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5/2 午前

「眠い…」

「ほら!シャキッとして!昼からは練習試合だよ?」

「ふぁ〜。うん。あーうん。」

「ったく俺たちは五人しかいないんだよ?」

「努力しま〜ふぁ〜す」

「ハァ、さぁ、行くよ?」

「うん。」


スザクとトムはまだ起きていない生徒もいる土曜日の午前七時、朝食を食べた後体育館へと向かう。所謂朝練だ。


体育館の前には既に一人の生徒と顧問がいた。

「あーくそねみぃ。」

「ちょっと!ルイス!顧問なんだからしっかりしなさいよ!」

「わーったよ。ほら。スザクとトムも来たぞ。」

「あら!早いわね!」

「おはようございますモーラ先輩。」

「おはようございます〜」

「スザク君大丈夫?起きてる?」

「半分寝てます。」


その時二つの足音がやってくる。


「あ!ありがとう!ジルド!エルちゃん!」

「おう。」

「どういたしまして!」


そう言うと体育館の鍵を開けるジルド、エレーナは鍵の場所の確認のためについて行ったようだ。


「よし!それじゃあ頑張りましょう!」

「ああ。」

「はい!」

「もちろんです。」

「ふわぁぁぁい〜」


そう言いながら中に入るとストレッチを始める一同。ケガの予防だけでなく魔力が流れやすくなるらしい。粗方それが終わると軽くアップ。そして本練習に取りかかる。


現時刻午前七時半


「さっ!やりましょ!エルちゃんおいで!」

「はーい。」


「俺たちはどうする?」

「ルイス〜僕と組んでよ。」

「あ?ダリぃめんどくさい。」

「んな事いわずにさ〜」

「後でフルーツ牛乳な。」

「っちぇ、教師のくせに生徒に集るなよ」


スザクはルイスと、トムはジルドと組むことになった。


「それじゃあ!いくわよ!」

モーラとエレーナのペアは一足先に始まる。


「ええ!」


エレーナが迎撃するために距離を置くとモーラの両手に展開された魔法陣から紅蓮の炎が上がる。


「よけれるものなら!よてみなさい!」

そう言って両手をエレーナに向かってボールを投げるかのように動かす。そこから放たれる火球は不規則な変化を伴ってエレーナへと近づく。


エレーナは半身になって彼女の三メートル前に魔法陣を展開する。風属性特有の薄い黄緑色だ。模様はシンプルで速効性の防御系魔法だ。


一つの火球がその魔法陣の上を通過しかけたとき突風が吹き荒れる、その風の勢いで片方の火球は消え失せる。


しかしもう一つ火球がエレーナの目前へと迫る。


「ハッ!」


右の拳に展開した純粋な風俗世の加速魔法を火球に殴りかかった瞬間に発動、完全に相殺する。


「さすがね、エルちゃん!」

「次は私から行きますよ!?」


そう言うと十の魔法陣を展開するエレーナ。そして渦を描くように順に発動していく。


それは所謂省燃費な使い方であり、本来大量の魔力を使う竜巻を簡易的に作り出すためのものだった。もっとも誰もがこんな使い方をできるわけではないが。


「ちょっと!こんなの聞いてないよ!?」


驚くモーラ、それもそのはず、これをエレーナが習得したのはつい昨日、寝る前の自主練のときだったからだ。


「ハァァ!」

その声とともに最後の魔法陣が発動する。モーラと竜巻の延長線上にあるそれは竜巻をモーラの元へと運ぶエンジンとなった。


近付いてくる竜巻に対抗するためにモーラは残りの魔力の三割以上を使い自分の身長ほどはある大きな火球を作り出す。


「ハァ!」

モーラは竜巻との距離が五メートルくらいになった頃その火球を解き放つ。あたりには地震のような揺れが広がる。お互いの力を相殺し合ったそれはともに消え失せた。


「先輩!甘いですよ!」

突然モーラの背後へと忍び寄るエレーナ、二つの大型の魔法がぶつかり合うときの衝撃に気をとられていたモーラの隙をついて風魔法で一気に近づいたようだ。


「ハァ、さすがエルちゃん、私の負けね。」

「やったー」


モーラに勝てたのは久しぶりだったため飛び跳ねて喜ぶエレーナ。


