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取り憑かれた公爵令嬢  作者: 龍翠
番外編(S)・後日談(A)

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S3 別れの手紙

壁|w・)番外編その3。時期はS2の後ぐらい。

『リリアへ

 今、これを読んでいるということは、私はもういなくなってると思います。急にいなくなって、リリアに嘘ついて、ごめんね。

 今まで本当にお世話になりました。今のリリアなら、私がいなくてももう大丈夫! 私はもう一緒にいてあげることはできないけど、リリアが幸せになれることを祈っています。

 もう会うことはできないけど、ずっとずっと、友達だよ。元気でね。

 さくらより』



「なにこれ……」


 現在、リリアがいるのは寮の寝室だ。机の引き出しにこの手紙が入っており、読んでみるとさくらからの別れの手紙だった。まさか、女神にでも呼び戻されたのか。リリアが慌てたように寝室を出ると、


「あ、リリア。おはよー」


 机にだらしなく伏せて紅茶を飲むさくらの姿があった。


「え……? さくら? どうしているの?」

「へ? な、なに? いない方が良かったの……?」


 泣きそうな表情になるさくらに、リリアは慌てて手を振った。さくらの対面に座り、持っていた手紙を差し出す。さくらは怪訝そうにしつつもそれを見て、お、と声を上げた。


「まだ持ってたの? 恥ずかしいから捨ててほしいんだけど」

「は? まだも何も、今見たところよ?」

「え?」

「え?」


 しばしお互いに顔を見合わせ、そして次の瞬間、さくらの顔が真っ赤になった。みぎゃあ、と妙な悲鳴を上げながら、机に置かれた手紙へと手を伸ばす。リリアは反射的に、先にそれを回収して少し離れた。

 じっと、さくらがリリアを見つめてくる。そして一言。


「返して」

「その前に、これは何なのか聞きたいのだけど」

「捨てて」


 会話にならない。リリアは少し考えて、ああ、と手を打った。


「なるほどね。貴方が最初に消えた時のものだったのね。体を貸してほしいと言っていた時にでも書いたのかしら?」


 リリアのその問いに、さくらは言葉に詰まったように黙り込み、やがて勢いよく立ち上がった。


「そうだよ! その通りだよ! だから今更いらないから! 捨てて!」

「嫌よ。さくらからの手紙なのよ? 大事に保管しておかないと」

「いらないよ! 必要ないよ! 手紙ならいつでも書いてあげるから捨てて!」

「い、や、で、す」


 一音ずつ区切って言ってやると、さくらが頬を膨らませた。むう、と唸りながら、


「この間の仕返しか!」


 そう叫んでくる。この間、というのは少し前にリリアの部屋であった一件のことだろう。そんなつもりは毛頭ないが、誤解してくれるのなら利用する。


「そうね。さくらもあれを捨ててくれるのなら、私もこれを捨ててあげる」


 そう言ってみると、さくらは唸りながらもいすに座り、やがて仕方ないね、と前置きしてから、


「じゃあ、いいや」


 これにはリリアが驚いた。捨ててほしい、と言われると思ったのだが。


「あら。本当にいいの?」


 思わずそう聞いてみると、さくらは頷いて言う。


「うん。私は捨てたくないから。だって、あれ、私は本当に嬉しかったからね」


 その言葉に、リリアの方が恥ずかしくなってしまう。よくも恥ずかしげも無く言えるものだと思いながら、リリアは丁寧に手紙を折り畳んだ。


「私も、そうね、嬉しくないわけでは、ないわよ」

「無理しなくてもいいのに」

「無理なんてしていないわよ。さくらが消えた時に見つけていたら、多分泣いていたと思うし」


 嘘は言っていない。今でこそ目の前にいるのでそれほど動揺はしていないが、あの時なら間違いなく見る度に泣いていたことだろう。そう思えば、さくらには悪いが、これを見つけたのが今で良かったのかもしれない。


「大げさだね」


 そう言いながらも、さくらの笑顔はいつもより少し嬉しそうに見えた。


「いえ、さくら様、大げさというわけではないと思いますよ」


 二人とは違う声に振り向くと、アリサがいたずらっぽく笑っていた。少し嫌な予感がするのは何故だろう。


「先ほどリリア様が慌てて出てきたのは、さくら様からの手紙を見たため、でしょう。またいなくなったのかもしれないと思っていたのだと思います」

「……っ!」

「おー」


 まさかのアリサの裏切りだ。リリアは頬を引きつらせつつさくらを見る。さくらはこれ以上ないほどに嬉しそうな満面の笑顔だ。何か言うと負けのような気がしたので、リリアは口を閉ざしてそっぽを向いた。


「リリア?」

「…………」

「リリアー」

「…………」


 無視だ。徹底的に、無視だ。視界にすら入れずに無視を貫く。さくらからの呼びかけを流していると、唐突に背中に重みを感じた。いつもの重みだ。


「さくら。重いわよ」

「だってリリアが無視するから」


 拗ねたように口を尖らせるさくらに、リリアは呆れたようにため息をついた。本当に、手のかかる妹のようだ。頭を撫でてやると、それだけで機嫌良さそうに笑った。


「一応言っておくけれど」

「ん?」


 リリアが手を止めて言うと、さくらは不思議そうに首を傾げた。じっとこちらを見つめてくるためか少し気恥ずかしく思いながら、続ける。


「もう勝手にいなくなることは許さないわよ。書き置きも認めないから」


 驚いたように目を丸くしたさくらは、すぐに口角を持ち上げた。


「大丈夫だよ。言ったでしょ? リリアをずっと見守るって」

「そうね。そうだったわね」


 小さく安堵の吐息を漏らし、リリアも頷いた。手に持ったままだった別れの手紙を折り畳み、さくらへと差し出す。さくらは不思議そうにそれを見ていたが、やがて恐る恐るといった様子で受け取った。


「い、いいの? 私は返さないよ?」

「いいわよ。お別れの言葉なんて、いらないから。その代わりに、別の手紙を書いてくれるのでしょう?」


 それを聞いたさくらはしばらく唖然とした後、すぐに破顔した。


「うん! 書く! ちょっと待ってて!」


 言うが早いが、さくらはすぐに部屋を飛び出していった。今から書くのか、と驚き呆然としている間にさくらの姿は見えなくなっている。リリアは小さく苦笑して、いすに座り直した。


「紅茶をお願いできる?」

「畏まりました」


 さくらが戻ってくるまで待っておいてやろう。そう考えながら、リリアは機嫌良さそうに出された紅茶に口を付けた。


壁|w・)S2の逆バージョンでした。


というわけで、裏設定。

本編では触れられませんでしたが、実はこの手紙、仕込まれている設定でした。

さくらが最後にリリアの体を借りた主目的が実はこっちだったという。

簡単に見つからないように、と隠した結果、今の今で気づかれなかったことに……。

本編で手紙を読むはずだったのですが、書いたところくどいと感じまして、カット。

そして今の今まで眠る設定になったのでした。


ひっそりアンケートを取っています。よければ是非。

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