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禁煙なんて簡単だ、私はもう何度もしている。

今回の内容は愛煙家にはお勧めしておりませんが、煙草をおやめになりたい方には推奨しております。

 タスポが導入されて、一体どれ程の時が経ったのだろう。

 あれから私は1本も煙草を口にしていない。

 

 たった今調べたところ、2008年の7月に完全実施されたらしいから7年以上経つらしい。

 

 まぁ、そんな事をいちいち数えているうちは未練がある証拠なので、どうやら私は喫煙者から離脱したと言っていいのだろう。

  

 よく、笑い話で……


「禁煙なんて簡単だ、私はもう何度もしている」


 なんて言うけれど、私も確かに何度かは(片手に収まる程度だが明確な期間設定有の)禁煙をした。

 喫煙歴は個人情報に関わるのでちょっと内緒だが、日に1箱(20本)は下らなかったし、インフルエンザにかかっても煙草が手放せないといった、ヘビーではないと思うがライトではないスモーカーだった。

 銘柄も「ハイライト」に始まり次いで「ロングピース」。

 煙草に縁も関心もない方は何の事やら分からないだろうが、結構重い類の……つまり、身体に著しくよろしくない成分が多量に含まれている方面のものを好んでいた。

 いや、好んでいたかは正直分からない。

 別に私の年齢は「ハイライト」が当たり前という年代ではない。だからこそ、若者の口にしない、おっさんくさい銘柄を敢えて選んだのだ。本当の所は「ファッションで吸っているんじゃない」という、妙な虚勢だったのかもしれない。


 実を言えば、私は煙草が嫌いだった。


 周りの友人が吸おうものなら、あからさまに嫌な顔をし……違うな、はっきりと言った。

「1本だけにしてくれよ」と。

 1本は譲歩。それ以上は無理。


 だから、煙草を口にしたのは興味本位とかではなく「克服」だった。

 

 今なら馬鹿としか思えない理由。でも、当時私は本気だった。

『自分も吸えばいいのだ。そうすればきっとこの耐え難い煙も(かぐわ)しい”アロマ”になる』


 全くもって馬鹿としか言いようがないが、取り敢えず「ハイライト」を購入。

 ここで洒落た銘柄を選んだら負けだ。(何にかはわからないが)


 格好いいとは言い難いやつを買う事が大事なのだ。

 そして私は毒を服用して体を慣らす忍者の決意をもって、一晩で20本のハイライトを吸った。


 徹夜である。


 馬鹿なチャレンジャーの四肢は冷え、両手の十指の先ははっきりと紫色になっている。

 (タバコは血行を阻害し、明らかに健康を害する事を身を持って証明したともいえる)

 どうにも私は100%か0%という偏った性格の若人だったので、やるとなったら徹底的にやらねば気が済まない。

  

 かくして私は喫煙者になった。


 だが、たばこが旨いと思った事はあまりない気がする。ごく稀に「旨い」と思う時もあった気はするが、いつになっても煙は苦手であった。

 結果、周りで誰かが煙草に火を点けると、自分も吸う。一緒に吸っていれば何とか煙の不快さが紛れるからなのだが、同じテーブルに煙草を吸う奴がいればいるほど果てしない行為だ。


 気付けば私はニコチン中毒になった。


 しかし、煙草に一番多く含まれる成分はタールやニコチンではなく『税金』である。

 時は流れ、そんな当たり前の事を意識し始めた頃にはもうタール1mgとか書いてある煙草を迷わず買う単なる喫煙者になっていた。唯一香りが好きだったロングピースも、余程血流を妨げるのか口にすれば眩暈(めまい)がした。


 やがて、おかしな理屈で吸い始め自分ルールでおっさん煙草を選んでいた私も、健康と財布を気にするお年頃になっていた。


 そうだ、もう余計な納税はやめよう。


 過去にも訳あって1年くらい吸わなかった時期もあるが、所詮は禁煙。禁止された物はいつかは破ると相場が決まっているのだ。現に、禁が解ければ元通り。

 かと言って減煙もダメだ。1日〇本なんて決めると、その数ばかりを数えてしまう。そして、煙草が手元にある限り、ついつい「〇本」が「〇〇本」になって行く。

 そもそも「ああ、禁煙〇〇日目だ」とか「今日はあと〇本吸える」なんて言っているうちは脳みそが煙草に占領されているのだから、想いが募るばかりなのだ。


 こんな時、自分のデフォルトを思い出す。当然、債務不履行ではない。

 100%か0%。それが私の習性なのだ。


 禁煙はしない。減煙もしない。


 卒園……じゃない。卒煙だ!!



 まぁ、そんなわけでタスポ導入後から私は自主納税をやめた。

 正直言えば、しばらくは喪失感が付きまとったがそれだけ。

 ニコチンが切れたからという具体的な禁断症状は大したことではなかった。


 アルコールのつまみがなくなったとか、コーヒーの友がなくなったとか、ひと仕事終えた時の一服がなくなったとか。

 つまり、きついのは『喪失感』だった。


 今まで当たり前にあった物を失ってしまった。という寂しさ……。

 正直言って、これとの戦いの方が断然辛い。

 空気のような存在の煙たい古女房を愛していたという事実を突き付けられるような物だった。



 あれ? でも待てよ? あのまま納税を続けていたら……。

 10年もしないうちに100万円くらいは優に払ってるよね?

 こっちの損失の方が深刻だ。


 私は今まで何某かの大きな組織の陰謀によって余計な税金を搾取されていたに違いないのだ!

 (と、考えることが大事なポイント)



 実は今でもたまに煙草を吸ってる夢を見る。

 ふとした瞬間に「なんか足りない気がする」と思うことがある。


 それでも「ああ、煙草の記憶は、体が覚えているんだなぁ」と思うだけ。ただの思い出に過ぎない。

 平熱も上がり、基礎代謝も上がり(タニタ体重計調べ)、昔より多分元気だ。



 物事は大抵、始めるよりも終わらせる事が難しい。だからもし、あなたが今煙草を吸っていないならそのまま吸わないでいたほうがいいと思う。煙草って凄く不自由だと思うから。

 吸いたい時に喫煙スペースを探す間の我慢とか、健康やお財布と相談しながら我慢とか、子供や妊婦の近くで吸おうものなら非常識さを追求され弾圧を受ける。


 そしてそれらを乗り越えた先の一服の達成感は恋焦がれた恋人に会ったような至福。……と、なる罠。

 


 愛煙家の皆様。すべてを理解した上で選んだ道でしょうが、昨今の嫌煙ムードお気の毒です。

 煙草の値段は今後どうなってしまうのでしょうか。

 

 もう、いっそ卒煙しちゃえば気楽ですよ。


 禁煙よりも、更に簡単です!




 そして、新しい奥さんを紹介します。


 お酒さんです!


次は禁酒……。?

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