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1000年後に、虹の瞳と旅をする。  作者: 電脳ドリル
七章dash【未来を向くは虹の瞳】
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180話『進撃!』

「何でも構いません、私たちは突き進むのみです! 靖治さん、お二人を連れて山の頂上へ!」

「了解。んじゃマナちゃん、ロイさん、パパっと上がっちゃいましょうか」

「おっけおっけ、れっつはいきんぐなのだー」

「いやー、山を登るのって毎回ワクワクするのぉー」

「あっ、それわかります」


 イリスたちに守られながら、靖治はマナとロイと共に荒れた坂道を歩き、山の頂上を目指し始めた。

 曇り空の下にそびえる山は、薄暗く異様な雰囲気を放っていた。木は上に行くほどまばらになっていて、ここから見える頂上にいたっては何の草木も生えていないようだ。

 先頭に立って周囲から沸き出したモンスターと対峙するイリスに、後ろから近寄ったアリサが耳打ちした。


「ちょっとイリス、このまま行くの? あのガキさっきから怪しすぎでしょ」

「行きます! 私は私を友達と言ってくれたマナさんを信じます!!」


 疑問の言葉にハッキリとした声で返す。危うさすら感じるような純粋さを見せてアリサを驚かせたイリスは、前を見据えたまま背後へと話しかける。


「マナさん、これから私が助けに行く人も大切な友達です。お願いします、私をそこへ連れて行って下さい!」

「……そう言われちゃやる気でちゃうのねん。任せといてね、友達の友達は友達って多分どっかで聞いた」


 その虹色の信頼を受け止めたマナは、わずかな逡巡のあと杖で足元を鳴らして意気込んでみせた。

 答えを聞いたイリスが満足げに笑ってモンスターの群れに飛び出していくのを見て、アリサが腑に落ちない様子で肩を落とす。


「信じて大丈夫なわけぇ……?」

「心配しようがしまいが、ウチは本気出すよ」

「ハンッ、アンタが予知能力者だからか? 万能気取ったやつの態度って軽いもんね」


 何でもお見通しな振る舞いをしてきたマナを見下ろして、アリサがいくらかの不満を込めて吐き捨てた。これまでの言動から、アリサはマナの備える能力についていくらかの検討をつけて、同時に不信感を育てていた。

 ハッキリ言ってアリサは気に入らないのだ。マナの言葉足らずのところが、こちらを信じずていよく利用しようとしているかのように感じられていた。

 だがマナはこの批判を否定をせず、ぼんやりした表情に瞳だけは強く見開いて、頑張るイリスの背中を見つめている。


「それもある、けどそれだけじゃない。前を向いて走れる人は、みんな羨ましくて、愛おしいから」


 この言葉にアリサは口をつぐんだ。今のマナから、一瞬靖治と似たような空気を感じたからだった。

 他の人とは違うものを見ていて、何かを諦めているような口調。けれども言葉の奥には、戦いに向かう戦士のような意志が備わっていた。


「ウチはぶっちゃけやる気はなくて、いっつも仕方なくやってるだけだけど、本気で未来を目指す人のためなら、頑張れるよ」


 マナの奥底に燃え盛るものを感じたアリサは、それ以上糾弾はしなかった。

 そうしている間にも山道の両側から四足で走る野獣が飛びかかってくる。アリサはマナに背を向けて炎の魔人を顕現させると、即座に燃え盛る熱拳を殴り抜けて獣たちを弾き飛ばした。


