st.08 新造と改造
今俺たちがいるのはエラ鉄本社総裁室。目の前ではヴィルスが微笑んでいる。
「というわけでヤサカ君、約束を遅らせてしまって申し訳ない。急遽プリマランド王との対談が入ってしまってね。」
「はぁ、まぁそれがあったから時間もできましてこの世界について色々と知れましたよ。」
「例えば?」
「物価、食生活、衣生活、考え方そして、例の悲劇についても...。なんで...含みのある言い方をしていたんです?聞いてみればだいぶ...だいぶ...あー、やばいっぽいんじゃないですか!そんな大事なこと、なぜちゃんと教えてくれなかったんです!?」
今の所それだけが疑問である。なぜ含みのある言い方をしたのか?ヴィルス自体がその戦争に、もしくはその後に大きく関わっているのか?
「それは...申し訳ないのだが...簡単にいうと会社に不穏分子を増やさないためだ。」
不穏分子...不穏分子とは、幸せな絵や状況を崩しかねない不穏な伏線、または人物のこと。(ピクシブ百科)
「その分だと社内にも差別主義者がいるのは知っているな...?」
「まあ、自分の知り合いにも一人...」
「他民族企業としてはすぐにでも排除したい存在だ。」
そんなに!?
「特にこの会社は社員同士の結束力が問われる。そんな中で差別主義者が、不穏分子がいたらどうなる?社が崩壊する危険性が著しく上昇してしまう。」
確かに、鉄道会社でしかも列車単位で指示を出すとなると、とてつもない結束力が必要になる。
「その不穏分子がどんどん増えたらどうだ...」
ヴィルスは握り拳を八坂の前に突き出して...
「パン!」
という声と共に開いた。
「会社の存続が危ぶまれる事態に陥ってしまう...!」
ヴィルスは立ち上がり歩き始めた。...歩きながら話すの好きなんか...?
「不穏分子は排除したい。しかし、今はとてつもない人手不足だ。できるだけ人員は削りたくない。ヤサカ...お前はどう考える?こんな状況で何をどうする?」
自分はと聞かれましても...と長考していると、小川町がひそひそ声で言ってきた。
(私としましては)
「えー私としましてはー」
(不穏分子の発生を)
「えー不穏分子の発生をですねー」
(できる限り減らすという)
「できる限り減らすというですねー」
(対策を)
「対策をー」
(すると)
「するとー」
(思い)
「思いー」
(ま)
「まー」
(す。)
「す。」
ヴィルスがいきなり叫んだ。
「いや気持ち悪いわぁぁぁ!なんでささやき女将やるんだよ!!」
(あ、このネタこっちの世界でも通じるんだ...。)
二人ともそう思ったという。
「まあいい。小川町が入ったように増殖を抑えるのが一番良い手だろう。...と、いうわけだ。下手に伝えて不穏分子になるぐらいなら、そもそも伝えないほうがいい。」
めんどくさくなりそうだ。わからないという言葉は胸中にしまっておこう。
「この数日でこの世界にも慣れたところだろう。ここにいる君たち三人には明日から働いてもらおうと思っているよ。」
はいストーップ!ここで三人って言ってるけど、違和感に気づかないかい?1回目の面会も、今回も、俺と小川町しか話していない。つまり、二人しか話していないのだ。しかし佐伯もちゃんとこの場にいるのだ。彼女がなぜ話していないのか?簡単だ。なくなるとユーウィンが自動的に持ってくるお茶菓子を、一人で貪り食っているのだ!!
「ユーウィン!ライクルを呼んでくれ!早急にだ!」
「了解です総裁殿。」
数分してライクルが部屋に来た。
「呼びましたか!総裁閣下!」
「おう、呼んだ呼んだ!彼らの機関車の点検と調査はどうなっている?」
「昨日までに全て終わらせております!!新規客車の製造!!!代家車両の製造!!!!!魔力式無線装置の取り付けから、全車両n`*`『』*=〜)'%)!!!!!!!!!」
「あー、もういいもういい口をつぐめ。」
最初会った時から思ってたけどライクルって結構体育会系なんだな...。
「まあ整備やらなんやらは終わったんだな?」
「ハイ!」
「アノー」
小川町が手を挙げた。
「代家車両ってなんですか?」
「名前の通りだよ。家の代わりだ。トイレに風呂、ベッドにキッチンがついていて、冷暖房まで完備の家の代わりになる車両。そうそう、今回は女もいるからな、ベッドは個室的な感じでプライベート空間を守るようにしている特注品だ。」
なんかすごい現代人が好みそうな...って!佐伯のやつもう目キラキラさせてんじゃないの!茶菓子食うても止まってるし!!
「そうそう」
ライクルが話だした。
「面白いことがわかりましてね!あの機関車、炭水車不要みたいなんですよ!」
は?
「走行中自動的に水と石炭が出現するようで、燃料の補給がいりません!」
は?は?
「この世界に来てからおれが頑張って窯に入れてた意味って...」
「皆無ですな!!」
項垂れる小川町
「でもすごいもんだな...あっちの世界だとそんなに技術がすごいのか?」
ヴィルスが興味津々に聞いてきた。
「いや、こんなん知りませんよ...。あっちの世界でもずっと燃料を供給してないと動きませんでした...。」
「じゃあ、あれか。この世界に来るときに何かがあったんだろう。たまにあるんだよ、あっちから持ってきたものが変にレベルアップしてること。ペットの犬がいきなり話せるようになったとか、シャーペンの芯が無限に出るようになったとか。」
なんか...微妙...!ってか超微妙!!
