第42話 明かされる古文書
長らく、間が空きまして申し訳ありません。
予算の事情やら何やらで執筆環境の回復が遅れました。
こんなことなら、ポメラを手放すんじゃなかった……orz
薬師の視点から主人公の視点に続きます。
久方ぶりに会ったエレオノーラだったが、しかし、その滞在時間は極めて短かった。
伝える情報の内容が内容だけに、彼女自らが動かざるを得なかったようだが、アンベルクにおいて厳密な管理下にある召喚術師、それも筆頭たる宮廷召喚術師ともなれば、そうそうに自由な時間があるはずも無い。
許可も無く単独で宮殿を抜け出そうとしても、要人警護と監督査察を兼任する監史がそうはさせないはずだ。
とは言え、貴人の女性について言えば、寝起きから身だしなみを整えるまでの今の時間帯は、監史側も人員交代の機会としていることもあって、ほぼ干渉を受けないと聞いている。
エレオノーラは、その時間的な空隙を利用して、城門が開かれる日の出と共に宮殿を出てきたようだ。
彼女の場合、ごてごてと着飾ったり、厚塗りの化粧をする必要が皆無と言う事もあったし、今の時代では監史の質も低下したと言うこともある。今から急いで戻れば、不在の時間を監史に気づかれることは無いだろう。
ともあれ、我が家を辞するエレオノーラに、貴重な情報をもたらしてくれた謝意を述べると、彼女は微笑みながら首を横に振ってこんな事を言い出した。
「今だから言いますけど、私に取って、学術院時代のあなたは初恋の人だったんですよ」
「あー、それは、そのう、すまなかったかな?」
自分で言うのも何だが、男装していた頃の私は美男子だったようだ。
今でも恋愛感情なるものを理解できない私だが、当時の同性達には色々な意味で辟易したことは覚えている。
ただ、エレオノーラは、そんな女性達とは一線を画していた印象だったので、この「告白」は意外でもあった。
「あなたが女性だとわかった今でも、私に取って大切なかたであることには変わりません。適うならば、あなたと大事なものを共有する関係を築きたいと思います」
顔を赤らめ、そう言い残してエレオノーラは宮殿へと戻っていった。
「もてるわねぇ、オリヴァー」
などと、マルタが冗談交じりに冷やかしているのを適当に聞き流し、私はエレオノーラの後ろ姿を見送りつつ、ひとつの考えを口の中で呟いた。
「ふむ、こうしてみると、安産型な良いお尻だな。胸もなかなかだったし、何よりも美人だ。召喚魔法におけるコウイチの師というところもポイントが高い」
師と弟子と言うのは親子関係に準じるものとされている。
従って、学術院にいた頃、私が本当に男性だったとしても、女生徒達の思いに応えるというのは本来ならあり得ない話である。
だが、背徳的な恋と言うのは燃え上がるものらしく、学術院の査問会では、そうした不適切な関係について幾度も取り扱われたものだ。
「そう、コウイチにとっては『背徳的』と言うところが肝要なのだ」
私がこれまでに目の当たりにした〈魔を鎧いし者〉の顕現において、コウイチは意識を失っているように見えた。
顕現中の記憶をとどめていない事も合わせると、現在のコウイチは〈魔を鎧いし者〉の力に振り回されている状態なのだろう。
これは非常に危ういことでもある。
上位猪鬼のような手合いが相手ならばともかく、知性ある敵に対しては、いかな〈魔を鎧いし者〉と言えど、単なる力押しでは通用しなくなる時はくる筈だ。
まだコウイチに勇者としての自覚が無い時、斑土蜘蛛や小鬼討伐において、彼は創意工夫によって、単体では卑小でしか無い〈使い魔〉達の能力を最大限に活用して見せたわけだが、そうした姿勢は〈禍神の使徒〉との戦いにおいても趨勢を決める重要な因子になるだろう。
