俺、異世界で魔王となる
まだまだ拙い箇所がございますが、どうにか読めるように研鑽を積んでいきますので、楽しんでいただければ幸いです。
魔王、人が次々とその口を開く。
「魔王だ。魔王だ」
その言葉は畏怖に染まっている。
そしてその言葉は俺に向けられている。
仲間たちは口を開けたままで喋ることはない。誰も擁護することはない。
「魔王だ。魔王・・・」
その言葉には憎悪が込められている。
この世界において魔王とは絶対悪の代名詞。むしろ絶対悪が魔王の代名詞のようなもの。
人々の安寧に影を差す存在に誰が憎悪しないというのか。
「貴様、魔王ッ!!」
その言葉に殺意が宿る。
一人、また一人と剣を抜き、拳を握り、歯を食いしばって俺を睨む。
宿敵を視認し、自らを鼓舞するように雄たけびをあげる。
呪文の詠唱までが始までもが耳に届く。
(勘違いだって言っても無理なんだろうなぁ。こんな状況じゃ弁明の仕様ないし)
乾いた笑いがこみ上げてくる。口元に手を当ててそれを抑えるが、開いた口から絶望と共に這い出てくる。
「魔王め、下卑た笑いを」
最前列にいる女が吐き捨てるように言った。
俺がこの女に何をしたというのか。ただ、そこに存在したという理由で責められたんじゃたまったものではない。
なんでこんなことになったのか、神に問いただしたい。いや、もっと高位な存在に問いたい。
一介の高校生だった俺が、異世界召喚なんて言う望んじゃいないファンタジーに巻き込まれ、挙句の果てにその世界に敵対される。
「はぁ…」
笑いが止まったと思えばため息がでた。異世界に来て何度目のため息だろうか。もはや両手両足の指の数では足りない。
この状況への不満も不安も色々あるが、今は仲間がいる。一人じゃないということが唯一の救いだ。
「さて、どうするかな」
俺はこの日、魔王となった。なりたいかどうかを置いておいて、魔王となってしまったのだ。




