たとえ魔導師であったとしても、伝言で精霊を使うなどあり得ない。愛想を尽かされてしまえば、そこで終わりなのだから。


「あ、あの、リリア。いいの?」

「別にいいわよ。たまには働かさないと」

「ええ……」


 相手が他の大精霊ならもちろん態度を改めるが、さくらなのでこれでいい。あの子とはこの距離感が一番いいのだ。

 そうして困惑しているレイと共に待っていると、程なくしてさくらが戻ってきた。満面の笑顔なので、どうやら父は許可してくれたようだ。


「ただいまー! 別にいい、だってさ!」

「そ、そうですか」


 あからさまにほっとするレイ。王位継承権は低いとはいえ、仮にも王族なのだからもう少し表情を隠す努力はした方がいいと思う。わざわざ指摘してやるつもりもないが。


「滞在期間とか、そういった諸々はレイに任せるわ。好きにして」

「え? いや、それは……。いいの?」

「ええ、もちろん。ただし、私も決して暇ではないの。常識の範囲内でお願いしたいところね」


 にっこり『笑顔』で言ってやれば、レイは顔色を青くしながらも頷いた。




「あからさまに試したね」


 レイが帰ってから、紅茶をちびちび飲みながらさくらが言った。事実なので否定はしない。この場合は、クラビレスを、というよりはレイを試しているのだが。

 レイがこちらに抱く感情はもちろん理解している。だからこそ、全てを任せた。レイはおそらく、観光などの日程も盛り込みたいはずだ。自分が案内するという形で。それをどこまで組み込むか、今から少しだけ楽しみだ。


「悪女だ。悪女がいる」

「あら。この後苺大福を買いに行こうかと思っていたのだけど、いらないのね」

「いる! いります! ごめんなさい!」


 悪女という評価は不本意なので少しだけ意地悪を言ってみれば、あっさりと謝罪された。いつも通りのさくらで、なんとなく、少しだけ落ち着けた。




 そうして、リリアは今、クラビレスへと向かう馬車に乗っている。リリアと同じ馬車にいるのは、世話係にアリサと、案内役のレイだ。さくらは言わずもがな、である。

 予定された日程は、行きと帰りにそれぞれ一ヶ月、滞在期間も一ヶ月、計三ヶ月となっている。長いか短いかで言えば、まあそんなものかな、と納得できる期間だ。


 どのような用件かは分からないが、リリアと、そして誰よりもさくらと顔を繋いでおきたい、というものだろうと思うので、さほど時間がかかるものではないはずだ。

 そう思うと観光の方の日程が少々長い気もするが、リリアも最近は休みなく物事を学び続けていたところなので、休暇には丁度いいだろう。丁度良い案内役もいることだ。退屈はしないはず。


「ところでレイ。少し物々しすぎない?」

「え? そうかな。普通だと思うけど」


 レイの戸惑いを見ると、どうやら演技ではなく、本当にそう思っているらしい。

 クラビレスへ向かう馬車は六台だ。三台目にリリアたちが乗っていて、四台目と五台目は食料などの旅の物資。一台目、二台目、六台目には護衛の兵士が乗っている。さらには馬車の一団の他にも、馬に乗った兵士も同行していた。

