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夜のお茶会1

俺とマウントシュバッテン王はリビングにある豪華な応接用のソファと机に対面で座る。


すでに微笑をたたえた完璧なメイドが薫り高い素晴らしい紅茶と、ほんのりと甘いクッキーのようなお茶菓子を持ってきているのでそれを少しいただいている。


「どうだい?僕は飲みすぎで疲れた時はいつもこの紅茶を飲んでるんだ。おいしいだろう?」

マウントシュバッテン王は微笑をたたえつつ言った。


「はい……とてもおいしいです」


正直言えば紅茶の良しあしなどよくわからないが、この紅茶は本当に疲れた体に染み渡るような感じがするいいお茶だった。


「しかし、王様も疲れてたんですか?」


「そりゃそうさ!もともと僕はあまりお酒が好きじゃないし、強くもない。あんな連日の晩餐会は本当は嫌なんだよ!」


「そうなんですか?まったくそんな素振りは見えませんでしたが?」

俺は少し驚いた。


「当り前じゃないか!催しをしてくれた人に失礼だろ?無理してでもちゃんとするさ!まったく」

すこし怒ったように腕を組んで語気を強める王様。


「すみません!決してそんなつもりで言ったわけではなく……もともとお酒が強いのかなぁと」

俺は慌てて訂正する。


王様は俺の慌てた姿を見て少しだけキョトンとした顔になった。

そして、少しだけ頬を緩めて笑い出した。


「はは。本当に君は何も考えてないなぁ。冗談だからそんなに慌てなくてもいいのに?これは僕からのアドバイスだけど……こういう会話のウェットに富んだ突っ込みを覚えたほうがいいよ?」


「はい……精進します」

俺は少し苦笑いを浮かべた。


王様はその顔を見て、少しだけあきれたように小さく溜息をついた。


「君は武骨だねぇ……まあ、勇者らしいといえば勇者らしいね。さて……」


 王様は言葉をやめて周囲にいるメイドに目配せすると、メイドはすぐに深々と頭を下げて退出した。


 そして、王様は笑みを深めて俺に続きの言葉を言った。


その笑顔は少しだけ怖く、細くなった目からは殺気じみた視線を感じる。

両手を繋いでおなかのあたりに置くと、左足を組んで小首をかしげた。


「さて……君は僕に何を言ってほしいんだい?」


 俺は少しだけ汗ばむ感じがした。

姿勢は正していたつもりだったが、緊張からかさらに正そうと強張る。


そして、緊張をほぐそうと少しだけ息を吐いて、本音を語った。


「王様の本音を言っていただきたい。魔族の長として協力するために」


王様はその言葉を聞いて少しだけ驚いた顔をした。


「イスポワール国王としてでもなく、元勇者としてでもなく、魔族の長として聞くのかい?」


「はい」


「ふ~ん、それはなぜだい?君は元勇者で人間なんだろう?なぜ魔族に肩入れする?」


「俺は……ルシフルエントの夫ということで魔族の長になりましたが、最初は反発されました。でも、この半年で色々とあって、認められて、今では自信をもってそうであると言えるまでになりました。……こんな物までできるぐらい俺はもう魔族よりなんです」

俺は角を不可視化する護符を解いた。

すると、白いこぶし大の角が浮かび上がってきた。


「ほ~!角か?すごいねぇ!はは!面白い」

王様はかなり驚いた。


「今、魔界にいる魔族はすべて俺の言うことを聞いてくれます。俺の命令で戦争に協力してくれといえば、死地に喜んで赴いてくれるでしょう。しかし、魔族は強大な力はありますが、人間との争いを好まない。……魔族は長命なので分かっているのです。争いは憎しみの連鎖しか生まないことを」


