40話 1日目、終了
日が傾いて、空が赤く染まる。
そんな中、僕たちは、校舎の一階にある空き教室に移動していた。
廊下の突き当りにあるため、基本的に、入り口は一つ。そこを守ればいい。
使われていない椅子や机でバリケードを組むこともできる。壁のように積んで、そこに魔法を上乗せすれば、そこそこ保つだろう。
逃げ道がないように見えるけど、そんなことはない。
いざという時は、一階なので、校舎裏に面した窓から外に逃げればいい。
そんな理由から、ひとまずの陣地を空き教室にしたんだ。
「そろそろ、でしょうか?」
「たぶん」
壁にかけられている時計を見る。
時刻は18時。
17時から、本日三度目の試合が開始されたから……
「……予選に参加している生徒に告げる。只今をもって、本日、最後の試合は終了とするのじゃ。繰り返すぞ。本日の試合は終了じゃ。寮に帰ってよし。それと、以降のバッジの移動は禁止されておるから、気をつけるように。きちんと見ておるからの?」
そんな放送が流れて、本日の試合が終了した。
それを聞いて、みんな、一斉に小さな吐息をこぼした。
「じっと隠れているのって、けっこう疲れるね。それに、緊張する」
「そうですね。最初は、かくれんぼのようなドキドキ感がありましたが、何度も続くと、さすがに」
「別に問題ない」
「フロムって、タフなのね。その度胸、ちょっと欲しいわ」
「セリカも緊張した?」
「さすがにするわよ。っていうか、じっと待っているだけなんて、性に合わないのよね。どうせなら、自分たちの方から攻めたいわ」
セリカの性格を考えると、そうなるよね。
でも、初日から飛ばしていたら、さっき説明した通り、色々と大変なことになるから我慢してほしい。
本格的に攻勢に出るのは、もう少し様子を見てからだ。
「とりあえず、明日のことについて話そうか」
「明日も様子見なのかしら?」
「うーん……その前に、今日、どれだけバッジを手に入れたか数えておこうか。みんな、バッジを出して」
みんなで集めたバッジを数える。
数は、ちょうど二十だ。
「二十か……けっこう集めていたんだ」
「目標の半分ですね」
「良いペースじゃない? 多すぎず少なすぎず……ユウキの思い通りの数じゃない?」
「そうだね……うん、良い感じだと思う」
本当は、十五くらい獲得できればいいな、なんて思っていたんだけど……
期待よりも良い結果になった。
一戦目で、みんなががんばってくれたおかげだ。感謝。
これくらいの数なら、他勢力から目の敵にされることはないだろうし……ある程度は狙われるだろうけど、そこまでひどいことにならないはず……例え、明日で終わるとしても、一日で巻き返しが可能だ。
「明日はどうする?」
「そうだね……」
フロムソフトさんの問いかけに、うーんと考える。
攻勢に打って出るか、守りを固めるか。
「みんなはどう思う? 僕としては、もう少し様子を見ておきたいんだけど」
どのパーティーがどれだけのバッジを獲得しているのか。どこに陣地を構えているのか。パーティーの組み合わせは?
明日一日を使い、それを調べておきたい。
そういう事前の調査は必須だと思っている。
下手にクリアーラインを突破したパーティーに仕掛けたら、死にものぐるいで反撃されるだろう。それはちょっとイヤだ。
少数しか確保していないパーティーに仕掛けても、同じ結果になると思う。
だから、狙うのは僕たちのパーティーと同じような中間のところ。
そういうところなら、相手もそこまで張り詰めていないだろうから、少数ならすんなりと確保できると思う。
それを繰り返して、必要数を確保する……それが、僕の考えだ。
そのことを話した上で、みんなの意見を求める。
「そうですね……私は、ユウキさまの案に賛成ですわ。無理をせず、堅実に稼いでいった方がいいのではないかと」
「どちらかというと反対ね。ある程度、余裕は欲しいから、必要数を確保するだけじゃ足りないわ。様子を見るのはいいとしても、最終的には、40以上……50~60は確保しておきたいところね」
「ん。攻勢に出る。攻撃は最大の防御」
意見が二つに割れてしまった。
さて、どうしようか?
多数決で決める?
でも、多数決って、結局は数の暴力なんだよね。否定された方は、じゃあそうします、なんてすんなりと気持ちの切り替えはできない。
必ず、しこりが残る。
4人が空中分解したら、勝てるものも勝てなくなる。
そういう可能性がある方法は、できるだけ避けたい。
なら、あみだくじで決める?
いやいや、運任せなんて、多数決以上にひどい結果を招きかねない。
運なんて曖昧なもので大事なことを決めてしまうなんて、普通に考えてない。ありえないし。
一番いいのは、リーダーを決めて、判断を委ねてしまうことなんだけど……
リーダー、誰なんだろう?
そこら辺の話をしていない……というかするヒマがなかった……から、誰の意見を一番にするべきなのやら。
「では、ユウキさま、決めてください」
「ん。任せた」
って、あれ?
「ちょっと待って。僕が決めていいの? そういうのは、リーダーがやるべきことじゃ……?」
「だから、ユウキがこのパーティーのリーダーでしょ?」
「……いつの間に?」
「私は、リーダーなどという器ではありませんし」
「あたしがやってもいいんだけど、状況判断はユウキの方が得意そうだから、任せるわ」
「そういうことは苦手」
「いいの?」
みんな、同時にコクリと頷いた。
「えっと……じゃあ、がんばるよ」
適当に考えた、なんてことはないだろう。
みんなの信を預かった。
なら、それに応えるように、しっかりしないといけない。
「じゃあ、明日についてだけど……」
少し考えて、答えを出す。
「様子を見る、っていうことで」
「はい。わかりました」
「ただ、確実にいける、と判断した時は攻勢に出よう。そんなチャンスを逃すなんてもったいないし、セリカの言う通り、余裕を持っておいた方がいいからね」
「了解。腕が鳴るわ」
「まだ、攻勢に出るって決まったわけじゃないからね? 基本的に、様子を見て情報を探る、っていうことで。明後日については、また明日、決めよう」
「ん」
話をしているうちに、どんどん教室が暗くなってきた。
時計を見ると、18時半。
夏が近づいて、日の出が長くなっているとはいえ、そろそろ完全に日が落ちてしまう。
今日はこんなところかな?
「明日の方針はこれでいいとして、他になにかある?」
みんなは少し考えて、それぞれ首を横に振る。
「じゃあ、今日はこれまでにしておこうか。明日に備えて、早く休んで、英気を養っておこう」
「ええ、そうですね」
「……っと、そうだった」
一つ、大事なことを言い忘れていた。
不思議そうな顔をするみんなに、僕はとある予想を口にする。
「明日の朝なんだけど……」
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
ようやく40話に……投稿して、一ヶ月半くらいでしょうか? 二ヶ月?
色々と拙いですが、マイペースにがんばっていきたいと思います。
これからもお付き合いいただけたらうれしいです。
次は、26日更新の予定です。




