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5/4 午後

「んーついたー」

朱雀はついて一番、綺麗な空気を吸うとそう言ってあたりを見渡す。木々の生い茂るそこに一つの違和感が感じられた。


「あーえーと。なんだろうあの、大きい穴は……」

「うわ、あれ落ちたら怪我するよね?」

「お、トム、あれ何だと思う?」

「んー悪魔とか?は居ないんだよね?」

「近くの山にはい……ああああ。ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。」

「どうしたの?」 

「えーあーえーその。多分、その僕です…」

「え?」

「このことは秘密で…おねしゃす。」 


逃げるように、ルイスが呼んでいるので馬車を降りてすぐの場所、何というか広場のような場所へとやって来る。


「あーえーと。今朝近くで悪魔が出たらしいがどこぞの美少女が一瞬にして消し炭にしたらしいぞ。ってことでその辺にデッカい穴とか穴があると思うから気をつけろよ。」

ルイスがそう言うと朱雀は縮こまったかのように下を向く。


「ねぇ…本当に…どうしたの…?」

小さな声でトムが朱雀に問いかける。だが朱雀はうつむいたまま適当に返す。


「あーうん。思い違いだったかも。そもそも僕男だし。」

「アハハだよね〜」


ルイスがこちらを向く。

「おーい、おまえらー静かにしろー続き説明すんぞ。あーとりあえず、各自テントを張れー部屋割りは寮と同じなー。それとあとはあれだ、あれ、一時にはここに集合な。おし!取りあえず解散。」

 

朱雀たちはテントを受け取ると広場の北側にテントを張る準備を始めた。 


「あー取りあえず、地面ならすか?」

「トム!スザク!ジェフがまともなこと言ってやがるぞ。」

「っせーな。」

「「ハハハッ」」


ゲインが取りあえず近くにあった枝を拾う。それに従うように三人も枝や石を拾いはじめる。


「まぁ、こんなもんかな。」

「おう。それじゃ、ゲイン」

「「せーの」」


テントの仕組みは簡単だ万能アイテム魔石の力で一瞬で展開。スペースさえ用意すれば設置はたやすい。


緑色のテントを立てると四人は中に入るとシートを敷き荷物も運び入れる。ジェフは寝袋を敷いてスヤスヤとしかけている。


「おい、ジェフ、起きろよ。」

「え〜眠い。一時になったら起こして、ゲイン。」

「ハァまさかお前また夜更かしか?」

「だってスザクに勝てないしさ。珍しく本読んでたら案外はまっちゃって…」

「なら、決まりだな。」

「うん!」


トムとゲインの視線が朱雀に突き刺さる。


「どうしたんだ?二人とも?」

「わかってるくせに。」

「ああ、トムの言うとおりだ。」

「オーケー。五十分になったら終わりだからな?」

「「わーい!」」


それからお昼ご飯として配られたサンドイッチとともにト作り出したトランプでアラームをセットしたその時間まで四人で楽しく遊んでいた。


ーーーーー


「あ、時間だ。」

「ハァ、またスザクの勝ちかよ。」

「でもジェフもプラスじゃん!」

「そうだぞ!俺とトムなんてスザクとやってプラスなんてまずあり得ないぞ。」

「んじゃ、行こ!」


圧勝したため案の定ノリノリの朱雀。買ったと言っても本一冊分くらいだが。


四人は靴を履くと例の場所にまでゆっくりと歩いていく、途中で何人かとすれ違いながらルイスのもとにたどり着く。


「あれ、ルイスが十分前なのに来てる。」

「あーあれだ。良くないことが起きるあれだ。」

「夕食抜くぞ?ジェフ?」

「ルイス先生かっこいい!」

「パルメザン先生、な。」


総勢百名ほどの生徒がルイスを囲むように集まってくる。なんでもこの行事の主任だそうで四日間気が休まらないとかほざいていたとかいないとか。他のクラスの担任、七名が居ると言えどいつもより真面目に先生やっている。


「おし、そんじゃあ、今日の予定な、まず今からその辺の散策、帰ってきたら休憩を挟んで野外炊飯で夕食、夜は肝試しでもやるか?ハハッ最後のは冗談だ、飯の後は自由にしてくれ、ただし十時には寝ろよ。おし、そんじゃあ、各自担任のところ行け。解散。」


ルイスがそう言うと散り散りになっていく生徒たち、残るは二組の十六人だけだ。


「あー散策の時間な、三時間あんだけど、俺は知ってるぞ、二組の奴らは全員もれなくインドア派だと。俺も含めてな。だか、しかし一応行事だ。やるぞ。」


口々に不満の声が上がる。だかそれを無視してルイスはつつける。


「あーそんでな、行きたいところあるか?っても山ん中だから森か川くらいしかねーけどな。俺は個人的に濡れている生徒がみ……」


どこからがルイスに向かって石が飛んでいく。主に女生徒から。それを全部魔法を使い、そつなくかわすと続ける。


「ハァ、冗談だ、冗談。ってことで森散策してその後川行くぞ。ほら、着いてこい。」


生徒たちは仕方なくついていく。二列縦隊でルイスは一番後ろ、トムと一緒だ。


朱雀はトムに話しかける。

「ルイスってさ、馬鹿なのかな?」

「まあ、でもあの数魔法陣、一気に展開してたぞ?」

「一個で済むのにわざわざ細かいのをピンポイントだもんな、さすがサタンスレイヤー。」

「え?」

「あ、何でも無い。こっちの話。」

(あぶね。バレるところだった。いや、サタンスレイヤーのことは別に良いのか?後で聞いてみるか。それより今はこれを楽しもう。)


