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喧嘩2

俺はルシフルエントを探しに城中を歩き回っていた。


あまり大事にならないように、努めて平静を装い、魔族にもさりげなく聞いてみる。


「あの……ルフェちゃん知りません?キルさん」


「いえ……魔王様は今朝にお姿を見て以来お会いしていませんが?」


一番接点があるロードウィザードのキルに聞いてもこんな感じだ。


八方ふさがりだ。


『俺って……ルフェちゃんの事あんまり知らないんだな』

知っているつもりだった……しかしそれは、浅はかな思い込みだったのだ。



結構な時間を使ってしまった。

気付けばもう夕方である。


俺は少し座って考える。


『どこに居るんだ?もしかして外か?』

俺は自分の考えを否定する。


『きっとどこかで待っている……そう信じたい』

俺は気合を入れなおして立ち上がる。


そこで閃く。


『そういえば前に城を外から見たとき、高いところに展望デッキみたいなのがあったよな?』


そう思ったので、そこにつながっているであろう螺旋階段に向かう。

そして、かなり階段を上がる。


「や……やっと着いた」


息も絶え絶え目的の展望でデッキについた。



外に出ると、日の入りの時間だった。



「わっ!!」


「うわっ!誰だ!!」

誰かからいきなり声をかけられ驚き、振り向く。


「えへへ~。昼間の仕返しですぅ~!」

そこにはアルシュタインが笑顔で立っていた。


「なんだ……アルシュタインか。はぁ~」

俺は溜息を吐く。


「どうかされましたぁ?というかぁ、誰か探されてるんですかぁ?」


ギク!……意外と鋭い。


「いや……何でもないよ!はは…はぁ…」

俺は誤魔化すことにした。


「そうですか?昼間もうろうろされていましたし、てっきり誰かを探しているものかと思っていましたぁ」


「まあ、探してないこともないけどねぇ……」


言えない。

昼間の一件でこんなことになったとは……口が裂けても。


「もしかして……ルシフルエント様を探されてます?」


「な……なんで、そう思うの?」

俺は正直心臓がバクバク言っているが、努めて平静を装い聞き返した。


「お昼間に、なんだか怒ってらしたからぁ……その事かなってぇ」

アルシュタインは困ったような笑顔で話す。


「……バレてた?」


「はい……バレバレですぅ」

アルシュタインはハッキリと言った。


そして、デッキのギリギリまで行き、手すりに体を預ける。


「私……なんだかルシフルエント様から良いように思われていないと思うんですぅ」


何も言わず俺はアルシュタインの横に行き、手すりに体を預けた。


「ルシフルエント様にとったら、私たちは所詮、王様の手先の様に見えますから……不審がられるのも仕方がないと思いますぅ。……でもぉ」


「でも?」


「私はぁ!本当に頑張りたいんです!魔族と人間の懸け橋になりたいんですぅ!」

アルシュタインは叫ぶ。


「なぜじゃ?そなたは普通の人間じゃろう?なぜそう思った?」


後ろからルシフルエントの声が聞こえた。


俺とアルシュタインは振り向く。


ルシフルエントはデッキの上にある屋根に座っていた。


「ルフェちゃん!」

「ルシフルエント様ぁ!」


俺とアルシュタインの声がハモる。


「答えよ。なぜ懸け橋などになりたいと思うのじゃ?アルシュタイン。妾の本音を言えば、貴様の思っている通り、手先か間者としか思うとらん」

ルシフルエントは真顔で冷たく言い放つ。


「騎士だったお父様は、昔から、『皆の為に粉骨砕身、努力せよ』って事あるごとに言って、5人兄妹全員に厳しい教育をしていました。次女の私も例外でなく、朝起きてから、夜寝るまで、びっしりと勉強させられてました。……でもぉ、そんな、厳しいお父様でしたけど、その頑固なところが好きなところでもありました。……」


