それでも元の世界に帰りたい
「お若いの、長政さんと言ったかな。それでも元の世界に帰りたいと思われるか。お前さんが帰っても叡山焼き討ちはおこる。そして、お前さんは死ぬ。ここにいれば、お前さんは死なずに済む。名もない男として、この世界で生きてみなさらんか」
「いや、確かに、そうかもしれん。この世界で平和に生きていくこともできるかもしれん。だが、ここで見ぬふりをすればわしはわしを許せなくなる」
「はは…頑固じゃな。だが嫌いではない。なら、作ってやろうではないか。タイムマシーンを」
「教授、かたじけない」
「だが、タイムマシーンを、作るにはひとつ問題がある」
「と、おっしゃいますと」
「金だ」
「金?金子か。そう言えば理沙殿は、自分と結婚して、会社を儲けさせろと言っておったな」
「理沙殿?」
「いつも弁当を持ってくるだろ。その会社のお嬢様だよ。高木コンツェルンの」
「な、なんと、あの高木コンツェルンの?」
「ご存知なのか?」
「日本でも有数の会社だ。知らぬわけがない。そのお嬢様に見込まれるとは、お前さんもなかなかのもんじゃの」
「いや、私には市がいるし、生涯、愛する女は市だけだ。市のためにも、子どもたちのためにも、元の世界に帰りたい」
「そうか、なら、わしも頑張るとするか。まずは金の調達じゃな」
「そのことなのだが、わしが持っていた刀を一千万で買いたいと言っていた男がいるのだ。さしあたっては、そのお金を使ってもらいたい」
「長政さん、いいのかい?大事なもんじゃないのか」
「元の世界に戻れるなら安いものだ。そこで、翔太殿に頼みがある。理沙殿と結婚して、彼女を守ってやってほしい」
「な…なんで…俺はただの下男だぞ」
「いや、翔太殿は松風が見込み、わしも見込んだ。翔太殿なら、理沙殿が言っていた面倒な親戚を制して、立派に後を告げる」
「買いかぶりすぎだよ」




