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幕間 「神は思った」

 


 何もない空間で1人、神は下界を見渡していた。


「あっははは」


 1人で突然笑いだしては白い空間を右往左往と転げ回る。


「いやぁ、最高だなコイツ」


 そう言って神は笑みを浮かべ再度下界へと視線を移す。


 神には最近新たな趣味ができた。


 それは、あるに1人の人間を観察する事である。


「本当、君を見てると飽きないよ」


 神は誰に言うでもなくそう笑顔で呟く。


 だか、神自身もこの時自覚がなかったが、その笑顔は悲しみの色を孕んでいた。


 そう。神は知っていた。その人間の命がもうすぐ尽きる事を。


「.......」


 何千年と淡々と自らの役割を果たしてきた。

 命尽きた者をまた輪廻に乗せる。ただそれだけの事を何度も、何度も行ってきた。


 そして暇があれば下界を見渡し、退屈しのぎにふける日々


 そんな中、ようやく見ていて飽きない人間を見つけだしたのだがーー


「ちぇ、本当、人間ってやつはどうしてこう簡単に死んじゃうかなぁ」


 1個人に神が興味を抱く事は稀である。

 それは神自身もよく理解していた。


 だから、思う。


 面白くないーーと。


 神にとってはようやく見つけた玩具(おもちゃ)である。


 それが失われるのは非常に惜しい。


 だからと言って寿命を伸ばすというのも美しくない。

 加えてそれは神の世界では明確なルール違反だ。


 だからと、神は考えた。

 この先もこの人間を生かす手段は無いものかと。


 そして神はある事を思いつく。


「異世界に転生させちゃおっかな」


 それは定められたルールに違反する可能性のあるギリギリの発想だった。


 神の仕事の1つは輪廻を円滑に回すこと。1人だけその輪からすくい上げ別の輪廻が巡る世界へと連れていく事は本来であれば有り得ない。


 だが、その人間を特別扱いして良いと思える程には神は人間ーー多田野を気に入っていたのだ。


「よーし、決まりだ。魔法にドラゴンとなんでもありの世界ならこいつも伸び伸び生きてくれるだろう」


 地球という星では多田野の面白さは生かせない。そう神は本気で思っていた。


「ただ転生させるのもつまらないな.......またすぐ死なれても困るし、色々特典をつけとくか」


 そして、また同じ事の起きないよう、神自らの手で魂の(うつわ)とも呼ぶべき物を創り上げていく。


「よし、できた!」


 そうして完成した魂の器。

 その出来に神はうん、うんと頷く。


 だが、しばらく眺めているとある問題を抱えている事に気づいた。


「.......強すぎるな」


 神が創り上げた魂の器は種族<人間>をベースとしたものだ。だかしかし、完成したその器はもはや人間と呼べる代物ではない。


「困ったな.......これじゃあ古代の竜種みたいなもんだ。下手に暴れたら世界そのものが終わってしまう」



 うーんと唸る神。


 だが、それもつかの間、神は(ひらめ)いた。


「うん。やっぱりコレしかないな」


 神はその器に両手をつくと、自らの内に届くよう。強く念じる。


「行け。今日からコイツがお前の主様だ」


 瞬間、創り上げたばかりの魂の器が眩く輝いた。


「そう拗ねるなよ。きっとお前も退屈しないぜ?」


 この場にいるのは神だけである。しかし、確かにこの時、神は誰かと会話をしていた。


「さてと、じゃあ今から僕が言うことをよーく聞けよ?」


 そうして神は目には見えない何かに命令を下す。


 次の世界で多田野としての記憶を思い出すまでは力を制限すること。そして記憶が戻った際には逆に進化への手引きをする事。


 無論、進化への条件として、悪戯な項目を盛り込んだ。


 その人間にとって試練となるように。


 神は思う。これは面白い事になると.......。


「なんでこんな手の込んだ真似をするのかって? そりゃ面白いからさ」


 神はそう言ってケタケタと笑う。


「言ってしまえばこれは僕とアイツの勝負なのさ。僕は意地でもあいつを女に惚れされるよ」


 生物が恋に落ちる瞬間が神は好きだった。

 だが、今まで自分の手にかかれば誰だってコロッと心を奪われていく。


「それじゃあつまらないのさ。その点あいつは手強いぞぉ」


 神はこれから先を想像できないのが何より嬉しかった。アイツならばもしかして、僕と勝負になるかもしれないと。


 元は恋愛を司る神がここまで言うのだ。それだけでその人間のすごさが見て取れるだろう。


「じゃ、そろそろ時間だね」


 神は嬉しいような悲しいような笑顔を浮かべてそう呟く。


 そう。時間だ。


 命の灯火が消える時がやってきたーー


「ふふ。最後まで君らしいな」


 神がそう呟いた瞬間、創造された霊の器が一層光を放つ。




「じゃあ、頼んだぜーー<大賢者>さんよ」




 伝説級(レジェンド)スキルーー大賢者。



 それがベル・ベートが生まれると同時に産声をあげる、人の身にはすぎたスキルの名前であるーー。





ありがたいことに感想をいただきましたので燃え盛るモチベで幕間を書きました。


続きが気になる! と思ってくださった方はブクマしていただけたら恐悦至極。


次話は予定通り今日の23時過ぎに投稿予定です。

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