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41 旧敵 3

売国奴として討たれた兄のせいで騎士団から追放された令嬢騎士レイシェル。

そんな彼女の前に最強を自負する転生者にして霊能者・ノブが現れ、秘宝探索の旅へと誘う。

敵の刺客となった元騎士団員達に何度も狙われながら、それを退ける二人。

勇者ドリルライガー、元魔王軍の武闘家オウキを仲間にし、二人の旅は続く――。

 エルフとオーガのハーフ・大女エリカ。

 その憤りはわかった。しかし彼女へレイシェルは、微笑みさえ浮かべて話しかける。


「でも大丈夫ですわ。私達にそのような問題はありません。私は由緒ある家の出ですけど、この旅自体はどの貴族家とも無関係ですもの」

 レイシェルが言うと、大女は()()()を向けた。

「本当か?」

「疑います?」

 そうレイシェルに訊かれ、大女は大声を出す。

「疑うよ! 見習いだった時、道具をドックに運んだだけで突き飛ばされた事あるし! 高貴な名門家の機体に部外者が近寄るなって! そんなん、下っ端にわかんないじゃん!」


「まぁ、そんな事が。大変ですのね。我が家の機体を造ってもらった時は、丁寧で親切な職人さん達揃いだったのですけど‥‥」

 レイシェルはクイン家ご用達のエルフ職人達を思い出す。それが彼女の、エルフのイメージなのだが。

 だがノブは大女の言い分に納得しているようだ。

「ふむ。まぁ派閥が多いなら、良心的な連中も、縄張りと利権が第一の連中もいるだろう」


 彼らは知らない。

 この女性の嫌な思い出の一派こそ、クイン家の機体を製造していた最大手ギルドの主力一派である事を。


「客の貴族の奴も、あたしが必死に道具を拾ってたら、汚らわしい魔物は早く消えろって言いやがって‥‥あたしにはどうにもなんないじゃん! チクショウ!」

 昔を思い出し歯軋りするエリカ。

「ふん。そういうのが嫌で街から出たわけか」

 オウキが言うと、エリカはさらにいきりたった。

「お客様は神様だっていうけど、あんな神様ごめんだ! だからそういうのが来ない所で働いてんだ!」


 レイシェルは悲痛な顔を見せる。

「そうでしたの。貴族といっても心まで高貴な人ばかりではありませんものね。皆が私の兄様ほど清廉で気高い人なら、このような話は無くなるでしょうに‥‥」

「良い人だったのか?」

 そう訊くエリカに、レイシェルは昔を思い出しながら遠い目で頷く。

「ええ。我が家の誇りでした。男性としても騎士としても理想の人でしたわ。でも‥‥一人は道を誤り、もう一人は武運つたなく‥‥」

 その言葉に、エリカの怒りも削がれた。

 むしろ共に悲しみさえ感じているようだ。

「死んだのか。そうか。良い人だからって、天も運も味方してくれないもんだよな‥‥」


 彼らは知らない。

 エリカをなじった奴がその兄(長兄の方)だという事を。


「ごめんな。いじけてウチまで嫌な奴になっちゃいけないよな。艦の修理、あたし、全力でやらせてもらうよ」

 エリカが申し出ると、レイシェルはまだ陰を僅かに残しながら、それでも笑顔を見せた。

「はい、お願いしますわ」


 エリカは大きく頷き、嬉しそうに訊いた。

「名前を教えてくれないか」

「はい。私はレイシェル‥‥」

 そう名乗った、その途中。


 槍の穂先が二人の間に突き出された。


 突然の事に驚く二人。

 そこへ冷たい声がかかる。

「レイシェルから離れなさい」


 慌てて後ろに跳び退く、エリカとレイシェル。

 レイシェルは槍を手にする者を見て目を見開いた。

「貴女は!? リュウラ!」


 こくり、とその者は頷く。

 レイシェルより頭一つ低い、小柄な少女。

 ショートカットの青い髪、青い瞳。すらりとした体にガデア騎士団の鎧を纏い、手には長い槍。

 大きな瞳の透き通るかのような視線を、冷たくレイシェルへ向けていた。

「久しぶりねレイシェル。会いたかった」


 一瞬、唇を噛んで。レイシェルは少女を見つめる。

「貴女は‥‥こんな形でも私と戦うんですの?」

 少女――魔法戦士リュウラは小さく頷いた。

「どっちが上なのか、はっきりさせるから」


「おいおい、なんだ、もめ事か? まぁこの町じゃ刃傷沙汰も珍しくはねぇけどよ」

 エルフ作業員の一人が荷物を運びながら、険悪な場面へ呑気に呟く。

 しかし彼は気づいた。

 ボロ布を頭から被り、空き缶や汚れた茣蓙(ござ)を手にした集団がドックに入り込んでいる事に。

「なんだ? この乞食達は」

 作業員が首を傾げる。


 手が足りない時に浮浪者を日雇いとして雇う事は、貧しい下町ではよくある事だ。この町も例外ではない。

 だがその時には現場作業の前に現場監督あたりから一言あるはず。

 作業員が疑問に思っていると、答えが露わになった。

 乞食達がボロ布を脱いだのだ。


 現れたのは、ゴブリンやオーク等の下級の魔物!

 全て武装している。魔王軍の兵だったのだ!


「ゲーッ! 乞食の群れに変装して入り込んできたのか!」

 作業員達がどよめく。

 彼らを横目で見ながら、リュウラは冷たく言った。

「普通の町なら入り口で止められるけど、この町は入れた」


 目を丸くして、レイシェルはエリカに訊く。

「この町、門番はいませんの!?」

「いるよ。けど、よほど怪しいもんじゃなけりゃ別に気にしないしさ」

 困った顔のエリカの頭上でジルコニアが「うへぇ」と溜息をついた。

「この町の住人基準で怪しいかどうかなら、乞食の集団は許容範囲内だわな」


「レイシェルは私がやる。他はやれ」

 リュウラが言うと、魔王軍兵達は雄叫びをあげた。

 オオオ!

 凶悪な魔物達が辺りかまわず暴れ出した。

設定解説


・この町、門番はいませんの!?

実は街の防壁に穴も多いので、もう少し人数が少なければ門を通るまでもなかった。

そもそも「壁」といいながら有刺鉄線を巻いた金網である。

見かけはあまりよろしくないが、町の住人はこれが落ち着くのだ。


壁の穴も住民が日常的に利用していて誰も塞ごうとしない。

一方、町に入れば食われてしまうので、付近の獣や魔物は穴を通ろうとしない。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 大ピンチ! [一言] ……なのはむしろ魔王軍雑魚の方では? 街に入ってきた魔物食べちゃうような連中なんですよね(笑)。
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