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会議

「じゃあ、始めるよ~。コーネリア。進行よろしく」

マウントシュバッテン王は手をヒラヒラさせた。


「は!仰せの通りに……皆さま初めまして。筆頭執事のコーネリアと申します。以後お見知りおきを。まず始めに陳情があった特殊綱や貴金属の取引についてです」

先ほどの青い髪の長身執事がハッキリとした声で話し始めた。


「あの~……組合長達がいませんが、お話を始めてよろしいのですかぁ?」

アルシュタインが恐る恐る手を挙げて発言する。


「アルシュタイン様のおっしゃる事はごもっともでございますが、その前に審議したい事がありますのでいましばらくお話を聞いて頂けますか?」

恭しく頭を下げて言うコーネリア。


「はい~。すいません」


「では……取引を行う前に、魔界の処遇について提案をさせて頂きたいのです。カール様やルシフルエント様をお呼びしたのはその為でもあります」


「処遇とはどういうことじゃ?約束通り、魔族を抑え、取引で得た金で税金を納めようと必死に制度を整えておる。なにか不満かえ?」

ルシフルエントは頬を付き、いかにも不機嫌そうに語る。


その目線からはかなりの殺気が混じっていた。

並みの人間なら慌てるであろうその視線も、コーネリアは微動だにせず受け止める。


俺はこの一連の動きで確信する。

コーネリアはかなりの手練れであると。


「いえ……そう言うわけでは…」

コーネリアがそこまで言うと、マウントシュバッテン王は片手をあげて、言葉を止めさせる。


「ルシフルエントさん、勘違いしないで欲しい。まあ、処遇とか堅苦しい言い方をいって誤解させたのは謝るよ」

不敵な笑いを浮かべ語る。


「ふむ……そこまで言うなら聞いてやってもいいぞ?」


「僕はねぇ、魔界を国にしてあげようと思ってるんだ」


「えーー!」

俺とココとアルシュタインが同時に驚く。


「はは!そんなに驚いてくれて僕は嬉しいよ。まあ、元々いち領地としては大きすぎるしね、その方が魔族の独立も保てるし一石二鳥だろ?」


「ほう……これは妾達に利が大きすぎる提案でもあるのう。何か条件があるのだろう?」


「もちろん……君たちには王国と軍事同盟を結び、少し不平等な各種条約を結んでもらう。簡単に言えば保護国扱いだね。まあ、当初はそう言う提案だったからいいでしょ?」


「不平等とは?」


「魔界の王より僕の方の立場が上っていう事が一番大きいかな?後は保護管理費として王国にお金を払う事。まあ……額は当分いまと変わらない額で据え置いてあげる」


「ふむ……金以外のデメリットが何とも抽象的じゃのう」

ルシフルエントは顎に手を当て考える。


「その代わりメリットは沢山あるよ。国として堂々と交易が出来るし、統治するのにも僕に伺いを立てなくても自由にできる。僕以外には王として他国と交渉も出来る。良い事ずくめだよ」


「ふむ……どうじゃおまえ様。どうする?」


「え!?どうするったって……なんだかスケールが大きすぎて……俺が王様になるってこと?」


「簡単に言えばそうだね」


「ねえ、アル……なんだか話がうますぎて逆になんだか怪しいんですけど?」

ココは小声でアルに聞いた。


「そう……ですね」

アルは少し俯きながら眉間に皺を寄せて考えている。


「まあまあ、さっきも言ったとおり、魔界は大きすぎるっていうのが理由の大部分だよ。なんせ、王国の全領土の3倍以上あるんだから……そんな広い場所をいち領地として統治するなんて、この国の法律が想定してない事態なんだよ。それに……」


「それに?」


「魔族を同じ国民にすると周辺国が五月蠅くてね。僕はどうでもいいと思ってるんだけど、特にリヒテフント帝国なんかが攻め込む理由になりかねない。この間も何かあったんだろ?たしか、ゴール洞窟だったかな?冒険者じゃない方の事だよ」


「うっ……」

俺たちは言葉に詰まる。


「実は、帝国と隣接する領主の報告でも、馬鹿みたいに長城を作ってるって話も聞いている。ああやって守りを固めて攻め込んでくるのがやつらのやり方だからさ」


「そんな事になってたんだ」


「まだ、領地にしたって公布はしてないのにどこからか嗅ぎ付けて準備しちゃってさ……まったく、非生産的ったらありゃしないよ」

マウントシュバッテン王は呆れた様子で語る。


「なるほどぉ……国にしてしまえば王国に攻め込む理由は無くなりますね」

アルシュタインは顎に手を当てながら語る。


「その代わりそっちに攻め込むかもね……まあ、魔族って強いからある程度は大丈夫でしょ?……それに、軍事同盟を結べばそれなりに抑止効果もあるし。王国の脅威を負担してくれって言うのが最大の理由かな?」