「ふん、何しようってか知らないけど、イリスのこと裏切るんじゃないわよ」

「モチのロンなのよさ」


 熱気の煽りを受けながら、マナは荒れた道のりを進み始めた。

 前方の道はイリスが切り開いてくれている。だがイリスはいささか急ぎすぎていて、隙を突く形で2メートル台の蟷螂型モンスターが大鎌を振るってきた。

 すかさず純白の鎧をまとったナハトが片翼で風を切って飛び込んで、大鎌を左手の呪符で縛って封じると、身動きが取れなくなった大蟷螂の体を右の刀で斬り刻む。


「イリスさん、いつもより前へ出過ぎています。立ち位置に留意して下さい」

「うっ、すみません」


 注意されたイリスが背後の距離を測って少し下がると、ナハトもそれに合わせて後退する。

 イリスは猪突に過ぎた自分を顧みて、構えた拳を握りながら唸るような言葉を漏らした。


「……難しいです。これまで私の自分の感情に助けられてばかりだと思ってましたが、今は気を抜くと振り回されるなんて」

「心配せずともすぐに慣れますよ。その気持ちを否定はしないで、勝負所では必ずあなたの力になるでしょう」


 感情のコントロールが上手くいかないイリスへと、ナハトは柔らかく笑いかけて見せた。

 ひたむきな彼女が憂いなく先へ進めるよう、少しお姉さんぶった態度で純白の片翼を広げる。


「あなたを支えるのがセイジさんだけとは思わないで、戦闘ではわたくしどももフォローします。今のうちにコツを掴み、本番までに心を慣らして下さい」

「ハイ!! 背中は任せました!」


 一行はモンスターの群れを蹴散らしながら山の頂上へと進み続ける。前線はイリスがアタッカーとなって果敢に戦い、それをナハトが飛び回ってサポートした。

 後衛の防御はアリサの仕事だ。イリスとナハトの防衛網を抜けたり別方向から襲いかかってきたモンスターを、片っ端から魔人の豪腕でねじ伏せる。


「オラオラ!! 野良の雑魚モンス共がアグニに勝てると思うなよ!!」


 パーティきってのパワーを誇るアリサにとって、向こうから飛び込んでくる敵などカモでしかなかった。おかげで中心を歩く靖治とマナとロイの三人は、怪我一つ負わず緊張感のない顔で進めている。

 大変なのは先頭で敵をひきつけているイリスだ。この山は聞くにも勝る量のモンスターが跋扈しており、獣型、虫型、爬虫類型、植物型、鉱石型、精霊型など、どうしてこんなにいるのかと言うくらいひしめいていて、相手に合わせて戦い方を変えないといけない。

 そして今、イリスが紫色の塊に向けて突き込んだ拳が空を切った。崩れた輪郭の端から漏れる煙、ガス状生物の類だ。


「マズい、物理的攻撃が通じない……!」

「お任せを」


 フォースバンカー(奥の手)を切ろうとしたイリスに、それには及ばないと割って入ったナハトが亡失剣ネームロスを振るう。

 ボロボロの刀は一閃にてガス状生物を形成する非実体の核を斬って殺し、広がりそうになった有毒ガスは刃の後から吹きすさんだ風魔法によって遠くへと散る。


「助かりましたナハトさん!」

「いえ、構いません」


 ナハトは短く答えながらも、実のところ今の敵を一撃で屠れる確信はなかった。試しにやってみたら倒せた、というのが実際だった。

 別に他の倒し方もあったのだが、以前の紫煙の奇術師アゲイン・ロッソとの戦いで、ネームロスがひとりでに超能力の流れを斬ったのを思い出したのだ。もしかしたら非実体のモンスターにも通用するかもと考えたが、期待通りの性能を発揮してくれた。


「この剣、わたくしが思うよりも色んなものを斬れるようですわね。いったい、どういう由来なのやら……」


 出自も知れぬ刃こぼれした愛刀をチラリと見て、ナハトはボヤきながら横合いから突撃してきた甲殻のあるサイのようなモンスターを斬って捨てる。


「――よし、頂上についた!」


 靖治が山の山頂に立って嬉しそうな声を上げたのは、それから10分と経たないころだった。

 誰一人として脱落者はなし、戦ってくれたメンバーも全員無傷だ。

 草花も育たぬ荒廃した山の上に足をつけたマナは、杖の石突きを地面を突き刺しながら凛とした声を上げた。


「これより儀式を始める、邪魔されないように守り抜いて」

「ハイ!!」


 イリスが元気よく答えながら周囲を警戒する。モンスターたちは侵入者たる一行に敵意をぶつけてきながらも、攻めあぐねて円周状に囲ったまま唸り声を上げてきていた。

 とりあえず山頂まで来たが、グズグズしていれば我慢しきれなくなったモンスターたちが再び押し寄せてくるだろう。そうなる前に靖治がマナへと問いかけた。


「ここからどうするんだい?」

「”飛ばす”の。因果の流れを調律し、そこにあなたたちを乗せて」


うごごごごご、もうちょっと進めたかったがなんか肩が痛くてあんまり書けなかった。

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