パート24
「……なーんてことでも思ってるのかね、ウーゴは……」
明かりも何もない暗闇で、傷口に白い剣を当てながら一人呟いた。
今頃、誰も僕みたいな人がいなくて皆困っているはず。僕の予想なら、シャインの能力にある『擬人化』を発動してくれてるはず。僕みたいにこの世界に順応出来るように設定してあるから、この先はシャインと斉藤さんだけでも切りぬけるはず。
問題なのは、この脇腹の傷だ。
「イテテ……。やっぱりただ落ちるだけにすれば良かったな……」
大きな傷を負ったものの、とりあえずは僕が考えていたシナリオ通りに進んだ。
斉藤さんには悪いけどあの時、あの死んだはずのサソリは実はとどめを刺してなかった。まだ微かに生きてるようにまでダメージを与えただけで、少しの間気絶していただけだった。
正直、調整が難しかったから本当に死なせてしまったのか不安だった。けれど、攻撃がまだ出来る程度には大丈夫だったらしく、斉藤さんを庇って僕は傷を負いながら崖から落ちた演技をする事に成功した。
まあ、斉藤さんには少しトラウマが出来てしまったかもしれないが……。
「けど、そうでもしないとあいつから逃げれなかったしな……」
あいつとは、ウーゴの事だった。
あのウーゴの心を読む力。創造で作った武器と同じ造られた能力なのか、はたまた最初からある能力なのか。どちらにしろ、ウーゴの近くにいればそれはもうずっと監視されてるのと同じだ。
それに、この世界から抜け出そうとするなら、呼び出された目標を達成するか、この世界を壊すかのどっちかだと考えている。もし後者なら、早いうちにウーゴの元から離れた方が得策だ。
とはいったものの、サソリから受けたダメージは予想以上に大きかった。挙句の当てには、尻尾の先には毒があったみたいで、未だに体がしびれて動かない。傷の方は白い剣の力でなんとか治癒してるけど、毒のせいなのか時間がかかってる。
「一難去ってまた一難……ってのが、よくあるパターンだけど……」
死んだと思ったあるキャラが、実は陰でこっそり生きてるというのをしてみたけど、そういうのって大概また死にそうな目に遭う。しかも毒のせいで集中出来ないから、輝きの壁を発動することすら出来ない。もし、こんな時にあのサソリとかに会ったら……。
「……………あ、やばい。眠くなってきた」
モンスターが来る来ない以前に、だんだんと意識を保つ事が難しくなってきた。このまま眠ってしまっても死にはしないけど、自分の知らない間に死んでいるってのだけは一番嫌だ。
多分、毒と大量出血のせいだ。脇腹からは未だに血が出ていて、僕の体温をどんどん奪っている。
(さすがに……きついな……)
不思議と痛みは感じられない。毒のおかげなのか、はたまた感覚が鈍ってきているのか。どちらにしろ、このままだと危ない事は分かった。
しかも最悪な事に、こっちに近づいてくる足音が聞こえてきた。この足音、確実にさっきのサソリと同じ足音だ。
「…………やっぱり、な」
暗闇から二つの光る眼。逃げる事は出来ないこの状況で、僕は覚悟を決めて薄れゆく意識に飲み込まれた。




