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会議

ギルムアハラントに戻ると、俺たち3人はアルシュタインに監禁された。


『文筆管理室』……最近になってギルムアハラントの空き部屋を使ってできた部屋だ。


ここでは、法案や公示文章、その他諸々の統治に欠かせない重要文章を含む、この地で使う全ての公文書を作成する部屋である。


専門の文筆官が昼夜を問わず文章を作成し、チェックして他の部署に回す。


そんなところに監禁されている。


なぜ、こんな所に監禁されているかというと、ただ単純に仕事が溜まっているのだ。


全体の5割の文章は代用としてアルシュタインとキルが代筆している。

そして残りの3割は印で代用する。

しかし、残りの2割はどうしても俺の署名が必要なのだ。


メラダーの時は4日で済んだので、うずたかく積まれた6つの紙の束の壁ぐらいで済んだ。


しかし、今回は20日だ。


俺たちが帰ってきたときは別室にまで紙の束が溢れていた。



「カーール様。ルシフルエント様、ココ様……ちょっと、来て頂けますか?」

顔は笑っていたが、目はマジだった。


と言うわけで、現在は3人で署名中だ。

かなりの時間ぶっ続けで署名しているので腕が悲鳴を上げている。


『剣の素振りなら何時間でもできるのになぁ』

俺はそんな事を考えながら署名していた。


「あ~~~~!!なんで、私がカールの署名を代筆しなきゃいけないのよ!!」

ココが頭を掻きむしりながら叫ぶ。


「耳障りじゃ!馬鹿夫人!!領主の代筆ができるのは妾達以外おるまい?さっさと手を動かせ!!」


「皆様!あと、この束2つ分でお食事休憩ですよぉ~~」

アルシュタインがホクホク顔で言う。


「は~い」

死んだような声で俺たちは返事をした。





食事を挟んで、また作業に戻る。

全ての書類に署名を済ました頃には真夜中になっていた。


「ああ……もうダメだ」

俺は精神的疲労で居室のベッドに飛び込んだ。


ガチャ!

なぜかドアが開く。


そして、誰か二人、同じように俺のベッドに飛び込んできた。


俺は、残る気力を振り絞って確認する。


予想通り、ルシフルエントとココだった。


「……」

二人とも疲労困憊で何も喋らない。


『まあ、いいか』

俺はそのまま突っ伏して寝る事にした。

二人ともピクリとも動かない。


3人揃って川の字で寝た。



翌日。

俺たち3人は揃って食事に向かう。


だだっ広い席に座ると、さわやかな美少女メイド二人が朝の挨拶をしてくれる。


「おはようございます。マスター……と、嫁2人」

「おはようございます!カール様、ルシフルエント様、ココ!」


「いちいち突っ込むのもアレなんだけど……その、二人って言うのは私とルフェちゃんの事?」

ココが肩肘をついてゼロに言う。


「ゼロさん!ルシフルエント様にココでしょ!」

ナナちゃんは慌てて指導する。


「ルフェちゃん?ココ?」

無表情のまま小首を傾げるゼロ。


『ナナちゃん……大変だな』

俺はナナちゃんに同情した。


「おい、ナナよ。ルシフルエントは長かろう?ルフェでよい。できればルフェちゃんと呼べ」

ルシフルエントは静かに言った。


「はい!かしこまりました」

ナナちゃんはハキハキと答え、深々と頭を下げる。


「ナナは本当に賢い。褒めてつかわす。……それに比べ、ココと来たら…」

ジト目でココを睨む。


「何よ?文句あるの?」

ココもジト目で応戦する。


「まあまあ……はは…はぁ~」

俺は朝から溜息をついた。



食事を済ませたあと、アルシュタインに呼ばれ俺たちは即席の会議室に行った。


ここも、空き部屋を使い、最近できた所だが、まだ内装は完璧ではなく、ただの長机に椅子が並べられているだけの部屋だった。


「すみません~。予算が付けば改装しますので……」

アルシュタインは苦笑いでそう言った。


そして、ギルムアハラントにいる主要メンバーが集まり会議が始まる。


資料が配られて、アルシュタインや文筆官が喋る。


議題1は先日行われた人口統計の結果だった。


俺は驚いた。


「魔族総数……約10万だって。それだけ?」


「そんなもんじゃおまえ様。元々魔族は少数精鋭。一番多いのが、ミレが率いとる炎の獣部族かのう?」


「はい~。単一部族では最大で約1万2千ですぅ」


「しかし、よく調べたのう……どうやって調べた?」


「各部族長さんにお願いして、現時点での統計を取ってもらいました~。詳細な記録用紙の作成には、魔族さんにお願いして聞き取り調査を行って、ひな形を作り、できるだけ部族に即した正確なモノを作りましたぁ」


