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機械人形

「……様!……おまえ様!!」

ぽたぽたと顔につく水で意識が我に返る。


目を開けると、ルシフルエントの顔が目に飛び込んできた。

水の正体は涙だった。


『柔らかい……膝枕も良いもんだ』

俺は後頭部の柔らかさと正面のルシフルエントの姿で現状を把握した。


「ありがとう……もう大丈夫だ」

俺は起き上がろうとする。


「ダメじゃ!!もう少し休んでおれ!!本当に……本当に心配したんじゃから!!」

大粒の涙が顔にかかる。

そして、強制的に膝枕の体制に戻された。


全身の感覚が鈍い。

たぶん、相当の大怪我だったのだろう。

魔法で傷は回復できても、多少のラグがある。


この鈍さはそんな物だ。

久しぶりに味わった。



そして、鈍さのせいで忘れてた事を思い出す。



『メラダーはどうなった?』



「ルフェちゃん!!メラダーは!メラダー元帥は何処にいるんだ!!」

俺は無意識に叫んでいた。


「メラダーは……妾の腕の中で逝った」

ルシフルエントは淡々と語る。


「…!クッ!……ち……ちくしょう!やっぱりか!くそ!!」

俺は顔を覆う。


勝手に瞳から涙が溢れ出した。


「おまえ様。あまり泣くでない。メラダーは最後まで戦い、悔いは無いと言っておった。武人の最後を涙で送るのは忍びない」


「そうか……」

俺は、袖で涙を拭き、平静を装った。


そして、もう一つの重大な事を思い出す。


「ルフェちゃん。あの少女は?」


「知らん。瓦礫が山のようにあって、探しきれん」


「そうか……よっと!」

俺は立ち上がる。


少し痺れがあるが、なんとか動けそうだ。


あたりを見回すと、まだ炎が燻っていた。

しかし、金属の瓦礫があたりを覆っていて、少女の姿が見えない。


よく見ると、魔法の壺も地面に無造作に落ちていた。


俺は一つ持ち上げる。


「おまえ様!!」

ルシフルエントが心配そうに叫ぶ。


「大丈夫……動いてないようだ」


俺はまじまじと覗き込む。

そして、コンコンと叩いた。

甲高い音から、金属のようだった。


「金属……だよなぁ?でも……よくわかんないわ」


そして、瓦礫が折り重なって集まっている所に行く。


俺は瓦礫をのけ出す。


しばらく、瓦礫を動かすと、緑色の髪の毛が見えてきた。


俺は急いで瓦礫をのける。


そして、ついに出てきた。


「金属?」


出てきた少女の肌は、金属だった。


「おのれ!生きておったか!!」

ルシフルエントの怒号が聞こえる。


「まて!ルフェちゃん!!」

俺は叫ぶ。


ルシフルエントを見ると、魔剣を大上段に構え今にも切りそうな勢いだった。


「なぜじゃ!!なぜ止める!!」


「ちょっとは調べないと!!目的がわからないと今後の対処に支障をきたす!!」


「それもそうじゃの……少し感情的になった。許せ」

魔剣を降ろすルシフルエント。


「はぁ~」

俺は胸をなで下ろした。


そして、俺は少女を引き上げ、地面に降ろす。


『息はしていない。けど、死んでる感じでは無いよなぁ……どう見ても11~12才ぐらいに見えるけど、皮膚は金属。髪の毛も細い金属のようだし、服もフリフリだけどあの爆発で穴も空いてないからやっぱり金属か?眼鏡は……透明だけど、ガラスじゃない』


俺は、ひっくり返し、背中を見る。


そこにはむき出しの背中に大小様々な穴が空いていた。


『なんだこりゃ?』

俺には訳が分からなかった。


とりあえず、仰向けにする。


「なんだか人形みたいじゃのう?」

ルシフルエントは呟く。


「人形か……確かに木製だったら大魔導師ホルス様の木偶人形みたいだね」

俺はホルス様の所で見た7号を思い出した。


「機械人形……とでも、言うのか?このような奇天烈な物は初めて見るぞ」


「機械人形か……案外その表現はあっているかもね」

俺は抱き上げてみた。


パチチ!

頭のあたりからスパークが走る。


俺はビックリするが離さないようにする。


少女の目が開いた。


翡翠色の目がこちらを向いた。


「おまえ様!危ない!!」

ルシフルエントは叫んだ。


「待って!!」

俺は少女を見つめる。


「ますたー……?」

少女が単調だが年相応のあどけない声で呟いた。


「マスター?」

俺には理解不能だった。


「緊急対応……データ破損のため、一部初期化。現状の相手をマスターとする。再起動」


「??」

俺は訳が分からなかった。


少女は立ち上がる。

そして、かしずいた。


「マスター。ご命令を」


「はぁ?」


俺とルシフルエントは顔を見合わせた。


たっぷり日が傾くまで話した結果わかったことは、生まれ故郷の星が爆発し、遠い宇宙をさまよい続け、流れに流れ着いた先がこの星だったという事と、元の星ではアンドロイドと呼ばれていて、例えるならば、この世界の木偶人形でくにんぎょうとあまり変わらない存在だという事だった。