 正直に言えば、護衛が多すぎると思う。リリアがそう言うと、レイは何とも言えない曖昧な笑顔になってしまった。


「んー……。なんというか、あれだね。リリアは私にとても毒されていると思います」

「は?」

「こわい。いや、あのね。王族の護衛だよ? さらにはリリアというお客様までいるんだよ? 万一のことを考えると、人数も多くなるよ」

「あら。でもこの間ティナのところへ遊びに行った時は私とさくらにアリサ、あと御者の兵士の四人だったじゃない」

「ああ、だってそれは……」


 さくらが何かを言う前に、突然前方の方が騒がしくなった。瞬時に警戒して扉に張り付くレイはさすがと言うべきか。

 誰かが駆け寄ってくる足音がして、すぐに声が届いた。


「殿下! 賊です!」


 レイを殿下と呼ぶということは、クラビレスから来た兵士らしい。その内容に、レイは小さく舌打ちした。


「何人だ!」

「いえ、それが……」

「ん……?」


 口ごもる兵士と、首を傾げるレイ。それに対して、リリアは、


「ああ、もう捕まっているのね」


 いつものことなので驚きもしない。


「え? あの、リリア?」

「無視して進みなさい。精霊たちが王都まで運んでくれるから」

「は、はあ……」


 クラビレスの兵士は困惑しているようだったが、レイはその通りにと命じるとすぐに動き始めた。さすがにレイの命令にはすぐに従うらしい。

 やはりクラビレスの兵士はこういったことに慣れていないようだ。少しだけ初々しい。そしてすっかり慣れてしまった自分が、ちょっとだけ、悲しい。


「あの、リリア、どういうこと?」


 レイの問いに、リリアは何も言わずに、さくらを指差す。


「襲ってくる人は捕まえて王都に運ぶようにって指示しました!」


 どや! と自慢気に胸を張るさくら。殴りたい。


「なんで!?」

「はいはい。まあこういうことよ。護衛はとても有り難いけれど、少なくとも今回についてはかなり退屈になると思うわよ」

「えー……」


 リリアから言えることは一つだけだ。

 慣れなさい。




 道中、一定距離ごとに宿場町があるのだが、これだけの人数での移動となるとやはり予定通りにはいかないもので、野営をすることになった。

 兵士が設営してくれたテントを使うのは、リリアとアリサの二人だけだ。さくらは数えない。


「差別だ!」

「はいはいごめんなさい。それよりも、明かり」

「はーい」


 さくらが手を叩くと、テントの中央に仄かに光る光球が現れた。テントの内部を優しく照らしてくれる。さらには内部を快適に温めてくれるため、毛布は最低限で十分になる。


「まったく。次期公爵のこの私をこんなテントに押し込めるなんて。不敬よ」

「あははー。以前のリリアならすごく言いそう」

「ふふ。そうね。さすがに誰かに言いはしないわよ」


 今思い出しても、あの頃の自分は傍若無人だったものだ。恥ずべき過去ではあるが、けれどそれがなければ、今の自分もいないことになる。


「さくらとも出会えていなかったことになるのよね」

「んー。そうだね。そう思うと、不思議だよね。そう、きっとこれは、運命だったんだよ……!」

「きもちわるい」

「ひどい」


 拗ねたように頬を膨らませるさくらに笑いながら、毛布を被る。明後日にはクラビレスに到着予定だ。あちらでどうなるか分からない以上、休めるうちに休みたいところだ。


「アリサも早く寝なさい」

「あの、はい……。いいんですか?」

「なによ。私の隣では不満なの?」

「いえ、あの、そういうわけでは……! で、では、失礼します……」


 アリサが毛布に入ったことを確認して、さくらに合図する。あいさー、と気の抜けた返事の後、光球の光が弱くなって、テントの中は薄暗くなった。さあ、早く寝るとしよう。


「ぶー」

「はいはい。ほら」

「わーい」


 手招きすると、さくらが毛布の中に潜り込んでくる。いつまでたっても子供みたいな子だ。そのことに呆れもするが、同時に変わってほしくないとも思う。


「クラビレスはどんな国なのかなー。楽しみだね」

「ええ、そうね」


 レイの生まれ故郷。さて、どんな国なのだろうか。

 少しだけ楽しみにしつつ、リリアは目を閉じて眠りに落ちた。




 なお、道中があまりに順調だったために、一ヶ月の旅程が二週間に短縮されてクラビレス側が大騒ぎになっているのだが、リリアがそれに気付くことはない。


壁|w・)到着すらできなかった。

これ以上書くと連載中の方が滞ってしまうので、ここで区切り、です。

続きはいずれ、また、えっと……。半年以内に……。


というわけで、恒例の宣伝です。

新作始めました。いじめられっ子が幽霊少女と出会って、わちゃわちゃしながら状況の改善に向けて頑張るお話。恋愛要素は薄めだけど、いずれ入ってくる、はず。

『幽霊少女によるいじめられっ子救済計画!』

下のリンクからでも行けるようにしていますので、

暇つぶし程度によければどうぞ、なのです。

ではでは!

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― 新着の感想 ―
[良い点] リリアとレオにおまけのさくらを襲う命知らずがいた。 王族なら王家の旗とかで解るのにね! [一言] 更新お疲れ様です これはリリアはデートイベントですね! さくらは初めての外国なので食べ…
[一言] あくじょだ~、あくじょがいる~。 >「襲ってくる人は捕まえて王都に運ぶようにって指示しました!」 (結果的にとはいえ)さくらに弓を向けるとこうなるのねwww 大精霊(笑)に敵対してその程度…
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