39話 今後は?
右から左から生徒たちが攻撃をしかけてくる。なんとなく、生者に群がるゾンビを連想した。そんな感じで突撃してくるんだ。
そんな生徒たちを迎撃しながら、僕たちは講堂の外に出た。
「うわっ」
振り返ると、講堂はなかなかカオスな状況になっていた。
あふれかえる怒号。
飛び交う魔法。
そして、次々と倒れていく生徒たち。
早めに飛び出して正解だった。
「次、どうするの!?」
「最初から無理をしても仕方ないよ。今は、ここから離れて身を隠そう!」
「勝てる?」
「バッジは、まだ足りませんが……」
「大丈夫!」
僕が断言すると、とりあえず納得してくれたみたいだ。
みんな、僕に続いて、講堂から離れて行った。
――――――――――
講堂を離れた僕たちは、中庭を突き抜けて、校舎の裏手にあるグラウンドに移動した。
さらに、用具室の裏に隠れて、身を潜める。
ここなら、他に身を隠す場所はないから、誰かが来たらすぐにわかる。
広さは申し分ないから、逃げることも迎え撃つことも可能。
まずは、ここで時間まで逃げ延びることにしよう。
「で?」
「うん?」
ひとまず落ち着いたところで、セリカがこちらに視線を向けた。
問いかけるような目だ。
「こんなところで、のんびり隠れる理由は?」
「ん。バッジ、集めないと」
「講堂から出たグループは、ほとんどいませんが……」
「いや、これで正解だよ。講堂に残って、あんな乱闘に巻き込まれる方が危ないって」
「あれくらいで、あたしがどうにかなると思っているわけ?」
「思ってないよ? リリィもフロムソフトさんも、普通に乗り切れると思う」
「では、どうして?」
「えっとね……これは、焦る必要はないんだ。最初は様子を見守って、今後の作戦を練って、予定をきっちりと立てた方がいいんだよ」
キティ先生の説明を聞きながら、あれこれ考えて……そして、出した結論は、『ゆっくりと焦らない』……だ。
「クリアーに必要なバッジは……40枚」
本当は、一人10枚でいいんだけど……とある可能性に気づいてほしくないから、あえて40枚と言うことにした。
「講堂に参加者全員が集められていたから、バッジを集める絶好のチャンス。いつ予選が終わるかわからないから、最初の機会を逃すことなく、できる限り集めておきたい……って、大体の人は、そう思うはず。でも、それはむしろ悪手なんだよね」
「どうしてでしょうか?」
「最初の一戦で、いきなりバッジを集めたらどうなると思う?」
「そりゃ、楽になるでしょ。もうクリアーしたようなもんじゃない」
「違うよ。リスクが増えるだけなんだ」
「どういうこと?」
僕の考えをみんなに話す。
この予選の特徴は、予選が終了するまで敗退者が出ないということだ。
バッジを奪われても、奪い返せばいい。
バッジを10枚集めても、そこでクリアーにならない。
予選終了を待たないといけない。
最初に、全てのバッジを揃えたらどうなるか?
確かに集める必要はなくなるけど、その分、敵が増える。
仮に、40枚ぴったり揃えたとしよう。全体の5分の1だ。
それだけの数を一つのパーティーが独占している。
狙われないわけがない。
バッジを大量に確保したら、その分、他のパーティーから狙われるリスクが高くなる。
なので、対策は二つ。
予選の時間を見極めて、終了近くになったところでバッジを確保する。
あるいは、他のパーティーに狙われても十分に守り切るだけの、堅牢な砦を用意する。
予選の時間を見極めることは難しいから、後者が現実的かもしれない。
「なるほど……確かに、バッジを集めれば集めるほどリスクが増しますね」
「全部撃退すればいいじゃない」
「ん」
「呑気に様子を見てて、時間切れになったら笑えないわよ? 予選、今日で終わる可能性もあるでしょ」
「それはないよ」
これも、根拠がある。
いきなり予選を始めたことだ。
あの乱戦で、多くのバッジが動いただろう。たぶん、すでに40枚確保しているパーティーもあると思う。逆に、ゼロになったパーティーも。
それなのに、仮に今日で終わりだとしたら?
勝負はすぐに決まってしまう。
あのキティ先生が発案者ならば、こんなつまらない展開を用意するわけがない。
あの人、とことんひねくれているからなあ。
きっと、何日にも渡って、僕たちにギリギリの攻防戦を期待しているんだろう。
それと、理由はもう一つある。
「予選の終了時間は、だいたい、予想がついているよ」
「えっ!? それ、どういうこと?」
リリィも、フロムソフトさんも驚いた顔をしていた。
「考えれば、誰にでもわかることだよ。たぶん、他にも気づいている人はいると思う」
「どういうことですか? 私には、予想なんてつきませんが……」
「これは、選抜戦の出場者を決める試合……って言ってもいいのかな? とにかく、そのために試合ということがポイントなんだ。仮に、今試合を終了したとする。すると、どうなる?」
「バッジを集めてるパーティーが予選を突破して……あっ」
どうやら、セリカは気づいたらしい。
「今の時点でバッジを揃えているパーティーなんて、いくつあるのかな? たぶん、一つあればいい方だと思うよ」
「確かに……」
「ん。すぐに揃えるのは難しい」
「うん。そのことを考えると、すぐに試合が終わることはない。で、逆算することで、試合終了の時もわかる」
「逆算、ですか?」
「合格条件を満たした者が20名揃う……バッジは奪い返すことも可能だから、こんな条件が揃う時なんて、なかなかないよね? だから、合格者が20名に達した時点で試合終了になると思うよ」
「なるほどね……でも、そんなこと、どうやって教師陣は判断するの?」
「キティ先生が言ってたじゃない。不正を許さないために監視しているぞ、って。あれ、不正だけじゃなくて、バッジの数もカウントしているんだと思うよ」
「なるほど」
「だから、すぐに試合が終了することはない。まずは、様子を見て、臨機応変に対応。あと、守り切るために砦のようなところを確保しておきたい。それが僕の意見なんだけど……どうかな?」
みんなの顔を見る。
みんな、一斉にコクリと頷いた。
「ええ、問題ないわ。あんたに任せた」
「ユウキさまの作戦に従いますわ」
「ん」
「よし、じゃあがんばろう!」
……こうして、波乱の予選が始まった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
最初の波が落ち着いた感じ、という回でしょうか。
翌日から、また色々と動きがあります。
お付き合いいただけたらうれしいです。
次は、22日更新の予定です。




