183話『恨み深く、不退転の災厄となりて』
――――かつて、開発の進んだある街で。
たくさんのビルが建てられ、排ガスを垂れ流す車が行き交い、大空で飛行機がうねりを上げ、空に人工衛星の星が輝き、建設中の軌道エレベーターは毎日騒音を響かせている。
ここは人の街。多くの資源を消費し、そこからより大いなる成果を上げようと天にも手を伸ばす人々が、夜には電気で灯った有限の光を煌めかせる。
その街の中で、わずかに自然が許された公園にホームレスたちの拠り所があった。
世間からはぐれてしまったコミュニティのとある新入りの老人が、空が暗くなってきた頃にお得意の魔術を使って、一斗缶に詰め込んだ枯れ木に火を灯した。
手の平から生み出された炎が缶の奥へ落とされ、大きな火となって公園の隅に集まったホームレスの男たちを照らし出す。
「おぉ、ついたついた! やるなぁ、ラウルさん」
「魔術師がいてくれると助かるよ。ここじゃ火を付けるライターだって貴重だからね」
「ハハハ、お役に立てて何よりです」
寒くなってきたこの時期に火の存在はありがたいものだ。冷たい指先を温める輪の中で、火を付けた術師であるラウル・クルーガーは朗らかな笑みを浮かべていた。
ここに来て日の浅い彼は、他のホームレスたちと違って身なりが汚れてない。服は使い込まれているがまだ異臭はしなかったし、白い髪と髭は丁寧に整えられて清潔感があった。
物腰もゆったりとしてどこか気品が感じられる新入りに、他のホームレスたちが好奇の視線を向けてくる。
「ラウルさんはどうしてオレらの仲間に? 魔術師なんて教養あるだろうに」
「うちの息子が事業に失敗しましてな。いやぁ、運が悪かった」
「そりゃあ災難でしたな。じゃあ息子さんもホームレスに?」
「いえ、そうじゃありません」
邪推してきた他の男に、ラウルは首を横に振った。
「ワシの資産の一切合財を売却し、すべて息子に譲りましてな。息子は今頃、新しい挑戦に乗り出していることでしょう」
「えぇ!? そんなら息子さんとこにお世話になりゃあええでしょうに」
「そうはいきませんよ。ワシのことに気を遣わせて息子の足を引っ張りたくはないのです」
驚くホームレスたちに対し、ラウルは少しも影を感じさせない穏やかな表情を浮かべながら、缶の中で揺らめく篝火を見つめている。
「妻にも先立たれましたし、ワシはもう老いて去りゆく身。それなら息子の健勝を願って、ひっそりと過ごそうと思いましてな」
「はぁー、立派だねぇラウルさんは」
「ハハ、そんなことは。不器用なだけですよ」
気恥ずかしそうに笑ってから、ラウルは静かな言葉で語った。
「それにワシは息子を信じております。息子ならきっと成果を上げて、世の中に貢献してくれる。そう考えれば生きてるだけで幸せですわい」
そうして時間を過ごしていると、公園の外に車のブレーキ音が聞こえてきた。
ドアが開く音を耳にしながら、ホームレスたちは訝しげにそちらへ振り向く。
「んっ? 珍しいな、こんな時間に車が来るなんて」
「まさかラウルさんのお迎えだったりしてな」
「ハハ、そんなまさか」
やがて車のほうから黒い帽子にサングラスそしてスーツと、全身を真っ黒に染めた数名の若い男が茂みの奥から視線を向けてきた。
背筋を伸ばしてキビキビと動く彼らは、手元に小さな機械を持っており、それをホームレスの一団へとかざしている。
「センサーに魔力反応あり。魔術師がいるのはあのグループだ」
「よし確保するぞ」
男たちが一斉に歩きはじめ、暗闇の中をにじり寄ってくる。
老いたラウルの瞳に無数の手が伸ばされてくるのが映る。逃げ出す暇もなく、彼はまだ人の未来に希望があると信じたまま。
「いったい、なに、を――――」
鎖のような手が近づく、老人の未来が閉じ込められる。
後に残る記憶は、棺桶の内側のような一切の暗闇――――
