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サ終世界の歩きかた  作者: 39カラットルビー
第二章 PVP特化型対戦ゲームの歩きかた
14/50

ギャルとの話しかた

『カタ、キィ…カタ、キィ…』


換気扇のシャフトが鉄板で設(しつら)えられた室内に物悲しく反響する倉庫の一画


気さくに挨拶をしてくる少女におずおずと片手を上げて応じるが


俺もイアも心中は『?』で一杯だった


さり気なく足を半歩ずらしてイアを背中に庇い、謎の人物に聴こえないよう注意を払い小声で問う


(もしかしてあの人は俺と同じ…召喚された人(プレイヤー)?)

(多分、違います。疑似体(アバター)特有の波長が有りません)

(え?だとしたら……)


「ちょっとちょっと~人の事チラ見しながら 二人でこっそこそ何話してんの~?感じ、悪いんじゃないかなぁ?」


気付くと少女が両手を腰に当て 上体を少し屈ませジト目でこちらを見ていた


確かに、助けてもらったのに自分達の態度は失礼極まりない。疑念はあるが敵意や悪意は感じない──今のところは


──なら


「えっと、すみません、急な事に驚いて…助けてくれて有り難う御座います」


軽く頭を下げると


「キミさぁ…漂ってるだけのア(・)レ(・)に向かって行こうとしてたよね?危ないヤツだって知ってたのかなぁ?」


いきなり本題を振られ、ギクリと肩が飛びそうになるのを堪えた。目付きも変わっていたかもしれないが仮面で隠れていて良かった


親し気な少女の視線も探るようなそ(・)れ(・)に変わり 首筋をイヤな汗が伝う


あ(・)ち(・)ら(・)さ(・)ん(・)もバグに対して行動を起こそうとしていた俺を不審に思っていたようだ


(物影から飛び出していく瞬間を見られたのか。確かに、傍から見れば無害か有害かも分からない靄(もや)に突っ込んでいくなんて怪しい、な)


どう言ったら良いものかと相手の言葉を受け、身を強張らせる俺に


「ッぷ!あっはははは!!ごめんごめん、変に警戒させちゃったね」


片眼を瞑り(ウインクしながら)両手を合わせて毒気のない笑顔で少女は謝罪する


だが、コロコロと変わる表情がまた一変し


「…真面目な話、キミ達が気になるのはホント、アタシもあのも(・)や(・)も(・)や(・)の事は詳しく知らないの、なにか知ってる事があるなら教えて欲しいの」


背中に庇っていたイアに裾を引かれて振り返ると『どうしましょう』と視線で訴えている


俺は少し考え、少女に向き直り頷いた



ーーーーー



「なるほどねぇ…この世界は仮想の産物でぇ、あの靄(もや)は世界に生じた不具合の具現、か」


倉庫に転がされていた手頃な荷物に腰を掛け この世界について そしてバグについて大まかに説明をした 既にバグを認知して対処に動いている彼女に下手に隠し立てするのも良くないと判断した結果だ


彼女はプチプチ(梱包材)でぐるぐるに包装されたマットレスに腰掛けて足を組みながら 顎に指を当て「ふむふむ」とこちらの言葉に頷きながら説明を聞いてくれた


「ま!ホントの所、信じられない内容だよね。普(・)通(・)な(・)ら(・)さ」


それはそう、説明している俺としても荒唐無稽極(きわ)まりない内容を口にしている自覚はある


少女はそんな混沌とした話を聞いて「むむぅ…」と腕を組み直し口を”へ”の字に結んで唸ったかと思えば


「でもさ、信じるよ。なんちゅーかさぁ…ずっと変だと思ってたんだよね。や、何が変なのか具体的には分かんないんだけど、違和感?みたいな…て!んなん言われても わかんないかっ!」


「うんうん」と得心がいったように頷いた後に「シシシっ!」と綺麗な歯を見せて笑う、本当に表情が豊かな人だ


「そうなっとアタシも世界規則(システム)から逸(はぐ)れたってことになんよねぇ……やっぱりアレの影響、かな」


「ん~」、と耳の前に垂らした髪(サイドバング)を指でクリクリと弄(いじ)って何事かに思いを馳せている様子だったが


「………。」


──? いま、彼女がこっちをジッと見たような


(気のせいか?今の視線は何と言うか、こう……)