「ハァ、少し休憩して他の部員をみてましよ?」

「ええ、私も少し疲れました。一気に魔力を使うのは、マズいですね。」


魔力の回復量はその総量に関わらずおよそ五、六時間ほどで完全に回復する。


そのため現在の時刻である午前八時前から七時間後にある練習試合には万全の体制で望めるのだ。ちなみにそのチームは近くの他の魔法学校の生徒たちで

馬車で二時間くらいの場所にある。


ーーーーー


「今日こそ勝つ!」

「教師を舐めるなよ?」


プライドだけはやや無駄に高いルイスはこういうときは本気を出すのだ。


「行くぞ!」


そう言うと朱雀は分身を六体作りだす。戦闘特化用で無地だ。十メートルほど離れた場所にいるルイスは両の手に魔法陣を作り出す。これは彼の十八番で所謂機関銃のような戦い方だ。ひたすらに細かい攻撃を当て続ける。


「フン!ワンパターンだな!スザク!」

そう言うと分身たちが五メートルと近づかないうちに一体を残して消し去る。


「ここからが本番だよ!」

朱雀がそう言うと今度は自分と同じ姿の分身を十一体出す。彼らには朱雀と同じナイフを持たせている?


ここまでで朱雀の総魔力の七割近くは消え去っている。短期集中型の戦い方だ。


ルイスが先発隊の最後の一体を消そうとするその時、朱雀本人を含む十二体は文字通り時計の数字のようにルイスを取り囲む。半径は十メートルほどある。


「ほう。そう来たか。」

機関銃のような戦い方のの弱点、それは手数で押すルイスを上回る手数で来られたときだ。現にこの距離から全員で詰めれば二、三人は確実にルイスの元までたどり着ける。


だが、たどり着けたからと言って確実に攻撃を当てることができるとは限らない。その上残りの魔力が乏しい朱雀はこの攻撃を成功させないと後が無いのだ。


お互いを探り合うように時間が流れる。その静寂を破ったのはスザクだった。


「マジかよお前。」

驚くルイス。朱雀は残る魔力もすべて使い追加で分身を作り出したのだ。その数合計十六体。朱雀本人を合わせれば十七体となる。


「さぁ!これで終わりだよ!ルイス!」

「かかってこいやぁ!!」


ルイスは一斉に魔法陣を展開し始める。それを見て朱雀たちも突っ込む。突っ込む途中で場所を入れ替わっているためどれが本物かはルイスにはわからない。


「ラァ!!」


捉えることができる限りひたすらに風の刃を放ち続けるルイス。スザクの分身も避けようとはするが一人で十六体操っているため限度というものもあり、生憎にも残り五メートルで七体分近くが消えていた。


その時あきらめたかのように弾幕が止まる。これを好機と見て一気に加速する分身たち、だがそれは一瞬にして消え失せた。それに驚き急停止する朱雀。


「ずりーぞ!ルイス!」

「禁止とは言ってないだろうが?」

「命の危機って!」

「プライドという名の俺の命だ。」


ルイスの左手からは腕時計が外されております裏面に掘られている例の文字には赤い何かかついていた。


「つうか、普通につかってんじゃねーよ。」

「ん?何が問題なんだ?」

近づいて小声で話し始める二人。


「バレたら不味いだろ?」

「ああ、この力のことか?」

「そうだよ。それ以外何があるんだよ!」

喰い気味に責め立てる朱雀。


「ハハハッ大丈夫だって。」

「何がだよ!?」

「声が大きい。きこえるだろ?周りに」

「だから…何が…大丈夫なんだよ…」

「俺、普通に強いから。」

「……そうだったね。うん。そう言えばルイスって元イージスだったんでしょ?なんで止めたの?」

「いや、それは…」


ルイスの顔が曇る。


「あ、ごめん、変なこと聞いちゃった?」

「いや、単純にめんどくさくなったからだが?」 

「クソが。」


そう言うと朱雀は壁際に歩いていき壁にもたれかかる。


だかそのすぐ後トムとジオンの戦いも終わったようで朝練は終了、練習試合一時間前まで自由となった。


現在時刻八時半過ぎ。


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