◇ ◆ ◇
「――――夢、か」
いつの間にか眠ってしまっていたラウルは、肉樹の虚の中で眼を覚ました。
現実に戻ってくれば映る光景はいつもどおり。たくさんの人々を犠牲にして打ち立てた肉の樹は、その表面に犠牲者の顔を浮き立たせて怨嗟の声を響かせている。
――殺して殺してよお ――殺してくれえぇぇぇぇぇぇ
不気味な声を聞きながら、老人は車椅子に座りながらだるそうに顔を上げると、目元を手で覆い口の端を歪める。
「懐かしい……忌々しい夢を……」
外の状況を確認する。未だ戦闘中、術式魔獣の八つの目に映るのは荒れ狂う雷と炎。その戦い轟音は肉樹の中心に伸びた吹き抜けからも聞こえてきていた。
「くだらん戦いだ。一体いつまで歩けば――」
悪態を吐こうとした老人の瞳が、塞いだ手の内側で大きく見開かれた。
肥大化した魔力の端が、怨念を持って編まれた魔術式が、歓喜の如く打ち震え、それの来訪を確信してきたのだ。
「来たか……!? 感じたぞ……死の因子……!!」
笑みを浮かべたラウルが座す場所から遠く昼の空の果てに、一条の流れ星が日差しの中に煌めいた。
因果に護られたその星の内側で、手を繋ぎ合った四人が空間の狭間を駆ける。
上も下もわからない、たくさんの何かが閃光のように過ぎ去っていく回廊を、戸惑いながらも力強く――――
「ちょっとこれどうなってんの!? マジでちゃんと着くわけ!?」
「わかりません! でも近づいてる感じがします!!」
荒々しい言葉に対して、メイド服をはためかせる少女が確信を持って叫び返す。
眼鏡を掛けた少年が何かに気付いたように目を丸くし、純白の片翼を伸ばした女性が彼に顔を向ける。
「あっ、今引っ張られた!?」
「わたくしも感じました、何かに引き寄せられている!」
巡り会って寄り添い合った四人は、向かう先を同じとして世界を旅する。
先んじて何かを感じ取った紅蓮の少女が、紅いツインテールを振り回して叫んだ。
「口を閉じてろ! 落っこちるわよ――っ!?」
その直後、空から落ちてきた星は、アカシの街を覆う結界を無視して百果樹の梢へと突き刺さった。
すべての障害をすり抜けるようにして大樹の内側へと潜り込んた彼らは、現実に引き戻されて百果樹内のとある一室に現れると、そのまま星の重力に捕まって床に落とされる。
「あいた!?」
「きゃあ!?」
「いだっ!!」
「おっと」
少年少女が木造りの床に叩き落され悲鳴を上げる中、片翼の女性一人だけは難なく着地する。
床に落ちて背負った荷物に潰れていた少年が、伊達眼鏡を直しながら顔を上げた。
「いてて、ここは……」
「な、なんじゃいお前ら……!?」
突如として現れた彼らに驚いた声を上げてきたのは、四本の腕を持つ象顔の神様であった。
象神の傍らには苦しそうにもたれ掛かる猫耳の娘がおり、円状に並んだテーブルの周りには複数の冒険者らしき装いの者たちが立って、彼らに顔を向けてきていた。
そしてその百果樹を見据える蜘蛛型魔獣の最奥で、座した老人はニタリと笑いを零す。
「死の因子、向こうから来るとは……やはり、引き合う定めか……」
内にあるのは漆黒の怨念。すべてを暗黒の霧で覆い尽くす日まで老人の歩みは止まらない。
そしてその時はもうすぐそこまで来ていた。
「すべては予定通り……さぁ、我が人生の意味を、最大の成果を上げてご覧にいれようぞ……クク、ククク、フハハハハハハハハハハハハ!!!」
寂しい笑い声が木霊する。もはや選択の時はとうに過ぎ、振り返ることなく進み続ける。
あらゆる命に対する冒涜者と、1000年後に目覚めた少年と仲間たちの戦いが始まろうとしていた。
はーい、というわけで7章はこれで終了でございます、ここまでお付き合いいただきありがとうございました!
いやー、割と7章はその……ちょっと迷走したかな!! ちょっとな!!
