王都召喚
次の日の朝早く。
急いで支度を済ませ、アルシュタイン達が乗ってきた大型輸送用馬車に乗る。
「馬車はイヤじゃの~。遅いし、揺れるし」
ルシフルエントは乗った早々文句を言う。
「我慢して下さい。ルフェちゃん!」
「ところで、護衛なんて必要なの?」
今回は俺達4人と人間に近いウィザードを2人連れている。
「妾達のような戦闘力のないアルが一人で行動するときどうする?それ相応の立場の妾達が常に一緒に行動するわけには行くまい。もうアッカイマンのような事は二度と嫌じゃ」
「そうだね」
俺は今も青の宮の地下で眠るアッカイマンの事を思い、少し気分が重くなった。
馬車は一路、王都に向けて出発した。
食事休憩も挟み、半日かけて王都の宿屋に到着する。
「では……私は一度実家に帰りますぅ。ウィザードさん一人お借りしますね」
「気を付けるんじゃぞ?ウィザードにはいざとなれば身代わりになれと言うておる……気にせず戻るのじゃ」
「お言葉に甘えますぅ。では」
ウィザードをお供につれてアルシュタインは出かけた。
「さてっと……角は見えないよね?」
俺はルシフルエントに聞いてみる。
俺とルフェちゃんは頭に生えた角を魔法で隠す事にした。
まだまだ魔族に偏見が多い王都で余計な面倒事を増やさないためにだ。
「大丈夫じゃ……妾のはどうじゃ?」
「うん。大丈夫……はぁ~。気を遣うね」
「しょうがないじゃない。角なんて生えてる人間はいないのよ?」
「わかっておる……では、宿に入るぞ?荷物を整理して明日に備えるのじゃ」
俺たちは宿屋に入った。
色々準備も終わり、少しだけ王都を観光する事にする。
荷物番をウィザードに任せて、俺たちは王都の商店が立ち並ぶ三番街に来た。
王都は広大な平地の上に円形に広がる城壁都市で、時計回りに地区ごとに番号が振られている。
真上から見て、だいたい12区画の等分に割り、真北にある地区を0番街として区画に番地を振っている。
中心にあるのは巨大なツタン城だ。
ちなみに、0から3番街は商人中心の番地で、特に3番街は大小様々な商店が立ち並ぶ、小売り激戦区だ。
それは、4番街が王宮に用がある比較的位の高い宿屋が密集してあるし、貴族の邸宅も大体ある。
いわゆる富裕層地域だからだ。
大体10番街まで住宅密集地が広がっている。
残りは、武器や防具などの商店などの軍事に関連する番地だ。
しかし、近年ではそれでも人口の増大が続き、城壁外に住む人も多い。
だいたいこの12番地までが『中心街』と呼ばれ、それ以降の番地は城壁外である『郊外』と呼ばれる番地だ。
俺たちは、4番街の宿屋にいるため、すぐに3番街の活気溢れる通りにでる事ができた。
「はあ~……なんだこりゃ?」
俺たちの目に飛び込んできたのは、城と見まごうばかりの巨大な高層建築だった。
『百貨店』と書いてあった。
出来たばかりのようで外壁も新品だった。
俺たちは中に入る。
中は人混みで溢れていた。
しかし、そこまで暑くない。
「魔法か何かで涼しい空気がでとるのう……なかなか、快適じゃな」
「へぇ~……しかも、中が階層で分かれてて、いろんなお店が入ってるんだ」
「ねえ!!見てみて!ここは女性物の服がいっぱいあるわ!ちょっと見ましょうよ!!」
ココが目を輝かせて言った。
ココとルシフルエントは色々と楽しそうにお店を回っていた。
『ホントに仲が良いよな~』
俺は二人の後ろを付いていきながら思った。
女性陣二人に散々付き合わされた俺は結構疲れてきた。
ふと、貴金属の指輪を多く取り扱うお店が目に止まる。
『そう言えば、ココとアルシュタインには何も送ってなかったよなぁ……』
そう思って、思わず指輪を見ていた。
そして買う事に決めた。
ついでに、花が売ってある店にも寄って注文することにする。
これで、王都を出るときには宿に届いているだろう。
満足はいく買い物だったが……かなり、財布が軽くなった。
外に出ると、すでに日は暮れかけていた。
「結構長く見てたね……照明も明るくて、日が沈んだの気がつかなかったよ」
「本当じゃのう。この百貨店の中は煌々と光が灯っとるおかげで時間感覚が狂うのう」
「ホントね……何にも買ってないけど見てるだけで楽しかったわ!!」
俺達は満足して宿に戻る。
休んでいると、アルシュタインが戻って来た。
「ただいま戻りました~。カール様ぁ。着てみてくださ~い」
俺はアルシュタインから礼服を借りる。
久しぶりの堅苦しい服だったので着るのに手間取ったが何とか大丈夫そうだ。
『お腹回りもそんなに出てなくて、何とか大丈夫そうだ……さすが騎士だね』
俺はそんな事を思いながら、調整をする。
「どう?ルフェちゃん。変じゃないかなぁ?」
ルシフルエントに確認をお願いする。
「少し大きいようじゃが……まあ、許容範囲じゃろう」
「いいんじゃない?私は鎧姿の方が好きだけど」
「良かったぁ~。サイズがどうかと心配したんですが、これなら大丈夫そうですね!」
3夫人からおおむね大丈夫の評価を頂いたので安心して着替えた。
その後、食事をとり、早めに就寝することにした。
翌日、朝早く起きて、準備をしていると、王様からの迎えの馬車が来た。
急いで準備を終わらせて、全員で迎えの馬車に乗りツタン城に向かった。
ツタン城に着いて、サンプル品の護衛をウィザードに任せて、俺達は謁見準備の間に通された。
しばらくすると、案内役が来て謁見に移る。
しかし、今回は玉座の間ではなく豪華な会議室に通された。
「玉座の間じゃないんだ」
「今回は組合の人とも会わないといけませんから……」
「それもそうか。俺なんか玉座の間でしか会ったことないからなぁ……」
「玉座の間は、儀礼的な意味合いも多分に含まれていますから……カール様だと、そうなりますよね」
そんな話をしていると、肩まで伸びる綺麗な青い髪を後ろで結んだ、長身でいかにも執事!と言うような若い男が入って来た。
その瞬間、俺達全員が立ち上がり胸に手を当て儀礼的な挨拶を行う。
俺は視線を感じ、少しだけ目を動かし探す。
どうやら、俺を見ているのは入って来た執事のようだった。
おのずと視線が合う。
『なんだか……殺気交じりの様な不思議な視線だ。若そうなのにかなりの修羅場をくぐってる感じがする』
少し緊張した。
その少し後に、マウントシュバッテン王が登場した。
王様は挨拶もなしに椅子に座る。
「やあやあカール君、ルシフルエントさん。元気にしてた?そんな堅っ苦しい姿勢なんてどうでもいいから、みんな座りなよ?」
不敵に笑いながら、大げさに両手を広げて語るマウントシュバッテン王。
その姿は、年齢に似合わない余裕があり、自信たっぷりだった。
その合図で皆が座った。
「ではでは、会議を始めるねー。遠慮はいらないよ?ドンドン質問してね」
王様らしからぬ非常に軽い口調で、俺たちにとっては重要な会議は始まった。




