第八話 王へのお願い(カツアゲ)
レギオスの王、ドルバーク=レギオスは頭を悩ませていた。
勇者召喚に成功したにも関わらず、一人が王城から抜け出してしまったからだ。
まだまだいるのだから一人くらい…と思う人もいるかもしれないが、一人抜け出すと他の者も抜け出す可能性が出てくる。
また、その王城から抜け出した男は、召喚したその日にも関わらず、騎士団の先鋭達を気絶させていったのだ。
かなり強い固有スキルを持っているに違いない。
そしてレギオスはなにも魔族の国【アスラエル】とだけ争っているわけではない。
獣人の国【パレスト】やエルフが住んでいる、エルフの森、そして人間族の他の国とも争うこともある。
つまり、その男が敵になった場合、こちらに勇者はたくさんいるので負けることはないだろうが、被害が大きくなる。
なので指名手配したのだが、二日も音沙汰なしだ。
「はあ」
もう逃げられたようだ。まあいい。
まだ残っている勇者の待遇をさらに良くして、再発防止に努めよう。
そう決めた時だった。あの男がやってきたのは。
〜〜〜〜〜〜〜〜
「確かお前が王だったよな?」
転移して再び王城に来たところ、王っぽい奴がいたので声をかける。王とは一回会ったことがあるのだが、あの時はステータスのことで落ち込んでいたので、よく覚えていないのだ。
だが確かこんな奴だったはず。
すると王は少し驚きながら、
「い、いかにも。私がレギオスの国王、ドルバークだ」
やっぱりか。フッフッ俺の灰色の脳細ぼ……
いけないいけない。脱線するところだった。
「簡潔に言う。指名手配を取り消せ」
「お前はあの抜け出した男か⁉︎」
「そうだけど?そしてこの一件で俺は深く心が傷ついたから、慰謝料くれ」
「い、慰謝料?金のことか?」
「そうだ早くしろ」
「ちょっと待ってくれ。なぜお主は城から抜け出したのだ?」
「そんなもん面倒だからに決まってるだろうが。いいから早くしろ」
「そんなもんとは!人間の命がかかっておるのだぞ!」
「知らねーよ。なんで俺が助けないといけないんだよ。まあ知り合いなら守るけど」
剣聖とか剣聖とか剣聖とか。ヤバイ、まだ知り合いって呼べる人物、剣聖しかいない。ぼっちに磨きがかかっているぜ。
「つまりお主はこの国を助けるつもりはないと?」
「まあそうだな」
「残念だよ。ならしょうがない。やれ!」
すると、どこからかいきなり男三人が俺のことを囲んでくる。
なんかこの世界の人囲むの大好きすぎない?
「この三人は王宮が雇っているS級冒険者達だ!私はスキル『念話』を持っている。今までは時間稼ぎをしていただけだ」
と、ドヤ顔で言ってくる。
なんかもう王が可哀想に思えてきたんだけど。
「捕まえた後は隷属の首輪をはめて、勇者として使ってやろう。この国のために働くのだ」
てかこの王ゲスいな。マジで、ゲスの極み王様。
まあだが想定内だ。
そして俺はS級冒険者達のレベルを下げる。
すると冒険者達は力が抜けたように、その場で倒れこむ。
「おい⁉︎どうしたんだお前ら⁉︎」
そして事前に用意しておいた、スキル『威圧』を発動。
こんなぼっちだが迫力は増すはずだ。
「やめろぉぉぉ!来るなぁぁ!」
メッチャビビってる。顔はもう鼻水と涙でいっばいでとても王の威厳が感じられない。
よし、そして王の髪を掴み、
「指名手配を取り消して、金払おうか?」
とニッコリと笑顔で言った。
完全なカツアゲである。だが作戦通りだ。
王は全力でヘドバンみたいに首を縦に大きく振り、
「わ、わ、分かりました。ちょっとお時間いただけだけますか」
ついに敬語になったぞ。
『威圧』すげーな。困ったら使おう。
そして王と宝物庫的なところに行き、
「ごぢらがお金になります。本当にずみまぜんでした」
と泣きながら、金貨がギッシリと入った袋を渡してきた。
いやここまできちゃうと俺も悪く思えてきた。
取り敢えず謝っとこ。そしてS級冒険者達のステータスも戻しておいてやる。
「いや本当に悪かったな」
すると泣き止んだ王が、
「いえいえとんでもない。指名手配も取り消しておきます」
ごめん王、やり過ぎた!
メッチャ申し訳ない気持ちになりながら、俺は『転移』でアリスの家に戻った。




