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 さてキミ、ちょっと想像してくれ。


 まったく非日常的な状況だ。




 目の前で、セーラー服それも半袖の夏服に身を包んだとびきりの美少女が、猿轡さるぐつわをかまされた上に、手足を縛られ横たわっている。起きることも叫ぶことも、およそいっさいの抵抗は不可能だ。


 中二というから一三歳か一四歳、蕾のころだ。今はスレンダーな体に、どう花開くかわからない危うさを秘めている。大人というにはすべてがつつましく瑞々しく、子供というにはすべてが悩ましく艶めかしい。


 膝丈のスカートが少しまくれ上がっていて、黒のニーソックスとの間に見える太ももが露わになっている。本人もそれに気づいていて、顔を赤らめながら縛られた小さな手で懸命に直そうとするが、さっぱり届かない。


 その直そうとする手の動きのせいで、上半身がびくびくんと震える。後ろ手に縛られているから、少し身を反ったままの体勢でだ。小ぶりの胸が突き出される格好になって、ブラウスが張りつめる。


 その苦しげに反る姿勢は、髪が邪魔しないおかげもあって、うなじのラインをもくっきりあらわに見せている。艶やかなみどりの黒髪を刈り上げて切りそろえた、前時代的なおかっぱ髪だ。生え際から細いあごや首筋へと伝う汗からは、甘酸っぱく匂い立つ何かが目にも見えてきそうだ。


 ……とまぁ、じろじろ見るのがよほど恥ずかしいのだろう、さっきから彼女は、小さな口で猿轡を噛み締めながら、もとからの吊り目をさらに吊り上げ、必死の形相でこちらをにらみつけてくる。気が強そうな子だが、戒めを受けてだいぶ時間も経ち、やや疲労の色がみえる。汗が浮いて、髪が額に貼りついている。「ん……んっ!」荒くうめく息の音だけが、やけに耳に残る。他には何も聞こえない……。


 ここは、広大な工業団地の一角に建つ、今はうち捨てられた廃工場。頑丈な鍵がかけられ閉ざされた作業部屋。何をしようと何が起きようと絶対誰にも気づかれない、断言できる。そこに、自分と彼女のふたりきり。


 さて、キミならこれからどうする?















 ───そうだろうそうだろう!


 キミが想像したとおりのことを、数十分前までのオレならばしていたに違いない。それが健全な若者のあるべき姿というものだ。


 だがキミ、実際に当事者になってごらん。なかなかそうはいかない。


 オレは頭を抱えていた。


 やべぇよオレ。どうしようオレ。誘拐犯になっちゃったよオレ。


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