11 入学式とそれぞれのクラス
入学式が始まる。
学園長の挨拶のあと、新入生代表の挨拶があった。
もちろん、エドウィン殿下である。
殿下が登壇すると、「キャーッ」という歓声が上がった。
王子様を具現化したようなその出で立ちは、女性の間で大人気である。
そして私は、また宝石をギュッと握りしめる。
黄色い声を上げた女子生徒を睨みつけたい気持ちを、抑えつけるためである。
俯いたまま入学式を終え、それぞれのクラスへと移動になった。
エドウィン殿下はSクラス、私はAクラスである。
これも・・・父親の権力でどうにか勝ち取った結果である。
私と同じ青色のタイをした人はいない。
他の侯爵家はSクラスらしかった。
Aクラスは、伯爵家の赤が多く、子爵家の黄色と男爵家の緑がチラホラ在籍していた。
私は目立たないように、後ろの窓際に座る。
誰も、私に声をかけるどころか、隣に座るような人もいなかった。
一人きりの寂しさは、病院で慣れているつもりだった。
それでも、さすがにこれは凹んでしまう。
初日から心が折れそうだ。
担任から、学園についての説明を受け、本日は終了。
明日から本格的な授業に入る。
帰ろうとしてクラスを出た時、隣のSクラスの面々も出てきたようで、鉢合わせとなった。
紫のタイ、青のタイ・・・将来この国の中枢を担うであろう人たちの姿は圧巻である。
その中に、黒のタイをしている女性がいた。
プラチナブロンドの髪をなびかせ、優し気な表情を浮かべた女性が、エドウィン殿下と談笑している。
殿下も、心からの笑顔で、その女性を見つめている。
その光景は、二人の髪の色も相まって、光の神と月の女神が慈しみ合っているような、神殿に飾られている絵画のようであった。
この女性・・・まさか、この女性が聖女様では・・・。
これまでにない感情が私を支配する。
妬み、怒り、悲しみ・・・負の感情が一気に溢れ出るようだった。
これは・・・いけない。
急いでこの場を離れなくては。
そう思ったところで、足が動かない。
むしろ、勝手に、殿下のほうに歩みを進めようとする私の体。
私は、思いっきり宝石を握りしめた。
イタイ、イタイ、イタイ、イタイ・・・・・・。
その痛みで我に返ると、殿下たちに背を向けて、走ってその場を離れた。
馬車に乗り動き出したところで、ゆっくり手の力を抜く。
すると、勝手に涙が溢れ出てきた。