つまり、明確な意思を持ったままでその能力を顕現した時、はじめて彼は真なる〈装魔の勇者〉であるといえよう。
そして、先日の三度目において、その片鱗があったようだ。
少なくとも、マルタはそのように『見て』おり、彼女の『眼』はガイナス導師の折り紙付きである。
この三度目は、過去二回と異なり、一糸もまとわぬ二人の女冒険者と言う要素があった。
その事実から、私は〈装魔の勇者〉が完全なる能力を発揮する為の最後のキーが、女体――正確には情欲に類するものであろうとの仮説を立てている。
確かに、〈魔を鎧いし者〉の圧倒的な力に、そうした本能的な情動を持ってこそ拮抗できると言うのは不自然では無いように思われる。
「英雄、色を好むと言うが、勇者の場合は必須と言うことになるわけだな」
ま、男児たるもの女を知って一人前とも言うし、この仮説が外れているにせよ、そうした経験でも積めば勇者としての自覚も出てくるだろう。
「とは言え、それが結構に厄介な話なのだが」
私は、つい、不機嫌になって独りごちる。
これまでも、普通の男なら劣情のままに振る舞ってしかるべき機会があった筈だ。
出会った当初こそ、自己抑制できる、克己心ある若者と感心したものだが、最近では、いくら何でも度が過ぎると不審に思っていたのだ。
これも三度目の状況――具体的には、野外で、女性二人が用を足すところを間近で見たと言うところからの類推なのだが、どうやら、彼の劣情を能動的にさせるには特異なそれが必要らしい。
通常の男女間における恋愛沙汰とか羞恥心が理解できない私に取って、いわゆる異常な嗜好と言うものも同様な範疇にある。
そうしたものを特に嫌悪するといった感情も沸かず、コウイチの嗜好を満足させる事自体にも抵抗が無いのだが、生憎と私にはそちら方面の知識が不足している。
とりあえず、色々とその手のものが記された文献を調べ、私なりに努力は惜しまぬつもりだが、あるいは、私では役者不足ということもある。
今朝も、私が押し当てていたものに対して、コウイチは積極的な反応を示すどころか眼を閉じてしまっていた。
これでも人並みの容姿ではあるつもりなのだが、どうにも自信を喪失せざるを得ない。
そこへいくと、エレオノーラは得がたい人材であろう。
コウイチも好意を持っているようだし、何より、彼女はコウイチに取っての師に当たるのだ。
つまり、師と弟子の『背徳的な』関係は、コウイチの異常な嗜好を満足させるのでは無いだろうか。
「たしか『共有する関係を築きたい』と言っていたしな。私とコウイチを共有するとなれば、彼女も望みが適うわけだ」
ただ、エレオノーラの協力を得るとしても、状況を最大限に活かすには色々と準備も必要なはずだ。
師と弟子が背徳的な関係を持つとすれば、その舞台は学び舎が相応しいだろう。
「その線でいくならば、彼女は宮廷召喚術師でもあるわけなので、宮廷の一室で……いや、部屋の中よりは、物陰とかその辺りが妥当かな?」
エレオノーラとコウイチの密かな逢瀬、いや、そもそも密かであるべきか否か、その辺りから検討する必要もあるかもしれない。
何かしらズレているというような思いを抱きつつも、私は自分の考えに没頭するのだった。
◇◆◇
玄関前でエレオノーラさんを見送った後、オリヴァーさんは例によって、ブツブツと何事かを呟いて考え事をしているようだった。
おそらくは、穏やかならざる動きを始めた神殿への対処を考えているのだろう。
牙を剥こうとする国家権力を相手に、俺にはどう対処したものか見当も付かないが、オリヴァーさんに任せれば大丈夫だ。
じつに頼もしいものだが、それはそれとして、そろそろ朝食の頃合いでもある。
深淵な思索を邪魔するのも躊躇われたので、どうしたものかと思っていると、マルタがオリヴァーさんに歩み寄っていった。
