第二作戦 新米パパの最初の第一歩
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レオンは大きなあくびをした。
「そろそろ寝るか」
あぁそうだ、勢いで引き取ったから、布団もない。とりあえず今日は俺のベットに寝かせるか。
「レオン、今日はパパのベットで寝ろ」
「えぇ……洗濯、ちゃんとしてる?」
「してるわ! このやろう」
俺はレオンのぷにぷにした張りのあるほっぺたを引っ張ってやった。レオンは嫌そうに顔をしかめている。
「……まぁいいや。ザックさんはそのへんで寝て下さい」
「そのへんって、家主を床で寝かす気か。パパと一緒に寝るぞ!」
「いやだ」
「……また即答かよ」
レオンは俺を通り越して、部屋の角に置いてあるベッドにドーンッと倒れ込んだ。そのまま自分の足を両腕で抱きしめて身体を丸くして寝てしまった。その寝相はまるっきり猫だった。そして、俺の腐れ縁のトトと同じ寝相だ。
「ふふ、かわいい寝相だこと」
疲れていたのだろう。クークーといびきをかきはじめた。俺の家に入ってきてからずっと眉間にシワを作っていたが、寝ている今はシワは綺麗になくなり、無垢な幼い子供の顔となっていた。
布団をかけてやり、俺はベッドの傍の椅子に座った。レオンが眠って、ようやく大きなため息を吐く。営業用のスマイルも止め、筋肉痛になりそうな口角をグリグリとマッサージした。
グリグリとマッサージをしながら天井を見上げる。木目の模様をボーッと眺めていた。
子供、子供……かぁ……色々買わないといけないなぁ……俺の給料足りるかなぁ……団長に言って補助してもらおうか……何がいるんだ……子供の服に……食器に……勉強もさせないとだから……机や椅子もいる……学校も考えてやらないと……
そもそも、どこに行けば『子供用品』ってやつは買えるのだろうか。
俺はレオンの規則的な寝息を立てる胸の動きを見て、勢いよく俺が彼を引き取ると言った軽率さを恥じた。
自分の選択を後悔はしていない。きっと、違うタイミングであったとしても、俺はレオンを、息子として引き取っていただろう。
ただ、それを、人は無責任と呼ぶのだ。俺は、子供の育て方など知らない。ましてや、自分の両親からまともに愛してもらったとこなんてないそんな俺が、この強い瞳を持つ彼を真っ直ぐに育てることができるのだろうか。
「……母さん……父さん……」
レオンの閉じた瞳から涙が流れる。俺はそのたびに彼の頬を人差し指で拭ってやってやり、そっと頭を撫でていた。
戦場で見つけた彼は、瓦礫の下で隠れていた。全身泥まみれで、膝や腕にたくさん傷を作り、頬はこけていた。そんな絶望の中で、彼の黄金の瞳が光のように輝き、彼の金髪も瞳の光に呼応するかのように煌めいていた。俺を見上げているだけなのに、俺は心臓を掴まれていた。
「はぁ……とりあえず、団長のところいって、レオンを騎士団の保護下にする許可もらわねぇと……あと、養子にする手続きして……」
レオンの隣で横になる。不安はたくさんある。
というか、不安を通り越して責任という圧力で押しつぶされそうだ。
「……頑張れ俺」
俺は目を閉じて、先ほどドリアを食べてチーズを一生懸命伸ばしていたレオンを思い出す。
幸せにしてやれるか分からない。
けれど、この子を幸せにしてやりたい。
遠い昔、トトと、あと、あの泣き虫な子と、一緒にした、だるまさんがころんだの遊びを思い出した。
そして、クスッと笑う。
「そうか、これが、パパのはじめの第一歩ってやつか」
俺はレオンの額を軽くコツンとして、とりあえず疲れ切ったこの身体を休めることにした。
お読み頂きありがとうございました!
パパの最初の第一歩です。
親になるってたいへん!




