29話 決着・2
いつも読んでいただき、ありがとうございます。
コンコン、と扉をノックする音が響いた。
「はい?」
「ユウキさま。私ですが……今、よろしいですか?」
「うん、どうぞ」
「失礼します」
扉が開いて、リリィが現れた。
ただ、リリィだけじゃなくて、もう一人、意外な人物が……
「クロラインさん?」
リリィの後ろに、クロラインさんの姿もあった。
「どうしたの?」
「なによ、あたしが来たら悪い?」
「いや、そんなことはないけど……」
なんの用だろう? ということは気になる。
リリィの方は、なんとなく予想がつくけれど……
「ユウキさま、おめでとうございます♪」
思っていた通りというか、リリィは僕の勝利を喜んでくれた。
リリィは、まるで自分のことのように、すごくうれしそうにしていた。
「ちょっと、マクスウェルさん。そういうことをあたしの前で言われると、すごい複雑な気分になるんだけど……」
「あっ……す、すいません。ユウキさまが勝利したことがうれしくて、つい」
「まあ、いいけどね。負けたことは事実だし……まさか、あんな手を使ってくるなんて、思ってもいなかったわ」
「あの時も言ったけど、あれは、半分賭けだからね。運が良かった、っていうところもあったと思うよ」
「運も実力のうちよ。互角の者同士が戦った場合、最後は運が左右する、っていう話もあるし。そういう謙遜めいたことは言わないで、あたしに勝ったことをもっと誇りなさい。でないと、あたしが惨めじゃない」
「あ、ごめん。そういうつもりじゃ……」
「わかってる。今のはちょっと意地悪だったわね」
自分で訂正して、クロラインさんは苦笑した。
こうして、じっくりと話して初めてわかったんだけど……
クロラインさんは、けっこう素直というか、まっすぐな子なのかもしれない。
「あたしが言うのも変だけど……おめでと」
「うん、ありがとう」
互いの健闘を称えるように、僕たちは笑みを交わした。
「ところで、ユウキさま」
「うん?」
「このような時に、水を差すみたいで申しわけないのですが、私、気になっていて……勝者の権利はどうされるのですか?」
……あっ。そういえば、そんなものがあったんだっけ。
「クロラインさんが勝利した場合は、古代魔法を教える……しかし、ユウキさまが勝利した場合は、どうなるのですか? まだ、決めていないように思えましたが……ひょっとして、もう決めているのですか?」
「いや。なにも決めていないよ」
初めての決闘で……しかも、相手が序列三位のクロラインさんということで、おもいきり緊張してしまい、報酬なんて考える余裕はなかった。
「特に決めてなかったんだけど、こういう場合、どうなるの? 今から決めてもいいの? なんか、後出しじゃんけんみたいで気が引けるんだけど……」
「それは、両者が決めることですが……クロラインさんは、どうされますか?」
「あたしは問題ないわ。勝者は、正当な権利を受け取らないと」
「ということなので、せっかくですし、今、報酬を決めてしまってはいかがでしょう? こういうことは、後々に回すよりも、できる時に決めてしまった方がよろしいかと」
「うーん、そうだなあ」
勝者の権利、勝者の権利……
無理のない常識的な範囲でなら、なんでも……
考えてみるけれど、なかなか思い浮かばない。
勉強を教えてもらう? それは、すでにリリィにお願いしているし……
魔法を教えてもらう? 日々の勉強で手一杯なのに、そこまでは無理。いずれお願いしたいかもしれないけど、今はパスだ。
なにか物をもらう、お金をもらう……即物的すぎる。
そうなると、なにがいいんだろう?
コレだ、というものが思い浮かばない。
……いや、待てよ?
一つだけ、欲しいものというか、クロラインさんにお願いしたいことがあった。
「うん、決めた」
「決まったのですか?」
「なにをさせるつもり……?」
どことなく、わくわくしているリリィ。
警戒しているような、ビクビクしているようなクロラインさん。
そんな二人に、僕は笑顔で告げる。
「僕の友だちになってくれないかな?」
「……え?」
「だから、友だちになってほしいな」
それが、僕がクロラインさんに願うことだ。
「友だち、って……そ、そんなことでいいの?」
「うん。同じクラスだし、よくよく話してみたら、クロラインさんは楽しい人だから……ぜひ」
「そ、そんな勝者の特権、聞いたことないわ……」
「ダメかな?」
「ダメっていうわけじゃないけど……っていうか、あたしには断る権利なんてないし……でもでも……」
いまいち、クロラインさんの態度が煮え切らない。どうしたんだろう?
不思議に思っていると、リリィがくすくすと笑う。
「本当に、クロラインさんは素直じゃありませんね」
「え? どういうこと?」
「本心では、ユウキさまの申し出を受けたくて受けたくて仕方ないのでは?」
「そ、そそそ、そんなことないしっ」
「そうですか? ですが、ユウキさまとケンカになったことを後悔しているように、この前、ため息を……」
「してないからっ!」
慌てたような感じでクロラインさんが叫んで、そこで話は終わってしまう。
クロラインさんの本音はわからないままだけど……少なくとも、嫌われていない、って解釈してもいいのかな?
「ど、どうして、マクスウェルさんにそんなことがわかるのよっ?」
「私も、ユウキさまともっともっと仲良くなりたいと思っていますから。同じ考えを持つ者同士、なんとなくわかります」
「そ、それじゃあ、あたしがこいつと仲良くなりたいみたいじゃない!」
「その通りですよね?」
「くぅーーーっ!!!」
図星……でいいのかな?
クロラインさんの顔が、これ以上ないくらいに赤くなる。
ちょっとかわいいかもしれない。意外な一面を見た気分だ。
「……まあ、あんたがどうしても、っていうなら受けてあげてもいいわ」
「どうしても」
「うぐっ、即答なんて……なんで、あたしと友だちになりたいわけ?」
少しだけいつもの調子を取り戻して、クロラインさんが尋ねてきた。
本当に不思議らしく、頭の上に疑問符が浮いている。
「うーん……強いていうなら、勘?」
「勘、って……そんな理由?」
「クロラインさんとなら、良い関係を築いていけそうな気がして。それと、昨日の敵は今日の友っていうし、強敵と書いて『とも』と呼ぶし……まあ、そんな感じで、クロラインさんと友だちになりたいな、って思ったんだ。ダメかな?」
「……好きにしたら」
そっけなく言いながらも、クロラインさんはそっと手を差し出してきた。
その意味を理解して、僕は自然と笑顔になる。
「これからよろしくね、クロラインさん」
「……一応、よろしくしてあげる」
僕たちは手を重ね合わせて……
ここに、新しい絆が育まれるのだった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
今回から隔日更新になります。申しわけありません。
ペースは落ちますが、更新は必ず続けるので、お付き合いいただければと思います。
よろしくお願いします。
次の更新は4日になります。