そちらは任せることとして、俺は一足先に玄関をくぐり、台所へと向かう。
食事の配膳は、居候である俺の仕事だ。
つか、それ以外は〈使い魔〉どもがやってしまうので、他にやる事がないわけだが。
本日の朝食の献立はサラダにパン、そしてスープと言う簡素なものだが、調理担当の大鬼もどきが腕を振るって再現したオリヴァーさん謹製のスープは滋養と滋味に富み、一日の始まりに相応しい活力を与えてくれる。
大鬼もどきがミニサイズなので大量生産ができないが、これだけでも店が開ける逸品だと思う。
まぁ、実際に店を開くとなると、商人ギルドへの登録やら何やらが必要で、既に冒険者ギルドに所属している俺の場合は、ひどく面倒な手続きになるらしい。
もっとも、それはマルタがそう言っているだけで、実際にはどうなのかは詳しく調べていない。
食い意地のはった彼女は、自分の分が無くなるからと商売には反対してる節があり、その主張も疑わしいものがあるが、どのみち、商売を始めるつもりは無いので、それは有耶無耶なままにしている。
ともあれ、居間の座卓に人数分の朝食を並べたところで、オリヴァーさんとマルタが何やら言い合いながら戻ってきた。
「本当に呆れたわね、そんな事を悩んでいたなんて」
「しかし、大事な話だろう?」
「否定はしないけど、彼女を引き込む前に自分で何とかしようとか思わないの?」
「そうは思うが、知っての通り手強い相手だからな」
手強い相手、とは神殿の事だろう。
つまり、神殿への対処方法を議論している……のだと思うのだが、しかし、何で俺の方をチラチラと見ているんだろう。
そんな二人にカーヤも参加して、議論は朝食の席でも続いた。
俺に聞こえないように声を落としている理由がよく分からないが、何であれ、女性同士の会話に聞き耳を立てるのは失礼だろう。
そんなわけで、俺は気にしないようにして食事に専念したのだが、ふと気がつくと、三人がジト眼で俺を睨んでいるではないか。
「食欲が優先か。まだ子供だな」
「まったく、こちらの気もしらずに」
なんだか非難されているようだが、気のせいだろうか。
「まぁ、あんな感じなのだ。普通に迫っても駄目だと言うのはわかっただろう」
「そうねぇ」
「あたしも、なんだか子作りをスルーされてしまったようですし」
再び、ヒソヒソ話が始まった。
「そう言えば、師匠の書庫に、その手の文献がたくさんあったわね」
「導師の趣味に合わせた漢向けばかりだろう? 我々には意味が無いぞ」
「ん~、たしか、ちょっと変わりダネで女が登場するものがあったのよ。あれなら参考になるんじゃないかしら」
「ほう?」
「それでね……ゴニョゴニョ」
ただでさえ意味不明になっていった女性陣の会話だったが、そこでマルタの声が殆ど聞き取れないほど小さくなる。
「な、なんだと!? そっちの方でか」
マルタが口にした内容は不明だが、ただ事ではなかったようだ。
いつも飄然としているオリヴァーさんが、酒も飲まない素面のままで、その美貌を朱に染めているところなど初めて見た。
「あら、師匠のとこなら、むしろ、それが当然でしょ」
「言われてみればそうか。そして、男女間であれば、充分に背徳的かつ異常という条件に適うな。とは言え、その、衛生的に問題ではないか?」
「そこはノウハウがあるらしいわよ。詳しい資料や道具は師匠が持ってるはずだし」
「ううむ。いや、この際は仕方あるまい。使う場所は違えど、男からすれば行為そのものは大差無いわけだしな。そちらで始めて、正道に戻すと言う手もある。厳しいとは思うが、そこは堪えるとしよう」
オリヴァーさんはそう決断を下すように言葉を放ち、観念したように目を閉じた。
「あ、あたしも、何とか耐えて見せます」
カーヤなど、顔を真っ赤にした上で涙目になり、身を震わせながらそんな事を言っている。
