46話 予感
残り二試合は、放課後に行われた。
積極的にバッジを集める方向で、僕たちは攻勢に出た。
しかし、なかなか思うようにいかなくて……
集めることができたバッジは、たったの二枚。
目標の40枚には程遠い。
やっぱり、朝に10枚を失ったのは痛い。
とはいえ、あの場合、他にどうしようもないから……
過ぎたことを後悔するよりも、先のことを考えないといけないか。
ただ、先のことを考えるといっても、すでにたくさんのバッジを集めているパーティーに、後先考えずに戦闘をしかけるわけにはいかない。
たくさんのバッジを集めているということは、それだけ、多くの敵を撃破してきたという証なのだから。
もちろん、いつまでも静観しているつもりはない。
いずれ、しかけることになるだろう。
ただ、万全を期して挑みたい。
動く時は慎重に。
そんな結論に至るものの……
「甘い。このままだと、いずれタイムリミットが訪れる」
試合終了後の会議……先日と同じ店に集まり、今後のことについて話し合っていたんだけど……
僕の案に、フロムソフトさんが反対した。
「準備は大事。でも、これ以上、時間はかけられない。バッジを大量に集めているパーティーを狙うべき」
「あたしも、今回は賛成かしら」
セリカが、フロムソフトさんに続いた。
「残り28枚。ユウキの予想通りなら、まだ時間はあるだろうけど……のんびりしていられるような状況じゃないわ。のんびり準備をしてたら間に合わない」
「しかし、準備を怠ることで、現状よりもひどいことになる可能性もありますが?」
リリィは、僕の意見に賛成してくれるらしい。
そう言って、フォローをしてくれるものの……
「確かに、リスクはある。でも、リスクを避けて得られるリターンは少ない」
フロムソフトさんは自分の意見を曲げない。
「時に、リスクを犯さないといけない。決して、100%安全な道なんてない……その点は、納得できるわね」
「ん」
二対ニ。
僕たちの間で、意見が割れてしまう。
こういう時は、リーダーである僕が決めるべきなんだろうけど……
うーん、どうしたものかな?
これ、どちらの意見も正しいんだよね。
僕は、自分の意見が正しいと思っているけれど……
でも、フロムソフトさんの言うことも納得できる。
時にリスクを犯さないと、なにも得られないことはあるのだから。
さて、どうするべきか?
「……うん。じゃあ、フロムソフトさんの言う通りにしよう」
「ん。懸命な判断」
今回は、フロムソフトさんの意見を採用することにした。
理由は色々あるんだけど……
一番は、みんなが抱き始めている焦りと危機感をなんとかしたい、というものだ。
やっぱり、ハッジを10枚を失ったことは痛い。
そのことで、みんなは……僕も含めて、焦りや危機感を覚えている。
この現状が続いたら、どこかでさらに致命的なミスを犯しかねない。
それを解決するためには、やはり、バッジを得て安心感を得ることが一番だろう。
もちろん、リスクはあるけれど……今は、それでも前に進むべきだと判断した。
「じゃあ、明日はバッジをたくさん持っているパーティーを狙うとして……どこがいいかな?」
今日まで、情報をかき集めてきたおかげで、他のパーティーの動向は大体把握している。
「ん。ストレガーのパーティーがいい、と提案する」
「ストレガー先輩のところか……」
アクルム・ストレガー。
三年の先輩で、序列入りはしていないものの、とても優秀な魔法使いらしい。この前、リリィに教えてもらったので、一応、顔もわかる。
直接、話をしたことはないから、その性格まではわからないけれど……やや、素行に難があるらしい。
「ストレガーさまのパーティーは、20枚と半分ほどを集めているらしいですわ。もっとも、本日の二回戦の時点の情報なので、多少、前後しているかもしれませんが」
「まあ、それでも20枚は確定、ってことでいいんじゃない?」
「20枚、全部もらう」
全部ときたか。
フロムソフトさんって、けっこう過激?
「じゃあ、作戦を考えようか。ストレガー先輩のパーティーメンバーと、いつも待機している場所は判明しているんだっけ?」
「はい。そのことですが……」
――――――――――
作戦を練ること、おおよそ1時間。
うまくいけば成功するかもしれない……くらいの作戦を練り上げて、今日の作戦会議は終了することにした。
もう時間も遅いし、これ以上は明日に差し支えてしまうからだ。
「じゃあ、これで解散にしようか」
「もうちょっと、話し合った方がいいんじゃない? いまいち、作戦を詰めきれていない気がするんだけど……」
「良い案は思い浮かびそう?」
「それは……」
「ダメな時はダメだから、無理をすることないよ。それに、現状の作戦でも、それなりに効果はあると思う」
AとBの二つのチームに別れる。
Aが陽動をしかけて、あらかじめ罠を設置しておいた場所に、敵のパーティーを誘導する。
もちろん、敵もバカじゃないだろうから、罠であることは気づかれるだろう。気づかれなければ、それはそれでよしだけど。
罠に気がついた敵は、Aチームの追撃を諦めるだろう。あるいは、ルートを迂回して追撃しようとするだろう。
その際、敵のパーティーは、追撃を諦めるか続けるか、話し合うはずだ。
ほんのわずかな時間だろうけど、足が止まる。
そこを狙い、Bチームが挟撃をしかける。
不確定要素が多いけど、現状では、まあまあの作戦だと思う。
「Aチームは、僕とセリカ。Bチームは、リリィとフロムソフトさん。仕掛けるタイミングは、おそらく、放課後になるであろう二戦目。これでいいね?」
改めて作戦を確認すると、問題ないというように、みんなが頷いた。
「よし、じゃあ、明日はがんばろう!」
――――――――――
作戦会議が終わり、僕たちは店を後にした。
「また明日」
「またね」
フロムソフトさんとセリカと別れる。
そのまま、僕はリリィと一緒に家に……戻らない。
くるりと踵を返して、家と反対方向を向く。
「ユウキさま? どうしたのですか?」
「ごめん。ちょっと用事があるから、リリィは先に帰っていて」
「……わかりました」
リリィと別れて、僕は……そっと、フロムソフトさんの後を追いかけた。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
ただの作戦回……と思いきや、最後にちょっとしたことを。
どういう意味なのか? 次回もお付き合いいただければ。
次の更新は、8日になります。