「だから?」


「魔族の長として……戦争は反対です。頭脳明晰なマウントシュバッテン王だったらうまく争いを行わない方法をご存知でしょう?どうか……ご再考を」

俺は頭を机に擦るぐらい下げた。


一瞬の静寂だったが、俺にはかなりの時間のように感じた。


「……頭を上げなよ?君の気持は非常によくわかった。そして、その愚直な感じは嫌いじゃない」


俺はゆっくりと頭を上げた。


 王様は腕を組みながら、左手を頬に当てて「むー」と言いながら考えていた。


俺は緊張して生唾を飲み込む。


「本当に君は王様になる気はあるのかい?そんな言い方だと手玉に取られるよ?」

姿勢を崩さすに笑いながら言った。


「すいません……王様を参考に頑張ってはいるのですが、学がなく慣れなくて」

俺は苦笑いを浮かべる。


「なんというか騎士と話してるようだ。……そうか、いちおう騎士爵はあるのか。納得」

王様は左手をポンと打って納得したように言った。


「前王様から依頼を受けるにあたっての限定的な爵位ですけど……元は一兵卒です」


「そうなの?じゃあ、国王なんて大出世じゃん!?君のことが書かれた『光の勇者カール伝説』は読んだけど、現在進行形で物語は進んでいるんだね?」


俺はそんな本など知らない。もちろん書いてもないし、見たこともなかった。


「……よくわかりません」

俺は苦笑いを浮かべるしかできなかった。


「一兵卒から勇者になり、魔王になって王様になるか……とんでもない人生だね。まさに波乱万丈と言っていい」

王様はにこにこしながら言った。


「……自分でもそう思います」


「まあ、だったら大丈夫かな?」

王様は少しだけ緊張をほぐして笑顔のまま呟くように言った。


「?」


「……どこまで知ってる?」

王様はティーカップを持ち、一口飲んだ後、持ったままそういった。


「どこまでとは?」


「僕とマッケイヤーとの関係とか、帝国の事とかだよ」


「正直言えば邪推の域は出ていません。マッケイヤー一族については、ホルス様から概要だけ教えていただいただけですし、帝国については亡命計画ぐらいしか……でも、マッケイヤー一族が帝国を無くそうとしているのではないかとは考えています」


 王様は少しだけ冷めた紅茶を一気に飲み干す。

そして、メイドが置いて行ったティーポッドに向かい紅茶を注ぐ。


「ふむ……誰が考えた?まさか君ではあるまい?」

王様は紅茶を注ぎながら喋る。


「お恥ずかしながら……そう教えてくれたのは、わが妻のルシフルエントです」


俺が喋る間に王様はソファに戻って静かに座った。

手には湯気の立つ紅茶をもって。


 王様は一口だけ飲んで紅茶を机に置いた。

そして、微笑を浮かべた。


「流石……良い奥さんを持ったね?」


「…はい」

俺は少しだけ恥ずかしかったので顔が火照ってきたがはっきり言った。


「ほかの誰かに話したかい?」


「いいえ。私たち夫婦の邪推ですので、二人以外には話していません」


「そう……賢明だよ。そんなことが共通認識で動かれたら僕の計画も水の泡だ」


「計画?」


「そうさ……これは本当に極秘にしてもらいたい。まだ、フスハーンしか知らないことだからね?まあ、ルシフルエントには言ってもいいよ。もしかしたら彼女だったら見当がついてるんじゃないのかな?」

王様は呟くように言った。


「名前に誓っても口外いたしません」

俺は胸に手を当てて恭しく言った。


「……その前に、もう一杯飲まないかい?もう空っぽだよ?」


「じゃあ……あのポットですか?」

俺は立ち上がる。


「ああ、いいよ。僕が入れよう」

王様は素早く立ち上がり、俺のカップを持った。


「いや!そんな手ずからなんて恐れ多い!」

俺は慌てて、王様を追いかけた。


「いいからいいから!……君は客人だよ?座ってて」


「……はあ」

俺はしぶしぶ座った。


しばらくすると、湯気の立つ熱々の紅茶が俺の前に出された。


「ありがとうございます」

俺は深々と頭を下げる。


「いいって、いいって。……じゃあ続きを話そうか?」

王様は紅茶を一口飲んで、にっこり笑って言った。

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