94 師匠 6
売国奴として討たれた兄のせいで騎士団から追放された令嬢騎士レイシェル。
そんな彼女の前に最強を自負する転生者にして霊能者・ノブが現れ、秘宝探索の旅へと誘う。
長い旅の末、二人は数々の仲間とともに封印の地へ到着した。
ノブの兄弟子を名乗る老魔術師・マスタージェイドをも撃退した一行。
彼らはノブの師匠、世界有数の大賢者トカマァクの居住地へ向かった――。
周囲は岩山だらけの山岳地帯だ。大賢者トカマァクのダンジョンを軍で攻めようにも、可能な方向は限られている。
その一方向からケイオス・ウォリアーの軍が迫っていた。
クラゲ艦Cオーウォーが、そしてノブ達の機体がダンジョンの格納庫から出撃する。
その隠しシャッターが閉まる頃、敵軍は交戦可能な距離に到達した。
敵機は厚い鎧を着た重武装の歩兵型機。見慣れないデザインであり、一般には流通していない機体だ。
その最奥には一機だけ異なる機体があった。
それも巨人型機である。
鎧の上に外套を纏ったような姿だ。頭部は冠を頂いたような形状で、顔面には髭のように見える装飾もある。
その機体から通信が送られた。
『自己紹介させていただこう。我が名はオリハルコンキング。そして我が戦闘の体、Sマキシマムピース!』
各機のモニターに相手の顔が映る。
機体と驚くほど似た‥‥というよりそのままの容貌だ。
その肌も皮膚ではなく、光沢をもつ金属に見える。
「キングって、やけに大きく出たな」
呆れるジルコニア。
「親衛隊でもないのか。それに人間にも見えない」
呟くノブ。それにリュウラが答える。
『そう。あいつは魔物、一種の金属生命体』
『フフフ、それを見抜けるか。情報通りだ』
魔物――オリハルコンキングは自信たっぷりの笑みを浮かべる。
『私達の事はちゃんと調べてきているようだな』
ザウルライガーのその言葉にも、キングはやはり笑みを浮かべたまま断言した。
『必勝を期すためには当然の事。突撃!』
その号令で、敵の量産機がいっせいに駆けだす!
剣を振り上げ、拳から光線を放って。
ノブ達は当然それを迎え撃つ。
Eムーンシャドゥのエルボートリガーが先頭の敵機に炸裂した!
だが――ダメージを受け、よろめいたものの、敵機は立ち直り再度斬りかかって来る!
『こいつら!? 硬いぞ』
予想以上に頑丈な敵機の耐久力に面食らうジルコニア。
オリハルコンキングは後衛の奥で高らかに嗤った。
『我が最強軍団の兵、Bオリハルコンピースは! 騎士の攻撃力、城の防御力、僧正のごとき柔軟性を持ちながら歩兵のごとく数が揃った最強の量産機! それを操る頭脳が的確な判断を行う限り敗北はないぃィ!』
複数で斬りかかり、光線を撃ってくる敵機。
反撃に耐えられ、光線に装甲を掠められ、ノブが唇を噛む。
「クッ‥‥」
「おいおい、マジかよ!? 今さら量産機に苦戦て‥‥」
焦るジルコニア。
『ハハハ! 恐るべきは単騎の強者に非ず! 戦場での強さ、それすなわち質と数の合計なり!』
オリハルコンキングは上機嫌で嗤っていた。まるで既に勝ったかのように。
『それもこの世界の戦い方を理解した我が知能による物よ! 戦意が上がる前にぶつかる硬い敵、一機倒せば終わりではないので考えねばならぬペース配分! それがこの世界で最も厄介な戦場なのだ。さあ、行けいっ! やれいっ! 行けやれィ!』
さらに激しい攻撃がノブ達を襲う。
キングの主張どおり、Bオリハルコンピースは量産機の割には高性能だ。特に防御・耐久力に秀で、なかなか破壊できない。
しかし。
(違う、それだけじゃねーよ!)
