第一話 生徒会と夏休みの始まり
風の丘高校に入学してから約3ヶ月が経過しもうすぐ夏休みという頃。
高校生活に慣れてきたこの時期、俺はクラスでは一応優等生という立場に位置している。
かつ生徒会にも入っており、普通の学校生活を過ごしているのだが、そんな俺にも問題がある。
ずばり友達がとても少ないのである。
そんな俺に生徒会の初めての仕事が回ってきたのである。
というのも今までの生徒会は役員全員を集めて、会議をすることしか活動はなかったのだ。
なので初仕事に少しウキウキしながら仕事の内容を確認する。
「学校の花壇の水やり?」思わず口に出してしまった。
生徒会の初めての仕事が花壇の水やりなど聞いたことがない。
そもそも学校の花壇を手入れするのは園芸部の仕事ではないのか?
そんな疑問を浮かべながらも花壇に向かった。
花壇の付近まで行くとそこには、おそらく同じ理由で呼び出されたであろう、もう一人の1年生徒会の赤崎日葵の姿があった。
彼女はいつも明るく、どのクラスの人からも評価が高い。
そして運動もできる。俺は女子と話すことが苦手だが、勇気を持って話しかけた。
「赤崎さんも花壇の水やりの仕事で来たの?」
すると赤崎は不思議そうな顔で振り返る。
「君は確か同じ1年生徒会の一之瀬くんだよね?」
俺の名前を覚えてくれていることに、少し驚いている間に、赤崎はどんどん距離を詰めて話しかけてくる。
「君も私と同じ水やりの仕事で来たんでしょ?さっさと終わらせて生徒会室に行かないと。」
「なんで?」
「緊急の会議だってさ。さっき会長が全クラスを回って伝えに来てたよ。」
え、そんなの聞いてないんだが。
少し戸惑いながらも早急に仕事を終わらせ、足早に生徒会室へ向かった。
生徒会室に着いた時にはかなり人が集まっていた。
「すみません少し遅れました。」
「誰にでも遅刻することぐらいあるさ。さぁ早く座りたまえ。」
そう言った彼女こそがこの学園の生徒会長である神楽坂零先輩だ。
この人は文武両道を体現したような人だ。
しかも天使のような美貌と優しさから、ファンクラブも存在するらしい。
そんな会長の横でお茶を入れているのが生徒会副会長の坂下亮先輩だ。
この人は会長だけでは補いきれないところを、しっかりカバーする人だ。
正直この人がいないと生徒会は成り立たないと思う。
副会長の横で机に伏して寝ているちびっ子は生徒会書記の綿貫月さんだ。
ずっと寝ているくせに仕事だけはしっかりとこなしている。怖い。
すると突如として生徒会室の扉が開かれた。
「少し、遅れた」たった今入ってきたのはもう一人の生徒会書記である夢路ひより先輩だ。
いつも遅刻してくる先輩のせいで会議が長引いたりする。
しかもいつも急に現れて急に消えるのだ。
「よし、全員そろったな。会議を始めるぞ。」
その一言で皆が神楽坂先輩のほうを向く。
「今日の議題は文化祭についてだ。」
もうすぐ夏休みに入るが、この学校は夏休み明けすぐに文化祭があるタイプの学校なのである。
なので事前に何をするか決めなければならない。
神楽坂先輩が続ける。
「それぞれ役割を決めて動こうと言いたいところだが、こちらでもう役割は決めてある。」
流石会長だ。仕事が早い。
「まず、綿貫は各クラスの出し物の内容を確認してきてほしい。そして次に坂下と夢路で文化祭の飾り付けの最終確認をしてほしい。」
「そして最後に赤崎と一之瀬には飾り付けに必要な物の買い出しに行ってもらう。」
え、嘘だろ。俺夏休みはゆっくりと過ごすはずだったのに唯一夏休みに活動がある買い出し係なの?
本当にやらなきゃダメなの?
内心そんな事を考えているが従うしかない。
「そして私は先生に各出し物の許可証を出してもらうように説得してくる。以上だ。今日の会議はこれにて終了。解散だ。」
その一言で皆が一斉に動き出す。
正直に言うと夏休みに学校に来なければならないのは嫌だが、せっかくの初仕事なのだ。
精一杯やろうと思う。
こうして、俺の夏休みが幕を空けたのである。