「ふむ……これは使える」

ルシフルエントは顎に手を当ててウンウンと唸りながら呟いた。


「しかし、クップメントのアンデット死霊系部族の総数が150体ていうのが驚きだね」


「まあ、ほとんどが魔力で召還した眷属じゃからのう。知性を持って独立して存在する奴など少ないのじゃ。ほれ、下をよく見てみい?」


「ホントだ!眷属及び配下魔法体が約3万体だって」


「眷属は魔力があれば自由に増やせると聞いたのでぇ~、増えても統計に影響がない形で作成しましたぁ」


「そうじゃのう……確かに一緒にしてはいかんのう」

ルシフルエントはまたもやウンウンと唸った。


「しかし……王国とはずいぶん違う数値で驚くよ」


「そうですねぇ~、確かに王国の全人口は3000万人を超えますからねぇ」


「そんなに居るの!?」

ココは驚く。


「人口比で税が決まるのでぇ、無登録の子供が多いんですぅ!だから、実際はもっと多くてぇ4000万人ぐらいって言われてますぅ」


「そんなに!?」


「あくまで私達、執政官仲間での噂ですけど……」


「食糧事情が良い王国だから起こる現象じゃのう……他の国は逆じゃろう?」


「そうですぅ……かわいそうですが」


「なんで?」


「人口は労働力じゃ。王国は大穀倉地帯を有しておる。一人でも多く居れば収穫は多くできる。しかし、人口が多くなれば税も増える。だから、闇の人が欲しいのじゃ」


「本当に、ルフェちゃんは、何でも知ってるんですねぇ!」


「何でもは知らん。ただ、書物と情報を集めた結果じゃ。上に立つ者の勤めを果たしておるのみじゃ」



次の議題に移る。

議題2は、ゲーニッヒ山脈の鉱物資源についての事だった。


「ゲーニッヒ山脈には、希少金属や特殊鋼が多く埋蔵されていて安定的に採掘可能との報告でしたぁ。なので、ドワーフさん達にお願いして試作坑道を作ってもらって現在本格採掘に向けて準備をしていますぅ」


「採掘したら輸出するの?」


「いえ……王都を調べたらちょっと面白い事がわかってぇ……次の資料を見てください」


俺たちは次の紙をめくる。


そこには色々なグラフなどが書いてあった。


「これは、最近の特殊綱や貴金属の相場なんですけどぉ、貴金属は上がっているんですけど、特殊綱は下がり気味なんですぅ」


「ホントだ。やっぱり需要が減ってるから?」


「そうなんですぅ。供給量はあまり変わってないんですけどぉ、需要が減って下がり気味なんですぅ。そこで、次のグラフを見てください」


「これは……武具等の価格推移?」


「はい。特殊綱で作られた武具等の価格推移ですぅ。結構一定じゃありません?」


「ホントじゃなぁ。しかも結構高値じゃ」


「特殊綱は加工が難しくて工房の数が少ないんですぅだから、寡占状態なので高値でも売れるんですぅ」


「なるほど……ドワーフ達に作らせるのじゃな?」


「そうですぅ。それに調べてみるとぉ、工作や造形レベルはこちらの方が上だとわかったのでより安定的に収益を上げるため、加工して売った方が効率的ですぅ」


「うむ……良い案じゃ」


「はい!あ……でも、武器は売らないつもりですぅ」


「なぜじゃ?」


「武器はぁ、単価が安いのと、危ないからですぅ。私達の作った物で人が傷つくのは嫌ですぅ!」


「ふむ……良い心がけじゃ。良いであろう?おまえ様」


「ああ。よろしく頼む」

俺は大きく頷いた。



その他、細々とした事を決めて、会議は終わった。


俺たちは二日続けて精神的疲労を伴う仕事をしたので、午後は少し休む事にした。


食事をとり、考える俺たち。


「おまえ様。疲れをとるには温泉が一番じゃ!」


「なるほど……確かに、アレは良かった」


「ふ~ん。いいんじゃない?」


「ついでに、アルシュタインも連れていこうぞ!」


「え!あそこ混浴だよ!」


「え!」

ココが驚く。


「知らん。妾達をこんな仕事に二日も拘束した罰じゃ。無理矢理連れてく!!」

ココを無視してルシフルエントは言う。


「ちょっと!混浴なんて聞いてないんですけど!!」


「良いではないか?それとも留守番かえ?それでも良いぞ?」


「……行く」

ココは膨れながら答えた。


「アルシュタインは拒否権無しなのね……俺は、見えないところにいるから、みんなでゆっくりしてよ」

俺は苦笑いで濁した。


「ふふふ……そんな事できるかのう?おまえ様」

ルシフルエントは不敵な笑いをした。


こうして、ゲーニッヒ山脈の温泉にみんなで行く事が決まった。

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