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6 スタインウェイが弾いてみたい

そんな響子の立ち去る様子を見て、美紀は響子がまだ男の子とは未経験であり、恐らくキスさえ、いや、手を握ったりデートをすることさえしたことがないことを直感した。


そして不愉快に思うと同時に意地悪な感情が湧き出てくるのを感じた。美紀は自分が不細工であることを中学生の頃からコンプレックスに思っていて、今はセフレが2人もいるということで他の女子大生よりその面で優越感を感じて一人悦に入っているようなところがあるのだが、それだけに清楚系美女で20歳を超えても尚清らかな恋を求めているような感じの響子が気に入らなかったのだ。


そして独り言を言った。

「いいことを思いついた」


そしてその日の夕方、セフレの一人である昌史と食事をしているときに、美紀は自分の思いついた計画を話した。昌史は話を聞くと

「えっ、それってすごいな。あんな清楚系美女を弄べるなんて超ラッキーだぜ。その計画、是非進めてくれよ」


「オッケー。面白くなってきたよ」

 それから数日後、美紀は学食で響子に近づいて話しかけた。


「ねえ、響子さんてピアノ科でしょ。わたしは声楽科ということもあってピアノはそこそこなんだけど、響子さんのベートーベン『月光』が絶品だって聞いたことがあるの。だからあなたの演奏を聞かせてくれない?」


響子はやや狼狽して

「私、あなたとは別に親しいわけでもないし、ほとんど話をしたことがないのにいきなりピアノを聴かせてと言われても。別に私のピアノなんて大したことないし」


「実は私の家ってお金持ちなの。だからピアノはスタインウェイなんだけど。弾いたことある?」

響子はスタインウェイと聞いて心が揺れた。


スタインウェイと言えば1000万円前後する代物だ。確かアカデミー賞を取った映画「グリーンブック」の中では、黒人であるが故に差別を受けて苦しんでいるピアニストが、コンサート会場を下見した時にピアノはスタインウェイじゃないと弾かないと言っていたのを思い出した。


「スタインウェイなんて、弾いたことあるわけないでしょ」

「だったら、家に来れば弾けるわよ。美味しいケーキと紅茶も用意するからさ。おいでよ」

響子は行く気は皆無だったのだが、スタインウェイの魅力には抵抗できず、承諾してしまったのだった。

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