「あんた達がそこまで言うなら、あたしも覚悟を決めないとねぇ」
マルタが諦めたようなため息交じりに言う。
そして、三人揃って俺の方を睨んで来るのだが、いったい俺が何をしたと言うんだ。
つか、「背徳的かつ異常」って、どういう事なんだろう。
いや、考えてみれば聖職者が集う神殿と争うのだから「背徳的」ではあるのか。
国家権力を相手取るのは、正気の沙汰じゃ無いから「異常」と言われればそうだしな。
そう言えば、そろそろ古文書の封印とやらが解ける頃合いだし、ブランデー量産の話もあるからガイナス導師のとこには行かなきゃいけないな。
そんなことを考えつつ、一足先に朝食を済ませたシャルロッテちゃんが、おままごとの相手にヴァルガンを確保してしまったので、代わりに後片付けをする俺なのであった。
◇◆◇
曰く、「漢の、漢による、漢の為の、アツイ交遊の場」とか。
あるいは、「成熟した漢同士が絆を確かめ合う処」とか。
この『目覚めた漢達』は、つまり、そういう趣旨を売りとしている店である。
そうしたガチな嗜好に偏見を持つつもりは無いが、正直なところ、俺としては近寄るのも気が進まない場所だ。
だが、冒険者ギルドが秘蔵する古文書は、ここの経営者であるガイナス導師が管理しているのだから仕方が無い。
そんな事情で、俺は再び、この店を訪れる事となった。
ただし、俺一人では無く、オリヴァーさんとマルタも一緒なので、心情的にはおおいに助かる話でもある。
ちなみに、カーヤとシャルロッテちゃんは途中まで一緒だったのだが、冒険者ギルド本部の前で別行動になった。
何でも、犬鬼の上位種とやらから剥ぎ取った大量の素材を納品したので、そこで落ち合ったエッカルトさんと一緒にその代金を受け取りにいくそうだ。
いつ、そんな凄い魔物を狩ったのかは知らないが、さすがは名の知られた〈暁の翼〉と言うところだろう。
ともあれ、俺たちを出迎えたガイナス導師は、しかし、不機嫌な表情を隠そうともしなかった。
「小僧はともかくとしてだ。おぬしらは儂の商売を邪魔するつもりか」
苦情を言う人食い熊というものが存在するとすれば、この時のガイナス導師はそれに一番近かったかもしれない。
そんな導師に、オリヴァーさんは平然と言い返した。
「まだ日も高いですし、店をあける時間でも無いでしょう」
「ここは真の漢のみが集う店だぞ。しょっちゅう、女子供に出入りされては芳しくない風評が立つというものだ」
などと、ぶつくさ言いながら、ガイナス導師は奧の個室に俺達を案内した。
そこは、意外にも、と言っては失礼だが、なかなかに上品な調度品が揃った部屋で、店の派手な外装やマッチョでブーメランパンツな従業員の制服との落差には著しいものがある。
高級かつ趣味の良いデザインで統一された椅子に一同が腰を下ろし、運ばれてきた紅茶の椀が行き渡ったのを見計らったかのように、ガイナス導師が呟くように言った。
「ふむ。まずは、こちらを済ませるのが筋か」
無表情にマルタを一瞥した後、導師はいきなり俺に向かって頭を下げてきた。
「一度ならず、二度までも不肖の弟子を助けてくれた事を感謝する」
「はい?」
俺は思わず呆気にとられて、珍妙な声をあげてしまった。
そこに、オリヴァーさんがフォローするように声をかけてきた。
「導師。この子は、覚えていないんです」
「む、そうなのか。犬鬼の上位種と何やらやりとりがあったとかで、儂も詳しい話を聞きたかったんじゃがな」
「本日、私が伺ったのも、その件も含めて相談と言うかお願いがありまして。いえ、さして手間のかからぬ話です」
ガイナス導師は少し考え込むようだったが、あっさりとこう言った。
「では、小僧を迷宮に送り込んだ後に話を聞くとしよう」
はい? 今、何とおっしゃいました?