ーーーーー


森は退屈だった。季節が悪い。せめて秋なら紅葉が見られたのに。


「あーまだ二時間以上あんな。おし、俺はここで涼んでるから自由にやってこい。」


そう言うとルイスは木陰に寝転ぶ。女生徒や一部の男子生徒は喜々として河原へと歩いていったが例の四人はその場にとどまる。


「ねぇ、ルイス、もしかして金槌?」 

「あ?馬鹿かスザク、川だぞ?川。俺は眠いんだ。ほら、おまえらも行ってこい。」

そう言って麦わら帽子を顔に被せる。、


朱雀は不満げな顔とともに三人に耳打ちする。

「ああ」 

「それは」

「良いな」


ルイスが朱雀たちを一瞬見たがすぐにしせんをそらした。


「それでさ〜」

「あ〜うん」


四人は誤魔化すように会話をする。


そしてその時。


「は?ちょっ!」

バシャーン


その音とともにルイスは川へと突き落とされた。


「ってめぇ!許さねぇ!トムか!いや、スザク!お前が主犯だろ!」

「アハハ、どーだろーね?」


やり方はこうだ。ルイスの視界は麦わら帽子によってきわめて悪くなった、そのことを利用した。


トムが姿を消した瞬間に朱雀がトムの分身を作り出す。魔力は普通より使うが魔力の豊富な朱雀が一体作るくらいどうと言うことはない。


そして普通に四人がしゃべってるように見せかけてトムが姿を消して近づく。そして!押す。ただそれだけだ。


ーー


「てめーら!覚悟しろ!」

そう言うとルイスは魔法陣を展開して高速で接近。


「ジェフ!スザク!トム!逃げろーぉ!」

「おう!」

「勿論だ。」

「絶対つぶす!」


ーーーーー


「ハァハァハァ」

「ハァハァハァ…」

「お前が最後だなスザク!」

「逃げ切ってみせる!」


飛び交う突風と木製の盾、突風が吹けば盾を作り出して防ぎ、カマイタチがやってくれば二枚の盾で防ぐ。


「そろそろやるか。」 

「何言ってんの?ルイス。」

「俺は…もともと…」


そう言うとルイスの姿が目の前から消える。


「加速魔法使うもっぱら肉弾戦タイプなんだよ。」

背後から聞こえたその声とともに朱雀の魔力は尽きた。


倒れ込む朱雀。一般的に魔法使いは体力と魔力を有しており、魔力が切れると体力が切れたように疲労感が襲う。また一気に魔力を使うと、急に激しい運動をし続けたときのようにぶっ倒れる、これを俗にオーバーヒートと呼ぶ。


因みに今の朱雀は前者だ。


「ちょっ、ルイス…本気…出しすぎ…」

「あ?俺はルシファーの力も使ってねーぞ?しかも本気はあの五倍ってとこだ。」

「バケモン…かよ…」

「現役時代は疾風のルイスとか呼ばれてたな。」

「アハハ…僕とものすごく相性悪いじゃん…」


通常、分身を使う魔法使い本人の戦闘力は大抵は騎士に負けるので一方的に近づかれると不利なのだ。


「ちょっと…体動かないから…木陰まで引っ張って…」

「あ?引っ張ってくださいだろ?」

「引っ張ってください…お願いします。」

「アハハ、素直な奴は好きだぞ?俺は。」

「僕にはそういう趣味はありません…」

「落とすぞ?」

「ウィッス」


ルイスに肩車してもらい木陰まで運んでもらうと、自然に閉じてくる瞼には逆らえず段々と意識を落としていく…。


ーーーーー


「ハッ!あれもう夜…?」 


朱雀は周りを見渡す、どうやらテントの中に運ばれたようだ、その上天窓から空を見上げるとそこにはすっかり暗くなった空と星が見受けられる。


左右を見ればルームメイトたち。どうやら自分たちのテントだ。腕時計を見ると既に夜の十一時半を回っていた。


「ああ、そういや、三人は降参したんだっけ…通りでスヤスヤと気持ちよさそうにしてるわけだ。つうか、八時間も経ったのが…」


テントから出るとあたりを見渡す。皆が寝静まってしまったため聞こえるのは、心地良い風が起こす木々を揺らす音くらいだ。


朱雀は手近にあった空間に即席で木製の椅子を作り出す。そしてそこに寝転ぶと故郷を思い出すように目を閉じる。 

「あの日見た星空もこんなのだったっけなぁ…元気にしてるかな…あいつ…」


修学旅行でたまたま二人で見た星空を思い出しながら目を開ける、そうすると今度はその片思いだった同級生を投影したルシファーが立っていた。


「なぁ、今感傷に浸ってたんだけど?」

「だからです!」

「ハァ…今日だけだぞ?」


そう言って体を起こして右半分に座り左側をポンポンと叩く。


「ほら、座れ。」

「わーい!先輩!大好き!」


(せめて同い年設定にしときゃあ良かったな…) 





異世界で見た星空は故郷とは違って色鮮やかだった。

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