この章(dash含む)の構成がね、イリス回挟んで次の敵に繋げるって感じだったのでね、決戦を控える中でどういう話を創るかってことで、今までにない感覚を手探りで開拓するのでけっこうあれこれ頭悩ませてました。
けどまぁ、結果的にはそこそこ形になったんじゃないかな? そうしとこう、うん。
だってね、前々から思ってたことで「この主人公一行、女同士に向き合った矢印少ねえな」ってことでちょっとどげんとせんとあかんなと考えてたんですよ。
ということで急遽イリスとアリサとナハトが距離を近づく話をねじ込みました。
本当はイリスの心象空間にも靖治だけが来る予定だったんですがね「アリサとナハトがもっとイリスと仲良くなってる!!!」って幻聴がしたんで、二人も一緒にイリスのもとへ行かせたり。マナちゃんが「運命変わったー!!!」って泣いてたのはそういうメタ的な理由があったりします。
そんでまあ、次回はアレです決戦です。前々からこの話は好き勝手書くぞー! って決めてたんで好き勝手書きます。
次回の投稿は……三日後でいいかな! いや、なんか今は休む気分じゃないので。
でもけっこう話の見通しが悪いので、話に詰まったらまたいきなり数日休むんじゃないかな!! いきあたりばったりごめんこ!!!
このあとがきの最後に、ちょっと虹の瞳に時系列についてまとめたものを作りましたので記載しておきます。
そんじゃあみなさん、また(多分)三日後にー。
【虹の瞳時系列】
・西暦201X年
万葉靖治コールドスリープへ。
・西暦202X年
次元光発生。流入する異存在により従来の文明は崩壊を始める。
万葉満希那が異世界の機械神『デウス・エクス・マキナ』と契約し現人神と成って不老に。彼女と機械神を軸にして東京だけは急速に復興を始める。なおその影には聖剣の勇者や九尾の姿もあった。
無名の神は風に吹かれてただ見ていた。
・西暦2030年頃
転移してくる人々は言語がバラバラで意思疎通が困難な状況が続いたが、何者かが翻訳ナノマシンを世界中に頒布。
以降は基本的に誰でも話し合えるようになる。
・西暦2040年頃
新宿に新東京都市が絶対安全都市として確立。周囲を壁面とエネルギーバリアに囲まれ、地下へと伸びた多層式都市。
地上部分にはかつてあった病院がそっくりそのままの形で残され、以後同じ形を保ったまま修繕を繰り返す。その病院には秘匿領域が用意され、万葉靖治がコールドスリープされたまま隠され続けた。
東京の運営は管理コンピューター『イザナミ』に譲渡されるが、裏の最高責任者の座には万葉満希那が座ることに。
聖剣の勇者は東京復興を見届けると、かつての仲間を置いて一人旅に出る。九尾は世界情勢が収まるまで客人として東京に居座った。
一方で世界中で続く転移により、世界中で神・修羅・魔人・概念存在など神クラスの異存在が溢れる。民衆は神々が作った次元光避けの結界により生活を送っていたが、次第に神々同士の覇権争いによる戦争が勃発。
神話戦争として以後二百年近く続く。
東京は防衛機構『イザナギ』の無人兵器軍とデウス・エクス・マキナの戦闘形態により防衛を続け、市民の生活を死守する。
・西暦2090年頃
聖剣の勇者『ロイ・ブレイリー』が不老に。老人の姿のまま放浪を続ける。
・西暦2200年頃
突如として謎の巨竜が出現。世界中を飛び回って戦闘を始め、その強烈な戦闘力をもって神クラスの異存在を駆逐し始める。
百年経つ頃には既存の神クラスはすべて滅殺し尽くされ、これにより神話戦争も終結した。
以後も巨竜は富士樹海に身を置きながらも神クラスが転移してくるたびに戦い続け、人々からはやがて『守護者』と呼ばれ慣れ親しまれるようになる。
なお守護者が戦いを挑む相手には何らかの法則性があるようで、東京の機械神は手出しされなかった。
しかしながら守護者の東京来襲を危惧し、デウス・エクス・マキナは封印処置を取られる。
・西暦2250年頃
シオリ・アルタ・エヴァンジェリン・グロウ・テイルがワンダフルワールドの観測を開始。
