パート 参
村長からこの世界の話を聞いた私は、これから先どうするかを考えながら、皆のいる部屋へと向かっていた。
おそらくだけど、村長から聞いた限りだと元の世界に帰る方法はまだ見つけられない。もっと情報が必要だった。
こんな時、野中君だったら何か思いつくかもしれないけど……。
「……はっ。ダメダメ、野中君ばっかりに頼ったらダメだよ」
ただでさえ彼は、今でも外で私たちの為に戦っている。
そんな彼にこれ以上負担を掛けさせるわけにはいかない。ここは何とかして私たちだけで考えないと。
ウーゴと一緒に部屋に戻ると、すぐに友達の鈴木沙弥と亜宮原蘭が話しかけてくれた。
「瑠花ちゃん、どこ行ってたの?」
「ちょっとね……。村長さんに、この世界の事について聞いてきた所」
私がそう言うと、二人は少し顔をしかめた。
「瑠花ちゃんは、もうこれが現実って受け止めてるの……?」
「どうせ夢に決まってるよ! こんな中二病みたいな世界、あるわけないって!」
沙弥ちゃんはまだ慣れない環境、というか異世界に怯えてるみたいで、反対に蘭ちゃんはまだ異世界を受け入れていなかった。
正直、私も野中君がいなかったら、まだこんな風に混乱していると思う。
それでもこれはもう現実だと、私は受け入れてるんだから。私がみんなの事をまとめないと。
「沙弥ちゃん、蘭ちゃん。これはもう現実なんだよ。もう、どうにもならないんだよ」
「瑠花……アンタ、もしかして中二病のあいつに何か言われたの?」
「中二病じゃなくて野中君だよ、蘭ちゃん」
本当だったらもっと叱ってたけど、今はその時間すら惜しい。
「みんな、ちょっと聞いてくれる?」
私は部屋にいたみんなに声をかける。男子の二人はすぐに話をやめて、私の方を見てくれた。
「なんだよ委員長」
うちのクラスで男子をまとめてくれている森田茂が、私に向けてめんどくさそうな視線を向けてきた。
「今のうちに、これからどうするか決めたいと思うんだ」
「ああ? そんなの、全部あいつに任せればいいじゃねえか。ここはあいつのあだ名通りの世界じゃねえか」
そう言って、さっきまで喋っていた赤木一樹と一緒に笑い始める。
それも見て、とうとう私の我慢していた堪忍袋の緒が切れた。
「いい加減にしなよ! 野中君は今も命を張って、私たちの為に戦ってくれるんだよ!?」
「そんなの、別に俺らが頼んだわけじゃねえしな」
「だったら今すぐ野中君の代わりに戦ってくる!?」
その一言で、森田君は黙ってしまった。正直、私だって無理だって分かってる。
だからこそ、今私たちでも出来ることをしないと。
……だから、少しでも野中君を助けられるようにしないといけないんだ。
それから私は、さっき村長から聞いてきた話をみんなにして、これからどうするかの話をし始めた。
少しでも彼の負担を減らす為に。みんなで、元の世界に戻れるように。




