第2話-6/9
初めまして、【れいと】と申します。
初投稿ですので色々不手際があると思いますが応援お願いいたします。
かと思えたが…
ピピッピー!ピピッピー!
昨日も耳にした事のある電子音が近くから聴こえた。
ネネの右手にあるブッチ製の時計だ。
ブッチとはスマートフォンの大手ブランド名でスマートフォンをブッチフォン、
彼女たちが身に着けている時計型機器はブドウォッチと呼ばれている。
メーカーのロゴがブドウの形をしているため、グレープ、グレと呼ぶ少数派も
居たりする。
「呼び出しー?今日はホールはオフのはずなんだけどなー」
首を傾げネネが独り言のようにつぶやいた。
彼女の糸目から蒼太に視線が送られる。
昨日の経験からしてこの時間にもなればある程度蒼太一人でも乗り切れること
は分かっていた。
彼がキャストの役割を変更できるほどの権限は持っていないが、この場が混乱
することはないと判断しネネに思いを伝えた。
「少しくらいならここは大丈夫だから行ってきても良いよ」
実際の所蒼太が役に立つではないが、いないよりはましだろう。
「すぐ戻るねー」
言うが早いかネネは瞬く間に青色のドレスに着替えると素早くこの場を後に
した。
彼女のおっとりした雰囲気からは驚くほどスピーディーな反応に驚いてしまう。
ネネがキッチンを出て数秒が経過したころ…姿を消した扉が勢いよく開いた。
「おかえ…って!?」
すぐさま入り口を見た蒼太はネネではない人物の登場に驚きを隠せなかった。
初めて見る人物ではなく見知った人物。昨日もここに現れたサキと名乗った
キャストだ。
ただ昨日とは少し違った状況に蒼太は慌てふためいた。
ここに来るなり彼女は床へ倒れ込み、その場に駆け付ける蒼太。
「大丈夫!?」
「ダイジョ…じゃ、ない…もうゲンカ…い」
身体を抱き起し、彼女を見つめる。
息も絶え絶えといった感じに視点の定まらないうつろな瞳。
昨日は吸い込まれるような蝙蝠型の虹彩が少し元気がなくただ事ではない容態
ではなさそうだった。
「どうした?」
ぐったりとしたサキに蒼太は他のキャストに助け舟を出すべく見渡すがこの場
には二人しかいなかった。
一足違いでネネがホールに行ったのが悔やまれる。
「アタシたちサキュバスはテイキテキに…
エイヨウをセッシュしな、いと…んでしまうの…」
「え?サキュバス?」
「ご存じ?」
その単語を蒼太は知らないわけではない。
幻想世界ではあまりに有名で界隈どころか今ではいろんな意味で認知度が
高い淫魔である。
男性の精を搾取する女性型の魔物。
「知ってるも何も…」
「なら、ハナシがハヤいわ…おネガい、あなたの…」
彼女の言わんとしてることは分かった。
そして何を求め何をしようとしているかも…
ただこの緊迫した状況下で蒼太はそれを拒むことが出来なかった。
サキュバスと言う魔物がどのようにして人間から精を搾取するか蒼太が
知らないわけでもない。
いたって簡単な、一言で表せば性交することであった。
もちろんサキが言っていたテツのオキテを蒼太が忘れているわけではなかったが、
背に腹は代えられない状況がその約束を二の次にしてしまった。
目の前で女性が苦悶している中でもすぐさま蒼太の分身がいきり立つ。
これらは全てサキの持つ特性で、彼女は男性をすぐさま興奮状態にし、
その状態を維持させることが出来る。
何もそれは男性だけでなく女性に対しても性的興奮や欲求を高めたり、
恋心や感覚を操作することが出来た。
瞬く間に蒼太の下半身は露出させられ、雄の臭気を放つそれがサキの眼前に
現れた。
これで彼女が救えるのなら…蒼太の腹をくくって彼女の動向を見守った。
「いただきまっ…」
そう言いつつ奮い立つ彼の強直を口に含もうとした次の瞬間!
「紗希さん!」
ホールからキッチンにつながる扉が開くと同時にサキの名前が叫ばれた。
声の主は他でもないメイド姿の月姫だった。
「かっ、っとムーン!」
蒼太はかぐと呼びかけた言葉を飲み込み、旧友の店での名前を叫ぶ。
言い逃れの出来ない状況。蒼太が一番恐れていたことだ。
「蒼太さん、最初に出した条件…覚えていますよね?」
月姫はとても醜いものを見るような目で蒼太を睨みつけた。
そしてそのまま床に視線を落す。
その時にとても寂しそうな表情を浮かべていたことを誰も読み取ることは
できなかった。
「そ、その…まだ未遂…」
イチモツを握りしめられあわや咥え込まれようとしている彼に説得力はない。
月姫との関係は男女の物でも恋人でもなくただの雇用関係でしかない。
蒼太は浮気をした経験はないが、この状況が非常にそれに近く自分の胸を締め
付けた。
「問答無用です、今日限りであなたにはここを辞め…」
月姫がそれを言い終わるより早く彼女の膝が崩れ、ゆっくりとその場に
倒れ込んでしまった。
まるでさっきのサキを見ているようで一瞬デジャヴと思ってしまった。
「え?おい、ムーン」
声をかけるが月姫からの返事はない。
蒼太のイチモツから手を放し、サキはムーンへと近寄った。
「あら?どうしたの~」
同様に蒼太も月姫ににじり寄り、サキの時と同じように彼女を抱え起こした。
感じる違和、月姫の体にこもった熱に反射的に彼女の額に手を添えて改めて
驚く。
「熱っ!すごい熱じゃないか!」
見た目では分からなかったが彼女がかなりの高熱を出し、倒れたことを悟る。
体温を計らずともその感じだけで39度近い熱があるのが分かった。
「アタシたちをみてコウフンしちゃったの~?」
「そんな場合じゃなくて!そうだ、休める部屋あったよね?どこか分かる?」
茶々を入れるサキに腹立たし気に怒鳴りつける蒼太。
彼が求めた部屋はファナーとして来た日に酔いつぶれた時に運ばれた部屋の事
を言っていた。
「イマのうちにアタシをサソっちゃう?」
「彼女にもしものことがあったらどうするんだよ!」
再三に渡って見当はずれの事を言って茶化すサキに憤りを感じるが今の頼りの
綱は彼女しかいないことに頭を抱えた。
状況を打破するには彼女を頼るしかないのだ。
「もぅ、ツれないなぁ~、シカタないからオシえてア・ゲ・ル」
口を尖らせつつサキは立ち上がるとまだ店の構造を良く知らない蒼太について
くるよう言った。
「頼むよ…」
心の叫びを口にしながら、蒼太は自身の露出していた男性のシンボルを直し、
月姫を背中に負ぶった。
彼女に案内されるままに一旦ホールを経由し、奥のエレベータを使って普段は
アフターに使われる部屋に向かうことにした。
ご覧いただきありがとうございます。
ファンタジー世界のキャストが沢山居るキャバクラ店のお話です。
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