なにかを疑うような警戒を通り越して敵意に近いものを感じたが それも一瞬のこと すぐに「ま いっか!」と気を取り直し爛漫な笑顔を浮かべた


たしかにこ(・)ん(・)な(・)怪(・)し(・)い(・)仮(・)面(・)を不審な目で見るなというのがムリな話か


「あっとと!ちゅーか自己紹介もまだだったね!あたし『シャスティル・ジェーラ』!シャルって呼んでね、ん~でキミ達は……」


「はい!私はイアって言います!イアって呼んでください!」


(そりゃあ、そうだろ……)とイアの自己紹介を内心でツッコミながら俺も名乗る


「俺は春保(しゅんぼ)大輔(だいすけ)って言います、えっと、春保でも大輔でも呼びやすい方で呼んで下さい」


「へぇ~イアちゃんと…ダイスケ、ね、あんさ!ダイスケって もしかして東の国の人?」


「え?東…あぁ、はい東の”日本”って国の出身です」


シャルの問いの内容が大抵のゲームに存在する東欧圏の民族を指していると理解し、適当に話を合わせる


「なるほど(な~るなる)!この世界にも似た響きの名前の人が居るんよ。東の国って呼ばれてんだけどね!もしかしてそ(・)れ(・)も東の文化なの?」


そ(・)れ(・)が何を指しての事なのかは、コレ(仮面)しかないだろう


「あぁ~っとコレはまぁ、帽子とか兜みたいなモン…です、はい」


「へぇ~~、イイね!」


何がイイかは置いといて、不必要に警戒されたり罵倒されるよりは良い


(さっきの眼差しは気のせいだったかな…?)


内心ほっと安堵の息を吐きつつも、無事に自己紹介を終え 落ち着いてきた頃合いで気付いた事がある


「んじゃま、よろ~☆って事で飯でも行っとく?」


(……ギャルだ、この人。言動も恰好も全てが物語っている)


独特でフレンドリーな言動、服装なんか何処(どこ)も彼処(かしこ)もが溢れそうなパ(・)ッ(・)ツ(・)ン(・)パ(・)ッ(・)ツ(・)ン(・)な恰好で視線のやり場に非常に困る


中年根暗オタクと対極の存在。まずい、意識したら緊張というか怖くなってきた。だが悪い人ではないと思うし、先入観で勝手に苦手意識を持つからイカンのだ


静かに深呼吸して挙動不審の気(け)を追い払い、努めて平静に振舞おうと顔を上げると


「どったの?具合悪い?だいじょぶ?」


目の前で心配そうに小首を傾げる視線とぶつかった


明るいオレンジ色の髪がふわりと揺れる。外に広がっていた夕映えを写し取ったような美しい色だった


(やっぱり良い人だ、ギャルだなんだと色眼鏡で視て人を避けちゃ駄目だな)


「はい、大丈夫です。ありがとうございます」


「ん、そか、良かった」


シャルは目を細め笑顔を向け


「んじゃ!行こっか!いつまでもこんなとこ居ないでさっ!」


と、先行し倉庫のドアを開けていった


「俺達も行こう」


イアに声を掛けると


「……はい」


なにやら口を尖らせてスカートを握り締めている


「シャルさん、お強くてお綺麗ですもんねっ!」


「え、どうしたの」


「お顔、赤くなってます」


「な、なに言ってんのぉ そんなの見える訳ねーべ……」


仮面で隠された顔は確かに熱をもった感覚がある。だがそれを外から確認できる術は、無い。と思う筈なのに


イアの視線は妙に確信めいている


(うっ…そりゃ、あんなに顔を近付けられたら誰だって……)

「別にそんな事無いょ」


動揺からか語尾が小さくなってしまった。我ながら非常に怪しい


「ふーんっ!ふーんっ!!」


完全に邪な意図を見抜かれたのか、イアはすっかりむくれてしまった


「ほら!私達も行きますよぅ!」


右手首を両手でがっしり掴まれ、引き摺るように連行された


倉庫の外、再び電光掲示板の前


掲示板は相変わらずチカチカと明滅している、電力が乏しいのだろうか


「あの、ここって町…じゃないですよね?」


イアに連行されて えっちらほいさ歩く俺達をニヤニヤしながら掲示板の前で待っていたシャルに問う


「ん~、そだね。確かに普通の町じゃないけど、でも皆ここに住んでんだよ」


「住んでるって このお船は何処かへ向かってる途中とかじゃないんですか?」


イアが驚いた様子で尋ねる、俺も内心イアに同意して驚いていた


巨大な貨物船か輸送艦かと推測を立てていたが的外れだったようで


「ん、この艦(ふね)はどっかを目指してるとか停泊するとか無いんよ、ずぅっと飛び回ってんの」


「な!?、目的もアテも無く飛行を続けてるんですか!?」


「ぃや、目的は有るっちゃ有るんよ、いっちばん強い英傑を決めんの」


シャルは電光掲示板の上部に記された掠れた文字をピシッ!と指差して この艦の名と、ここが一体なにを目的としているのかの疑問を晴らすように教えてくれた。


「ようこそ!【超ド級闘技艦 マグヌス・テアトルム】へっ!!」

ここまでお読みくださった貴方に感謝を



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