世界の裏側に後に言う小世界『黒の記念碑』を創造したのち、そこから術式を付与したゴーレムを送り込みテイルネットワーク社を世界各地に建設させる。
以降、テイルネットワーク社は結果的に社会基盤の一部となった。
・西暦2300年頃
初期次元光で東京の転移してきたとある九尾が「厄介なクソ神どももおっ死んだし、妾は京都でのんびりしようーっと」と東京を出て京都に向かい、そこで次元光の地形転移により油田と変わり果てた京都を見て崩れ落ちる。
その後ヤケクソになって旧舞鶴付近にネオ京都を作り上げたが、以後長らく日本有数の巨大都市として繁栄することに。
万葉満希那は普段は富士樹海で眠っている『守護者』とコンタクトを取ろうと試みる。
どれも失敗に終わったが、その過程で『夢』を通じて繋がる技術を作り上げた。
・西暦2300年後期
一部の者が「あれ? そういえば地震起こらなくなってる?」と気付きだす。
以後、本編開始まで能力者や巨大生物による地震はあっても、自然に地震が発生したことは一度としてない。原因不明。
・西暦2400年頃
リリム・エル・イヴがたまたま知り合ったクアンタムノーチラス号と共に犯罪者引取サービスを開始。チラシの配布にはこれまたたまたま知り合ったシオリに(無理矢理)協力してもらい、テイルネットワーク社に配置した。
最初は怪しまれたが、美人な魔王様とお話できてお菓子ももらえるということで冒険者のあいだで評判に。
・西暦2500年頃
次元光から異世界の大宇宙帝国軍機動兵器『サテュロス』が内部の搭乗員ごとワンダフルワールドの琵琶湖へ転移。状況を把握する前に守護者に襲撃されボコボコにされた。
抵抗も虚しく艦橋を破壊され艦長を含む主だった搭乗員は全員死亡。そのまま完全粉砕される直前にサテュロス内部の頭脳ユニットに自我が発生し、白旗を上げたところ何故か守護者から見逃される。
以後サテュロスの頭脳ユニットは自己を『マイティ・ハート』と名乗って琵琶湖にサテュロス本体を降ろし、やがてこれを中心にビワファクトリータウンが出来上がった。
マイト様は守護者と勇敢に戦って生存した唯一の個人である。ここテストに出るぞ~。
・西暦2690年後期
万葉満希那が弟の伴侶足りうる機械の制作を始める。
コアには『守護者』の生態から着想を得た新技術を使われ、感情によって性能を発揮するロボットのプロトタイプが完成した。
デフォルトでは翠眼に銀髪だが、使用者の設定によりどんな色にも変更できる。(靖治の要望に応えられるように)
また首から下の肉体も人工皮膚により思い通りのプロポーションを設定できるはずだったが、まだ開発段階のためオミットされている。
これに合わせ弟にピッタリのAIを制作し始めるが納得行く人格は完成できず、「まぁ、最悪自分の魂をインストールして靖治とイチャイチャするも良いか」と考えていた。
・西暦2700年頃
東京で看護ロボットXS-556シリーズが生産され病院にも配備される。その一体が天羽月読という少女に懐かれながら業務を続ける。
しかし管理コンピューターの暴走により虐殺が発生。市民は皆殺しに遭い月読も死亡する。
死体はどこかに連れ去られ、残ったのは無人の都市。清掃ロボの手で綺麗になって静まり返った街で、看護ロボは奉仕対象を探してさまよい続けた。
なお万葉満希那は生き延びたと見られる。
・西暦2720年頃
ある赤ん坊が次元光の転移で飛ばされてくる。拾われた赤子は『リキッドネス・ツリー』の名を与えられた。
リキッドネスは類まれな超能力により幼い頃から頭角を現し、万象を見通す完璧な未来予知により20歳の頃には大阪の統治者としての地位を確固たるものとした。
その後も超能力の副作用により寿命を超えて長く生き続けるが、同時に過負荷により肉体に変調が起こり、全身がブクブクに膨れ上がった醜い姿となった。
・西暦2800年
百年間奉仕対象を探し続けた最後の看護ロボが、病院の秘匿領域を偶然発見。そこでコールドスリープで眠る少年を見つけ、自我が発生する。