「導師。迷宮とは何のことです?」
呆気にとられた俺に代わってオリヴァーさんが尋ねると、ガイナス導師は訝しげな表情でマルタを見やった。
「なんじゃ、説明しておらんのか」
「一応、機密事項だし、あたしが言うのも筋違いかと思いまして」
「今更のような気もするが、まぁよかろう」
そして、ガイナス導師は俺とオリヴァーさんに向き直って言った。
「冒険者ギルドの秘蔵する古文書とは、地上からは入れぬ迷宮にある夥しい数の石碑なのじゃ。儂はそこへ入る為の鍵――転移用魔法具の管理を任されておるに過ぎん」
予想もしていなかった古文書なるものの実体に、俺はろくにリアクションもできなかったわけだが、オリヴァーさんが驚愕から回復した時間は極めて短かったようだ。
「なるほど。それを伺って納得がいきました。冒険者ギルドにとって、宮廷や神殿に対する重要な隠し札のわりには、さして秘匿しているようにも――部外者である私に知られても平気なようでしたので、不思議に思っていました」
「さよう。古文書の所在そのものは、宮廷や神殿も把握しておるじゃろうさ。ま、儂が管理者だと言う事まで突き止めておるやもしれん。じゃが、よしんば儂から鍵たる魔法具を奪ったところで、やつらには古文書を手に入れることはできぬ。本来、迷宮探索は冒険者として修行を積まねば得られぬスキルじゃからな」
「つまり、導師の言う古文書を見る資格とは……」
「別にケチったり、もったいぶったわけでは無いぞ。単純に、あの迷宮を踏破するにはAクラス冒険者に相当する技量が必要と見ておるだけじゃ」
その導師の言葉にマルタが首をかしげた。
「そんなにたいそうな迷宮だったかしら。少し面倒くさい構造だったけど、罠があるわけじゃ無し、魔物なんかはやり過ごせば楽勝だったわ」
「そんな『眼』の持ち主じゃから、おぬしだけには入ることを許したのじゃ。他の連中では、徒党を組んでも生還はおぼつかんぞ」
ガイナス導師は半分ぼやくように言った。
才能と資質だけで冒険者をやってるようなマルタには、導師も持て余しているところがあるようだ。
「それで、小僧はどうするのじゃ? 許可はするが、無理強いするつもりは無い。そもそも、おぬしが行ったところで、古代文字や神聖記号の解読など覚束ないじゃろう」
ガイナス導師の見透かしたような言葉に、俺は反論できなかった。
正直なところ、導師が巻物か何かを提示するのを、俺に代わってオリヴァーさんに見てもらうと言うようなことを想像していたわけだが、さすがにこんな状況は予想外だった。
「代わりに、儂が見聞したところを教えてやっても良いぞ。ただ、さすがに儂も、あそこで全てに眼を通す余裕は無かったからの。断片的と言う事にはなるが」
ガイナス導師のありがたい申し出を俺が受諾しようとする寸前、オリヴァーさんがきっぱりと言ってのけた。
「それは不要です。状況にもよりますが、断片的な伝聞は、かえって誤った認識をもたらす事にも繋がりかねません。コウイチは自らその石碑の前に赴き、全てを得て戻るでしょう。何しろ、彼は〈装魔の勇者〉ですから」
なんつー無茶ぶりを、と口にしかかって、危うく俺は言葉をのみ込んだ。
そうだった。オリヴァーさんは、普段は優しいが、勇者たる資格とかが絡む案件には実に容赦無い人だった。
せっかくの申し出を拒まれたガイナス導師は、しかし、気を悪くした様子は見せなかった。
それどころか、俺を見やる視線に同情の念が含まれていたようにも思えたのは、あるいは気のせいだっただろうか。
かくして、駆けだしの冒険者である俺に課せられ、未だ果たされない最初の探索は、迷宮踏破にまで拡大したのだった。
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