閑話 女神の焦り
「まずいまずいまずい」
夜空が現在いる世界とは次元が違う世界、すなわち【神界】で焦っている幼女がいた。
「どうされました、女神様」
「ヤバイどうしよう。早めに手を打たないと…」
「女神様?」
「でもどうしたものか…」
「女神様!何があったんですか!」
「うわっ!何だリーゼか。驚かさないでよ」
「なんだじゃないです!どうしたんですか!」
リーゼと呼ばれた背中から羽が生えている少女は、話を聞かない幼女にイライラする。
だがこんな幼女でも女神なのだ。下手なことは言えない。
「そうなのよ、リーゼまずいのよ!」
と言って、女神が話し始めたのは危機そのものであった。
つい先日、人間族が勇者召喚を実行したのだ。
勇者召喚とは簡単に言ってしまえば、異世界人をこの世界に無理矢理連れてくるという魔法である。
人間とは不思議な生物で、違う世界に渡る時その世界で適応するために、肉体改変と渡った世界での自分の才能が生まれるのだ。
これが勇者が強いステータスと固有スキルを持っているわけである。
ただ勇者召喚は今回が初めてではなく、過去に度々行われていて大して世界に影響はなかった。
なので今回も、ただ眺めていようと決めていた。
しかしスキル『神眼』で勇者達を見ていると驚くべきことに気づく。
一人、とんでもないイレギュラーが混ざっていたのだ。
固有スキルとはその世界での才能である。
そしてそのイレギュラーはある固有スキルを持っていた。
それが『操作』である。
固有スキル『操作』とは、物事の操作が出来るようになるスキルである。
そしてこのスキルでの一番の強みはステータス操作である。
ステータスとは全ての世界の神々が採用している世界のシステムである。このシステムによって生物を管理しやすくなったのだ。
そして一般的に『操作』とは神が持つ固有スキルである。
なにせ世界のシステムをイジれるのだから。
そのスキルを異世界人が才能として、この世界で開花させたのである。
つまりだ。そのイレギュラーはこの世界の神になる才能があるということである。
このままではまずい。
そのイレギュラーがどうするかによって、世界が崩れる可能性もあるし、自分の神という役割が奪われる可能性だって出てくる。
一つの世界には一人の神。
これは決まっていることなのだ。
なにせ世界が混乱してしまうから。
始末するしかない。
『操作』の使い方に気づいていないうちに。
「リーゼ!この男を始末して来なさい!」
「了解しました。では確実に殺せるようレベルを上げて貰ってもよろしいでしょうか?」
「分かったわ」
そうして女神は『操作』を使い、リーゼのレベルを最大限に上げる。
「行って来なさい!」
「了解しました!」
そしてリーゼは光に包まれていった。
2月16日改稿