第二章 第26話:過去との決別と永遠の誓い
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現世から這い上がってきた最低の元上司・佐伯を前に、怯えるどころか毅然とした態度で立ち向かう由香と、怒りに震えるガルド。過去の呪縛を完全に断ち切り、二人の絆がさらに強固なものへと昇華される感動のクライマックスをお楽しみください。
城のエントランスの冷たい石畳に這いつくばり、圧倒的な重力魔法に押しつぶされそうになりながら、佐伯は脂汗を流して震えていた。
「はぁ、はぁ……っ、な、なんでだ……! なんでお前はそんなに平然としていられるんだ、由香……! 俺はお前のせいで人生を狂わされたんだぞ……っ!」
佐伯の喚き声は、もはや往時の威圧的な上司のものではなく、すべてを失った男の哀れな言い訳にすぎなかった。
由香はその情けない姿を冷ややかな目で一瞥し、フッと鼻で笑った。
「私のせい、ねえ……。あんたはいつもそうやって、自分の無能さや失敗を他人のせいにし続けてきたんでしょ。現世じゃそれで周りをいいように利用してこれたかもしれないけど、ここはあんたのちっぽな会社じゃないのよ」
由香の言葉には、かつて理不尽に耐えていた頃の影は微塵もなかった。
地獄の過酷な荒野を生き抜き、最強の王であるガルドと心を通わせ、母となった彼女にとって、佐伯のような男の小さなお山の大将としてのプライドなど、もう恐怖の対象ですらなかった。
「お前みたいな人間のクズが、この深層の王の妻だと……? 認められるかっ! こんな化け物の城で、いつかお前も――」
佐伯が最後のあがきとばかりに憎まれ口を叩こうとした瞬間、ガルドが低く冷徹な声を落とした。
「これ以上、我が妻の耳をその不快な雑音で汚すな」
ガルドが軽く指を弾くと、佐伯を縛り付けていた重力がさらに鋭く増し、彼の意識はプツリと途切れた。ドサリと床に崩れ落ちた佐伯は、そのまま気絶して動かなくなった。
「……始末するか、王よ」
近くに控えていた側近の鬼人が冷ややかに尋ねるが、ガルドは首を横に振った。
「いや、殺す価値すらない。あの男をこの城の牢獄に放り込んでおけ。現世への帰り道など知る理由もないこの深層で、絶望の中で永遠に朽ち果てさせればいい」
「はっ!」
側近が手際よく気絶した佐伯を引きずり、エントランスの奥へと連れ去っていく。嵐のような騒動は、こうしてあっけないほど静かに片付けられた。
騒ぎが去った広間に、再び穏やかな静寂が戻る。
赤ん坊のアルドは、何事もなかったかのように由香の背中ですやすやと眠息を立てていた。
「……すまなかったな、由香」
ガルドは静かに歩み寄り、由香の肩を優しく抱き寄せた。その赤い瞳には、妻の過去の傷に対する深い労りと、愛おしさが満ちていた。
「かつてお前が背負っていた現世の絶望や理不尽を、私はもっと早くに断ち切ってやるべきだったのかもしれない」
由香はガルドの胸にそっと額を預け、穏やかに首を振ってみせた。
「ううん、いいの。……あの時、現世から逃げ出すようにこの地獄に落ちてこなかったら、私は一生、あの男みたいな人間の言いなりになって心を殺したまま生き続けたはずだもの」
由香は顔を上げ、ガルドのまっすぐな瞳を見つめ返した。
「ここであなたと出会って、戦って、家族になって……私は初めて、自分の足でこの世界を生きているって実感できたの。だから、あの男が現れたおかげで、私の過去の未練は完全に断ち切られたわ。ありがとう、ガルド」
その言葉を聞いた瞬間、ガルドの胸の奥から熱いものがこみ上げてきた。
彼は由香の頭を引き寄せ、その唇に優しく、そして永遠を誓うような深いキスを落とした。
現世の毒牙が持ち込んだ過去の残響は、かえって二人の間にあったわずかなわだかまりをも完全に洗い流し、その絆を誰にも引き裂けない絶対的なものへと変えた。
背中を預け合う最強の夫婦の未来には、もう恐れるものなど何一つなかった。
城の窓の外では、新しい時代の風が、どこまでも続く眩しい光とともに未来へと吹き抜けていくのだった。
第二章第26話「過去との決別と永遠の誓い」をお読みいただき、ありがとうございました!
由香の元上司・佐伯の登場による過去の清算と、ガルドと由香の絆がより一層強固なものになる感動のクライマックスを描きました。由香の精神的な強さと、ガルドの圧倒的な包容力に心打たれていただけたら幸いです。
そして次回、第27話では、物語は再び大きな転換点を迎え、深層のさらなる未来に向けた新たなプロジェクトが始動する新展開へ突入します……!
「佐伯が自業自得すぎてスカッとした!」「由香ちゃんが強くてかっこよすぎるしガルドとのラストのシーンが尊すぎて泣ける」と思っていただけましたら、ぜひブックマークや評価、いいねをよろしくお願いいたします!
それでは、第27話でお会いしましょう!