「なるほど」

俺は思わず納得してしまった。


「まあ、すぐに決めなくていいよ。でも、半年以内に決めてね。さすがに取引が始まると隠そうにも隠せなくなるからね……物理的に」


「では……取引の話はぁ」


「今のところは非公式でやってあげる。貴金属や宝石は組合に買い取らせる。防具も産地を偽って売ってあげるからさ……多少手数料をもらうけど誤差みたいなものだよ」


「良かったですぅ」

アルシュタインは胸をなで下ろす。


「一応、大体は説明したけどとりあえずはそんな感じで動いてもらって良いかな?カール君?」

マウントシュバッテン王はニコニコしながら俺に問いかける。


「わかりました」

俺はハッキリとそう言った。


「じゃあ、よろしく。なんだか僕が全部はなしちゃってお株をうばってごめんね、コーネリア」


「いえ……私のつたない説明より、よほど簡潔で非常に素晴らしかったです。今後参考にさせて頂きます」

恭しく頭を下げるコーネリア。


「うむ。……じゃあ、みなさん。僕は仕事が残ってるから、後はこのコーネリアに任せるからよろしく」


そう言うと、マウントシュバッテン王は颯爽と立ち上がり、部屋を出て行った。



「では、みなさま。ここからは私が進めます……おい!組合長達を呼んでこい!」

コーネリアは近くの兵士に命令した。


俺たちはその後、貴金属や宝石、武器防具の組合長と話し合い、昼食後、サンプルの品評会を兼ねて見せる事になった。


「これは……すごい」

組合長達は口々にサンプル品の数々を見て思わず呟く。


特に武器防具の組合長はアルシュタインに興奮した様子で語る。


「いくらでしょうか?このフルプレートは、どれほどお支払いすれば売って貰えるのでしょうか!?」


「ふぇ~!そう言われてもぉ~……フルプレートの卸相場は100金貨でしたから同程度で……」


「いいのですか!!……いや、ここは今後のお付き合いを考えて150でどうでしょうか?」


「いいんですかぁ~?」


「もちろんです!!ありがとうございます!!」

後の事だが……このフルプレートは600金貨で売られ、その日に売れたそうだ。


サンプル品は非常に好評で、次々とこの場で引き取りたいと希望がでた。

貴金属も概ね高値がつき、全てのサンプル品で600金貨にもなった。


組合長達は本日中に宿屋にお金を届けると言い残し、ホクホク顔で帰って行った。



『……これで挨拶が出来るなぁ』

俺は胸をなで下ろした。


「まあ、当然の結果じゃな」

ルシフルエントが胸を張る。


「良かった~。これで計画通りアルの家に挨拶できるね」

ココが喜ぶ。


「はい~。嬉しいですぅ」

アルシュタインも満面の笑みで答える。


「ああ……本当に良かった。みんなありがとう」


「大変なのはこれからじゃぞ?おまえ様は領主から国王になる事になったのじゃからな」


「そうよ!第2なのがちょっと癪だけど、王妃か~……信じられない」


「ホントにビックリですぅ!」


「え……決定なの?独立するの?」


「それはそうじゃろう?普通はありえん。まあ、やつのことじゃ、なにか裏があるんじゃろうが……チャンスでもある。素直に受け取っておこう」


「そうか……なんだか、スケールが大きすぎて漠然としてるけど、もっと頑張らないといけないって事か」


「そうじゃ……では、一旦、宿に戻り決めるかのう?」


「なにを?」


「国名に決まっとるじゃろう?」


「じゃあじゃあ、シンプルに魔族の国ってのはどう?」


「それは……ちょっと」

アルシュタインは苦笑いを浮かべる。


「本当にこの馬鹿夫人は馬鹿じゃのう……漬ける薬もないのう」


「なによ!!じゃあルフェちゃんはどんな名前がいいのよ?」


「そうじゃのう~……」



俺たちはそんな事を話ながら宿に帰った。



宿に戻ると、組合長から金貨が届いていた。


「おぉ~……こんな量の金貨初めて見た」

俺は机に20枚単位で並べられてる金貨を見て、感動した。

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