「マスターの命令は絶対」

彼女は無表情でそう言った。


名前は「汎用はんようアンドロイド・零式・タイプソルジャー」というらしい。


俺は難解な単語の羅列に非常に戸惑ったが、シンプルにゼロちゃんと命名することにした。


「了解しました、マスター。私はゼロ」

無表情で答える。


「じゃあ、ゼロちゃん。ドワーフのとこまで案内してくれる?」


「了解しました。マスター」


無表情に挨拶すると、ゼロは坑道に入った。

俺らも後ろをついていった。



かなり奥深くまで降りる。


そして、坑道の最深部まで来ると、多くのドワーフが倒れていた。


「これはどういうこどじゃ!!」

ルシフルエントはゼロの胸倉をつかみ、詰め寄る。


「私がこの星に来た衝撃で、岩盤が崩れた。生き埋めになった人たちは全員助けたが、運の悪いことに、このあたりのウラノリウマ259に原子構造が近い物質が出てきてしまった」


「ウラノリウマ259って?」


「私の燃料であり、人々にとっては近くに居るだけでも有毒な金属」


「そんな金属もあるんだ」


「この付近のウラノリウマ259は除去し、次々と倒れる人に治癒マシンを投入したが、内的要因により効果が薄い。仕方なくここで看病している」


「なぜ助けを呼ばん!?魔法を使えば治るであろう?」


「助けを呼ぶと攻撃された。この映像を見てほしい」


ゼロの目が光る。

光は坑道の壁に反射する。


「すげぇ……どうなってるんだ?」

俺は驚いた。



そこには、メラダーたち獣魔族が映っていた。

しかも動いている。


「こいつがドワーフを連れ去ったに違いない!!」

「敵を殲滅せよ!!」


獣魔族の叫び声まで流れてくる。


映像では、次々に攻撃が飛んでくる。


「ヒッ!」

俺は思わず腕で顔を隠した。


しかし、音は聞こえるし、爆発や煙なども映っているが、それだけだ。


「交渉不可。攻撃を受ける。ガード……成功。交渉継続」

無機質なゼロの声が聞こえた後、さらに続けてゼロが喋る。


「ドワーフと呼ばれる生き物は坑道奥で寝ています。助けてください。私は敵ではありません」

無機質だが少し緊迫感あるゼロの声が響いた。


「何か言ってるぞ!」

「命乞いだ!」

「ウソに決まってる!!」

ゼロの声は獣魔族には届かなかった。


「交渉不可……ダメージの恐れあり。継続不可。これより反撃モードに移る」


画面にはなにか探査している不思議な円や文字が浮かび上がる。


「熱攻撃感知……対熱式戦闘モード……ターゲット……50体。所属不明。距離…1000メルテ……フルホイール射出。遠隔攻撃準備」


……あとの光景は、数の違いだけで俺達と戦った時と同じだった。


俺はやるせない気分になる。


あの時、獣魔族がもっとちゃんと話を聞いておけば……とか、先に攻撃しなければ……とか、考えれば考えるほど無念さがこみ上げる。


『それを言い出したら、ルフェちゃんが「様子見で攻撃しよう」と言った時も反対すべきだったよなぁ。俺も悪いなぁ』

俺は溜息をついた。


彼女は窮状を訴えていたが、勘違いで攻撃された、だから反撃した。


それだけなのだ。


「おまえ様。こやつを許すつもりかえ?」

ルシフルエントは冷たく言い放つ。


「どうにもこうにも、一方的に悪いわけじゃない。そこは事実だと思う」

俺はハッキリ言った。


「……妾は反対だがの」


「メラダー元帥を殺したから?」


「そうじゃ。……悔いなく戦い、命を落とした。魔族の礼儀としてそれでしまいじゃが、感情はそうはいかん。ホホロンに対するメラダーと同じように……ミレは同様の感情を抱くのではないかのう?」


「たしかに、いくら説明してもしこりは残るね」


「正直な事を言えば、妾も少なからずそう思っとる。しかし、悔いなく散っていったメラダーの顔を思うと……その顔を汚したくない」


「マスター……私に自爆命令を。そうすればお手を汚さずに解決します」

ゼロは呟いた。


「……ゼロちゃん」


「それはならん。お前に償うという感情があるならば、魔族の為に働け。自害など何も生まん。メラダーもそう思うであろう」

ルシフルエントはハッキリと言った。


「とりあえず、ドワーフ達を助けよう。話はそれからだ」


「そうじゃな」


「……」


俺達はドワーフを治療した。


「ありがとうございます!ルシフルエント様!!」

ドワーフ達はルシフルエントの治癒魔法で回復する。


口々に感謝の言葉を言い、坑道をでた。



誰もいなくなった坑道で俺達は話し合う。


「……なあ、ルフェちゃん」


「なんじゃ、おまえ様」


「とりあえず、ゼロちゃんをギルムアハラントに隠さないか?」


「ふん……あまり隠し事は好きでなないが、致し方ないかのう」


「……」


「化け物は死んだことにする。俺が魔法の壺を持ってそう説明しよう」


「おい……ゼロよ」


「はい……マスターの奥様」


「おぬしは今から、妾たちの奴隷としてギルムアハラントに紹介する。そこで、働け。……これで良いか?おまえ様」


「ああ、取り敢えずそうするしかないか」


「はい……マスター」

ゼロは恭しくかしずいた。


「はぁ~なんとも、スッキリせん」

ルシフルエントはイライラしながら頭をかきむしる。


「ごめんね……ルフェちゃん」

俺は深々と謝る。


「良い。一蓮托生……それが夫婦じゃ。……では、ゼロよ。こっちに来い」

ルシフルエントはゼロを招く。


「はい」

ゼロは無表情でルシフルエントのそばに行った。


「おまえ様は魔法の壺を持って、坑道の入り口で待っておれ。あとで迎えに行く」


「わかった。よろしく頼む」


ルシフルエントは転移魔法を唱えゼロをギルムアハラントに連れて行った。

俺は坑道の入り口に急いだ。

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