看護ロボは同時に隠されていた戦闘用と見られる謎の義体に自我をインストール(以降この時系列表ではイリスと呼称)。イリスは最後の奉仕対象の絶対保護のため、放置されていた戦艦を奪取してコールドスリープ装置ごと東京を脱出する。
しかし冷凍睡眠された少年は難病に苦しんでおり、イリスの持つ技術では東京内部の清潔な空間でなければ治せなかった(東京内部は外界からの別種のナノマシンや魔力等の流入を防いでおり、既存のナノマシン技術はその空間を前提として造られていた)。
そのためイリスは戦艦から離れてより高度なナノマシン技術を探し始めるが難航し、毎回傷だらけになって戦艦に戻ってくる。
・西暦2802年
イリスが「メイドいいなぁ……」と憧れてメイドの格好を始める。
・西暦2810年頃
10年ほどかけてイリスが把握した、ワンダフルワールドで東京以外にナノマシン技術を持つ者は三者。
琵琶湖の機動兵器サテュロスのマイティ・ハート。翻訳ナノマシンの謎の製作者。テラフォーミングナノマシンを垂れ流して活動する守護者。
後ろの二つはコンタクトを取れようはずもないので、唯一話の通じるマイティ・ハートに技術提供を申し込もうとするが最初は門前払いされた。
二回目以降は何故か本人に面通しされるようになったが、頑としてナノマシン技術の提供は拒否された。それからも数年おきに訪ね続けるが、一度として首を縦に振ってもらえなかった。
イリスはマイティ・ハートからの提供は難しいと見て、各地の異世界の遺跡などを探索しナノマシン技術を探し続ける。
・西暦2990年
イリスがリキッドネス・ツリーより極秘の依頼を持ちかけられる。人と交流していない自分が指名される理由が見当たらず、イリスは当然怪しんだが、対価は予知によるナノマシン技術獲得ルートの啓示であり、探索に行き詰まっていたイリスは依頼を請け負った。
依頼内容はオーサカブリッジシティから極秘物資をビワファクトリータウンに運び、再び持ち帰ることだけ。その護衛役の一人としてリキッドネスファミリーの構成員と共に淀川から船で琵琶湖へ渡った。
極秘物資の中身はリキッドネス・ツリー本人。この時にリキッドネスはマイティ・ハートに接触し自らのクローン体を作るように依頼、これを了承された。
その後、リキッドネスは遺伝子情報を提供したあと再び大阪へと輸送され直し、何食わぬ顔でイリスに予言を与えた。
イリスはそれを信じ、10年後に備える。
・西暦2991年
美少女マナちゃん爆☆誕。
培養槽で受精から一ヶ月で二歳程度の肉体まで早熟させられた。そのまま五歳ごろになってから出されるはずであったが、暇だったので超能力でガラスを切り取って自主的に誕生。
慌てて駆け付けてきたマイティ・ハートに舌足らずな声で一言。「いやん、服ちょーらい」
それからマナはロイ・ブレイリーに預けられ、各地を旅することになる。
・西暦2995年
アガム教団聖騎士団が遠征中に軍隊ごとワンダフルワールドへ転移してくる。
間もなく所属していたナハト・マーネが離反、罪の意識から孤独に自己を痛めつけながら放浪を続ける。
・西暦2996年
断頭台に晒されていたアリサ・グローリーが首を斬り落とされる直前に次元光により転移してくる。
ワンダフルワールドの破天荒な気風は彼女の性格に合っていたため即座に慣れ、一端の冒険者として生活を送る。
・西暦3000年7月頃
イリスが待望のナノマシン技術を獲得。製錬を開始。
ハヤテら冒険団オーガスラッシャーとドン・ミズホス一党が、イリスの乗る病院戦艦乗っ取りを企て、ミズホスによりアリサ・グローリーが金で雇われる。
また生きる気力なく彷徨っていたナハトをドン・ミズホス一党が商品として捕らえる。
・西暦3000年8月1日
あらゆる準備が整い、1000年後の世界で万葉靖治が目覚めて治療用ナノマシンの注射を打たれる。
病気を治してくれた愛しいロボットと共に、癒やしと再誕の旅の始まり。
無名の神は因果が織りなす風の模様をただ見ている。




