第4話-7/9
初めまして、【れいと】と申します。
初投稿ですので色々不手際があると思いますが応援お願いいたします。
更に時間が経ち、蒼太は初めてISK閉店まで立ち会う事となった。
突然ムードのあるBGMが流れる店内。
照明の照度が落とされ徐々にホール全体が暗くなり、比例してステージが明るく
灯される。
蒼太はホールの雰囲気が変化したのを感じ取った。
もちろんステージの上に現れたのはマイクを持った練だ。
今日一日見ているだけでも練以外にMCとして現れたものはいない。
「では今日のアフターリザーブの時間でぇーす!」
小指を立てながら高らかに練がホールに響き渡る声で叫んだ。
「よっ、まってました!」「ヒューヒュー!」
割れんばかりの拍手と、歓声が店を揺らす。
時間は23時半、蒼太が思った以上に早い時間だった。
ホールのファナー達も占有率でみれば8割程度席が埋まっているのが分かる。
「今日は6人のうちの3人と素敵な夜を過ごせるかも?キャストカモーン!」
ステージの上の練が叫び、袖で待機しているキャストが現れる。
ホールにもまだキャストが残っている様子を見ればすでにアフターのキャストは
選出されていることが分かる。
「まず一人目は見た目は子供、実年齢は自称四桁、甘噛み大好きキスマークは
ホッチキス、わがままがママの『有瑠香っち!』」
現れたキャストはまだ学生と言っても、いや学生としても幼い部類に入るだろう
少女。
だが少女と言っても練の言葉を借りれば蒼太の5倍、いや10倍の年数を過ごして
いたことが分かる。
それがリップサービスか否かは蒼太はおいおい確認できることだが…
「やほーい、みんなー首洗って出直しておいでー!」
蒼太の知るミクと同じ背格好のアルカ。
真っ赤なスーツが印象的だったが、アルカ以外も何人かは同色のスーツを着てい
るのを目にしていた。
「言葉の意味はよく分からんけど、自信たっぷり有瑠香っち。
続いて2人目は料理は得意、掴むは胃袋と玉袋、
情熱に火傷注意の炎上必須『沙羅っち!』」
続いて紹介されたキャストが足早にステージに上がってくる。
特徴的な褐色の肌に灰色の髪、厨房でも衣裳部屋でも会話を交わした相手。
何度か蒼太とは接触があったが、名前を知らない女性の一人だった。
練の独特の呼び方だが名前がサラだということが分かった。
蒼太が明日以降も記憶しているかどうかは微妙なところだ。
「ちーっす!今日の夜食はオレのボディーのフルコース、
気のすむまで召しませ!」
アルカと同じ赤いスーツに背中には鱗に覆われた太い尻尾が揺れる。
つい先ほど彼女が口から火を噴いていたことを蒼太は一人思い出していた。
ある種興味をそそられる相手に淫らな想像をしてしまう女性経験のない蒼太。
妄想だけならすでにここのスタッフとも親密な関係にはなっていたが現実は
そこまで甘くはない。
「お待たせっ、そうちゃん疲れてない?」
少し息を切らせながらメイド姿の月姫が現れちょこんと蒼太の横に収まった。
「お疲れ、かぐ。疲れてないって言えば嘘になるけど、まだ大丈夫だよ」
朝の出会いから考えればすでに16時間が経過している。
「今やっているアフターリザーブが終わればもう少しで閉店だから頑張って」
「これは?どういうイベント?」
凡その予想はついていたものの改めて蒼太は月姫に問いかけた。
「えっと、閉店後にアフタールームで過ごす相手を決めてる所…」
そういいながら月姫は恥ずかしそうに下を向いてしまう。
その頬が少し赤らんでいるが照明が暗いこともあり蒼太はそれに気が付か
なかった。
「ってことは」
消え入る言葉に対して蒼太はすぐさまその先の言葉を求めた。
「まぁ…です。アフタールームで何をするかはご想像にお任せしますよ」
やはり言葉を濁す月姫だが、何を言い難そうにしているかは予想の範囲内だ。
年頃?の男女が一つの部屋で一晩過ごすとなればそういうことに繋がるのは
必然とも言える。
「でも3階の部屋は4部屋しかなかったよね?」
「うん、6人全員が部屋で泊れなくて、今からそれぞれパートナーを決めて、
最後に誰が泊まれるかを決めることになってるの」
「パートナーを決める?」
蒼太と月姫のQ&Aが繰り返される。
回答をもらえばその中にまた気になる事項が含まれており、蒼太の好奇心が
止まらなかった。
それでも月姫は顔色一つ変えずに彼の問いかけに応えていた。
「ええ、今ステージを見れば有瑠香さんには3人のパートナー立候補が居て、
沙羅さんには2人、寧音さんには3人って複数候補が居てるけど
まずその中で各キャストが1人に絞るの」
「どうやって?」
「だいたいは公平にじゃんけんとか、
気分で選ぶキャストさんがいたりこれも様々」
月姫が言った通りステージ上では紹介されたキャストの隣にファナー達が
立っている。
すでにキャストは6人出揃っており、練の呼びかけにキャスト毎の希望の
ファナーがステージに上がっていった。
ここ数日で沢山のキャストを見てきた蒼太でもまだ初見のキャストが居ることに
気づく。
「その後にキャスト6人でじゃんけんをして、
今日の場合は3人が勝ち残りでアフタールームを確保できるの」
「負けた場合はどうなるの?」
「残念だけどその方たちは脱落ってことで今回は破談です」
「他のホテルに行ったり?」
「それはルール便宜上NG行為で禁止されてます。
それはキャストさんのみなさんもしっかりしてるので…」
少し言葉を濁す月姫。
彼女は一旦ステージの上を見やり、再び言葉を続けた。
「でも私生活までは口出ししてないのでお仕事に絡まないところで色々やってる
キャストさんも居ますが、それは目を瞑ってます」
「色々?」
大人の男女間の事になれば月姫は少し言い澱むが、それを全く気にもせず次々と
質問を投げかける蒼太はセクハラに該当する行為になることに彼自身気が
ついていないようだ。
「色々です…も…それはキャストさんに直接聞いてもらった方が早いですよ。
例えばすでに空夢さんはファナーさんとアフタールームに入ってますし…」
「うろむって?だれ?」
初めて聞く名前に思い当たる節が無く蒼太は問いかける。
徐々にキャストの名簿が彼の頭の中では出来上がってきてはいるがウロムという
名前は耳に新しい。
「オープンからボックス席で大食いされてたキャストさんですよ。
見かけませんでした?」
「あぁ、ウロちゃんって呼ばれてた彼女か…
ウロムって名前だからウロちゃんか…」
やっぱり名札は必要だよなと心の中で頷く蒼太。
2人の会話中にもステージ上ではイベントが進み、キャストの隣にはそれぞれ
選ばれた1名のファナーが寄り添い、6人のキャストが練のアナウンスに従って
じゃんけんを始めていた。
会場全体が一体となって本日最後のイベントを盛り上げる。
じゃんけんの結果によってキャストとファナーは一喜一憂する様が見ていて
楽しく思える。
「ステージを見てると楽しそうだね」
「毎日こんな感じです。羨ましく思いますね」
穏やかな表情を浮かべている月姫の横顔を見ながら蒼太は彼女に問いかける。
「かぐも参加してみたいとか?」
「た、叩きますよ?グーで!」
顔を真っ赤にしながら月姫は握りこぶしを作り、それを振りかざして見せた。
ご覧いただきありがとうございます。
ファンタジー世界のキャストが沢山居るキャバクラ店のお話です。
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