「ま、今回もそのクチだろうな。さ、いこうか。」
「どこへ?」
「決まってるだろうよ。シゴナナだ。」
ーーーーーー
数分後
ーーーーーー
「お、お、お!おおおぉぉぉぉおおぉぉぉ!!!!」
漆黒の車体!円筒形の車体!ピカピカにテカる車体!!
『ッ癖ダァァァァァ!!!!!』
「みろ小川町!俺たちのシゴナナだぞ!こんなに立派になっちまいやがって!」
「すごい!ほとんど新品じゃないすか!!門鉄デフもそのまんまだ!あ!スノープラウ!こいつがつくことで現れるこの前面の一体感がとてつもなくたまんないですよね!!」
「ああ、ああ!全くだ!ああ、主連棒もピストンも動きが滑らかだ!!あとホラ!」
おれは即座に足掛け金物を駆け上り、棒を引っ張った。
フォァァァァァァァァァァァーーーー!!
「きけ!この美しき貴婦人の歌声を!ずんぐりむっくりでただ音出して、貨車引っ張るだけのデゴとはちげぇんだ!人々へのもてなしの心!快適でエレガントな旅の演出!それがシゴナナの売り文句よ!!」
「ワァァァァァァァァァァ!!!!」
ヴィルスが俺たちの肩を叩いてきた。
「はいはい、いったん機関車の方はそこらにして次は代家車の方を見てもらおうかね。」
代家車に入ると、そこはもう寝台特急!。
「個室が三つ!しかもサンライズのB寝台ソロクラスだぞ!?」
「確かに!ちゃんと窓もありますし、よく寝られそうですね!」
「八坂さん!瑛二!みてみて!シンクと洗濯機と食洗機...コンロまである!」
「ここにある機械たちはみんな魔力で動くようになってる。ほら、手のマークがついてるだろう?」
ほんとだ
「そこに手を当てて魔力を流し込むと動き出す。ちょっと魔力を流せばいいからずっと手を当ててなくてもいい。」
今度はトイレと風呂をみよう。
「このトイレ洗浄機能がありませんねぇ。」
ヴィルスが居間から叫んできた
「そりゃそうだ!ボットン式だからな!」
ボットン式トイレ・・・古い日本の家庭で見られたトイレ。便器の下に桶を設置し、そこに汚物を溜める。定期的にバキュームカーで回収する。この車両では一時的にタンクにため、駅ごとに回収する。
「風呂とシャワーの水は機関車から頂戴することにしたみたいですね。ホースで繋がってました。こいつらも魔力で温めるみたいですね。」
「ほんとだ。給湯器にも手のマークがついてる。」
そして、風呂の反対側には...なんと!全自動洗濯機が!
『くぁwせdrftgyふじこlp!!』
八坂は佐伯とコサックを踊り始めた。
「八坂さん!驚きすぎ!佐伯も!なんでそんなに驚くんだ!?喜ぶんだ!?」
「洗濯機!洗濯機!女の仕事だって洗濯押しつけられるかと思ってたけど杞憂だったぁ!よかったぁ!」
「考えが古い!!」
「洗濯機ダァ!洗濯機ダァ!なんか知らんが嬉しいぞぉ!!」
「じゃあ喜ぶな!」
騒いでいるとヴィルスが割って入ってきた。
「見ての通りここは一番機関車に近い。あとこの洗濯機がある風呂場の前のスペースは土間。もうわかるだろ?」
「まさか...!」
「そう!仕事終わりに炭だらけの体と服をそのまま洗うことができるのダァ!!」
『な、なんだってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!?????』
これには全員がそう叫んでしまった。
「炭水車を弾いたから貫通路開ければ機関室になっているんだ。」
「直結!結構便利にできてますねぇ。」
「さあさ、次は車掌車!」
ライクルの号令と共に貫通路を抜けた。ホロがついていたが、日本のものと特に変わり映えはしなかった。
「放送設備と機関室との連絡設備、エラール中央総合司令センターとの通信設備、自動ドア開閉設備にライトコントローラー、さらに車両間隔壁制御設備まである!」
佐伯は前の車掌車を壊されていただけに、とても喜んでいるようだ。
「内装もレトロでいい!イスもサラサラのフカフカ!モケットが紫でサシに黄色なのが良きかなですなぁ〜。」
「デザインは...実質阿久津か...。クソッ!ルールを破っているのに...とてもいい仕事をしたのは認めざるを得ないのか...!」
ああ、かわいそうに...
「以上が君たちの使う列車...だそうだ!なぁ?ライクル。」
「はいッ!そうでありますッ!」
「というわけだ!これからは好きに使ってくれぇ!」
『ありがとうございます!総裁閣下!ヴィルスさん!』
おもわず三人で本敬礼をしてしまった。...俺たちだいぶここの上下関係に慣れてきたな。
「んじゃ、もう荷物積み込んじゃって。明日には旅客の仕事についてもらうからな。」
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「一週間もいませんでしたが...ありがとうございました...!」
「ほんとぉにアンタはいい子だったよぉ!地方勤務、頑張るんだよぉ!」
「おばちゃぁ〜ん!」
おーいおいおい!!
「なぁにやってんですかぁ。八坂さーん行きますよー」
今日は旅立ちの日。今日からニンゲ居住区方面ライハト地方での乗務を開始する。といってもこっから行って帰ってくるだけの往復運行のみ。一月もすれば帰ってこれるらしい。
「んじゃ!ちょっくら行くか!ライハト地方!」
前途は多難だろうが...ま!どうにかなっか!!