ジルコニアはムーンシャドゥのモニターを見ていた。
そこには現在の操縦者ステータスが表示されている。
今、ノブの戦意は‥‥60。50~150で変動する値の、ほぼ最低値だった。
これとて戦闘で徐々に上がってやっと達した数値だ。つまり、ノブはまともに戦えるコンディションになかったのだ。
(ノブ‥‥お前が平静を保てないなんて。しっかりしろよ!)
敵軍を崩せず苦戦するノブ。
しかし後ろから凜と声が響いた。
『【光熱の領域、最終第七の段位。真なる極小の核は分かれ融合する。速き風は光と共に全てを滅する】――ニュークリアーブラスト!』
レイシェル機の放った核撃魔法が光と熱の爆発を起こし、敵機を吹き飛ばす。
ノブがダメージを与えていた機体は爆発し、無傷だった機体も半壊状態だ。
『なーにぃーっ!? なぜ初手からそんな大技を!? そのMAP兵器は必要戦意130とデータにはある!』
驚愕するオリハルコンキング。
『ええ、ですから戦意系のスキルと強化パーツで固めましたわ』
レイシェルが答えた通り。
黄金級機の製造を待つ傍ら、予め戦意を上げておく【闘争心】スキルを高レベルで取得し、強化パーツは戦意の上がる効果を持つ【クイン家の紋章】を装備できるだけしている。
これによりファイティマンのシランガナーはオウキ機送りになってしまったが、レイシェルのSエストックナイトは最初から最強武器で範囲攻撃が可能となったのだ。
『フッ‥‥毎回新パーツや新スキルで強化していく部隊を相手に、前のデータだけで勝ちを確信するのは早計だったようだな』
上空で笑うオウキ。
座席の後ろで配線された状態で立つシランガナーは、少し寂しそうだが‥‥。
だがしかし。オリハルコンキングはまだ余裕を失っていなかった。
『フ、フフ‥‥ならば改めて調べさせてもらおう。受けろ! 我が特殊能力【スーパーキングスキャン】を!』
そう言うや、マキシマムピースの周辺に禍々しいオーラが漂う。
ムーンシャドゥがそれに触れてしまう、と――
「なんだこりゃ? 変なデバフがかかってるぞ?」
モニターを見て驚くジルコニア。
「これは‥‥スピリットコマンド【サーチ】と同じ?」
ノブは表示される効果を見た。
敵からの被ダメージが10%増加‥‥機体の弱点を敵に把握されているのだ!
だがこの能力はスピリットコマンドでは無い。
『吾輩はそのスピリットコマンドと同じ効果を、周辺一帯に常時かける事ができる! 吾輩に近づくだけで、常に割り増しダメージを受ける事になるのだ!』
得意満面のキング。
これは彼だけのユニークスキルであり、彼を中心にした一定範囲にいる敵に、1分おきに【サーチ】と同じ効果を強制的に与えるのだ!
『突撃!』
キングは号令をかけた。
緊張した面持ちでノブは自機に迎撃態勢をとらせる。
しかし殺到する敵の前に割り込む巨体!
ザウルライガーが敵の進路を阻んだのだ。
当然、敵はザウルライガーへ押し寄せる。
そしてライガーがいるのも【スーパーキングスキャン】の範囲内なのだ!
敵機の剣が、光線が、容赦なくライガーへ乱れ撃たれた。
『ぬおおぉぉ!』
装甲の薄い箇所を集中的に狙われ、絶叫するライガー!
設定解説
・オリハルコンキング
金属生命体のモンスター。インタセクシルにもそういう魔物はいるが、この個体は異界から召喚されたもの。
元は魔王の城で防衛を担当していたが、魔王の城まで乗り込んでくる猛者どもが手強過ぎたためあえなく撃破される。
残骸になった所をインタセクシルに召喚され、復元されて再利用される事となった。
チェスになぞらえたゴーレム系の部下を使っていたが、この世界では考えを改め「能力別に兵士を造るよりもゼネラリストの量産型をいっぱい造ったらいいのでは?」と思いつき、それを実行して投入している。
得意な戦法は弱った奴を集中攻撃すること。割と普通の戦法だが、本人は至上にクレバーだと思い込んでいるし、敵からは盗賊だのハイエナだの罵られるしで、あまり正当な評価がされているとは言い難い。




