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――これで良かったの?
――うん。お疲れ様。
今回のこれは、さくらの発案だ。せっかく里帰りしているのだからもう少し自由な時間を作ってあげてほしい、と。リリア自身、もう少し両親と話をしようと思っていたところだったので了承して、兄にも許可を取った。
ティナにもブロソのことは伝えてある。彼女も二つ返事で了承してくれた。むしろ、もっと早く言ってほしかった、とのことだった。
――さてと、そろそろ夕食に行きましょうか。
――だね! 今日の晩ご飯はなにかな!
上機嫌に鼻歌を歌い始めるさくらにリリアは笑みを零し、部屋を出た。
翌日。今日もティナと共に出かけるために玄関へと向かったところで、兄に呼び止められた。兄の隣にはブロソがいて、これには少し驚かされた。いつもはリリアたちの少し後に宿を出て、つかず離れずの距離でついてくる。そのため出る前に姿を見ることはあまりない。
「ブロソから伝言だ」
兄の表情は、笑顔。決して悪い話ではないらしい。
「家族がとても喜んでいたそうだ。ありがとう、と伝えてほしいと」
「どうして目の前にいるのにお兄様が代弁されるのですか?」
「そこはまあ……。察してくれ」
兄は苦笑しつつ、いってらっしゃい、と見送ってくれた。
まず最初に向かう場所は、ここ数日ずっと同じだ。初日に寄った菓子の店がいつの日も最初の店になっている。これはリリアが希望したわけではなく、ティナに案内してもらうと必ずそうなってしまっている。ティナがリリアに気を遣っているのかは分からないが、特に反対する理由もないのでそのままだ。
――幸せ……。
むしろさくらが幸せそうなので文句を言うはずもない。
「リリアはいつも苺大福だよね。他は食べないの?」
口の中に入っていた苺大福を呑み込んでから、リリアは店に並ぶ菓子類を見る。どれも一度は食べたことのあるものだ。店によって味の違いがあるらしいが、今のところはそれほど魅力を感じていない。リリアはティナへと苦笑しつつ頷いた。
「私はこれでいいのよ」
「そう? リリアがいいなら、私も何も言わないけど」
その後もいつも通りに店を巡っていく。見たこともない食べ物を見つけてはティナに聞き、物は試しと食べたりもした。時折リリアの口に合わないものがあり苦い表情をすると、ティナはとても楽しそうに笑っていた。
そうしてそろそろ帰ろうかと戻り始めたところで、リリアは人混みから走り出てきた何かとぶつかった。声は上げなかったが倒れそうになったところを、ティナに助けられて踏みとどまった。
「ありがとう、ティナ」
「いえいえ」
「それで、どこのだれかしら?」
リリアがゆっくりと笑顔になる。ティナが苦笑しつつ出てきた誰かに声をかけようとして、
――リリア、落ち着いてね? ほら、えがおえが……。
ティナとさくらが、同時に凍り付いた。そのことに眉をひそめながらリリアも誰かを見て、そして納得した。
赤髪の少年、キースだった。キースは小さく悪態を呟きながら立ち上がり、すぐに、
「すみません、よそ見をしていました!」
勢いよく頭を下げた。そしてリリアたちの顔を見て、息を呑んだ。
「ティナ……」
「キース……」
しばらく二人で見つめ合い、しかしすぐにティナは我に返りリリアへと何かを言おうとして、
「なんでまだいるんだよ!」
キースが、吠えた。
リリアが眉をひそめ、ティナの顔が歪む。さくらは無言のままだ。ティナはすぐに笑顔を貼り付け、言った。
「そんなこと言わないでよ。友達を案内してるだけだから」
「関係あるか! さっさと帰れよ! 貴族はこっちに来るな!」
「昔は一緒に遊んだのに」
「それはお前が貴族だって知らなかったからだ!」
キースはティナを睨み付け、ふと思い出したようにリリアのことも睨んできた。
「お前も貴族か!」
どう答えようか考え、ティナへと目を向ける。ティナはリリアのことを横目で見つめていた。リリアは小さくため息をつき、言った。
「そうよ。ティナと同じ男爵家だけれど」
ティナが小さく安堵の吐息をついた。どうやらこれで合っていたらしい。もう少し分かりやすい合図にしてほしいものだ。
「お前も男爵家か! 恥さらしめ、そんなに貴族になりたいのかよ……!」
リリアの頬がわずかに引きつる。ティナが慌てて間に入った。
「リリアは関係ないでしょ? 私ならいくらでも聞いてあげるから」
「関係ないことあるか! 貴族は貴族だろうが!」
キースがリリアを睨み付け、リリアはゆっくりと息を吐いた。これはティナの問題、らしい。だからリリアは何も言わない。全ての罵詈雑言を甘んじて受けよう。
――リリア。大丈夫?
――平気よ。虫が喚いているだけでしょう。
――あ、あはは……。
キースはまだ何かを喚いているようだったが、リリアはそれら全てを意識の外に追い出すことにした。一切何も聞かずに、そっと周囲の様子を窺う。誰もがこちらを見ていたが、その表情は苦笑だ。またか、といった様子だった。
「聞いてるのか!」
キースが叫ぶ。リリアが聞いていないことに気づいたのだろう、キースがリリアへとつかみかかろうとして、
「あら?」
リリアの視界は黒い壁に塞がれた。少し顔を上げて確認してみると、やはりブロソだった。
――さすが護衛。
――もっと早く出てきなさいよ……。
さくらとそんな言葉を交わし、
「なんで……。なんで兄貴が出てくるんだよ」
キースの言葉に絶句した。それはティナも同じようで、驚愕に目を見開き、ブロソを見つめている。
「止めるなよ、兄貴! 兄貴こそそいつらに文句を言うべきだろうが! 兄貴の声を奪ったのは貴族たちだぞ!」
壁|w・)ほのぼの終了のお知らせ。でもきっとすぐに戻ります。
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ではでは。