アルシュタインは俯きながら言う。


「そんなとき、お父様は騎士としていくさに出向き、亡くなりました。帰ってきたのは指輪の着いた左手のみ……私は色々悩みましたが、お父様の言葉を胸に頑張ることを決意して王国執政官の道を選びました」


アルシュタインはルシフルエントを真っ直ぐ見つめハッキリと言う。


「私は、時には王様にも悪いことは悪いと具申でき、皆が幸福になれる政策を行うことができる、この仕事に誇りを持っていますぅ。皆が手を取り合って平和に暮らせる世界を目指して……私のように悲しむ人が出ないように……相手が魔族だろうが、人間だろうが、私は粉骨砕身、努力するだけですぅ!」


一陣の風が吹いた。


「おぬしは……王様とカールの意見が食い違ったらどっちを取る?」


「どちらとも肩入れしません!みんなが怪我なく幸福になれる道を提案しますぅ!」


ルシフルエントは飛び、アルシュタインの背後に降り立つ。

そして、短剣を首に当てる。


「おい!」

俺は思わず叫ぶ。


しかし、ルシフルエントに無視される。


「その判断で、おぬしの命を落とすやもしれんぞ?」


アルシュタインの膝が震えている。

しかし、目に涙を浮かべながらも、ハッキリと言い放った。



「元よりその覚悟で来ました。お気に召さなければどうぞ、この首を切り落として下さい!」



「……」

俺は、魔剣に手をかける。


「………………はっ!負けじゃ、負けじゃ!妾の負けじゃ。アルシュタイン……長いな、アルと呼ぶ。お前は信用しよう」


ルシフルエントはそう言って、短剣を納めた。


アルシュタインが思わず膝から崩れ落ちた。


「じゃがの……妾はまだ、おぬし達全員を信用したわけではない。他の奴らが魔族に悪さをせぬよう、よろしく頼むぞ。アル」


「はい!粉骨砕身で努力しますぅ!」

アルシュタインは座ったまま可愛く敬礼をした。


「ルフェちゃん」

俺は安堵した。


そんな、俺にルシフルエントは近づいてくる。


そして、耳打ちする。


「妾はまだ、おまえ様を許してないからな……夜に喧嘩の続きをしようぞ。それまでは休戦じゃ」

ルシフルエントは不敵に笑う。


俺は背筋に悪寒が走った。


ルシフルエントはデッキの入り口付近に移動して、こちらを振り向く。


「さて、おまえ様はアルに肩を貸してやってくれ。二人とも……移動するぞ」


「何処にですかぁ?」


「下の小部屋に地図を置いてある。今後について情報を共有せねばならん。付いて参れ」


ルシフルエントは階段に向かった。


「大丈夫?」

俺はアルシュタインに手を貸す。


「はい……あっと!」


アルシュタインは立ち上がろうとしたが、力が入らず崩れる。


そして、俺に抱きついた形になった。


「あっとと!大丈夫?」


「はい……ちょっといいですか?」


「ああ……いいよ」


俺は、アルシュタインの胸の感触が体に押しつけられて少しドキドキしたが、火急の用事かと思って聞くことにした。


決して、胸の感触や、アルシュタインの良い匂いを嗅ぎたいわけではない。


「私……光の勇者、カール伝説はよく知ってますぅ。この魔界でも、カール様がいるからこそ安心して仕事ができるんですぅ。よろしくお願いしますね。」


そう言うと、アルシュタインは頬に軽くキスをした。


「!!」

俺は、すぐにアルシュタインを腕の伸ばせるギリギリまで引き離し、冷静になるよう努力する。


「ふふ……可愛い!」

アルシュタインはにこやかに笑った。


俺は苦笑いを浮かべる。


「何をしておる!!妾をいつまで待たせるつもりじゃ!!」

ルシフルエントの叫び声が聞こえた。


「は~い!いま行きますぅ~!!」

アルシュタインはそのまま、走っていった。



「……どうしてこうなるの?」

俺は混乱した頭を整理しながら二人のあとをついていった。

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