パート 壱
「………………」
野中君が外にいるモンスターを倒しに行ってから、どのくらい経っただろうか。
時計とかケータイとかは全て野中君の言う、元の世界に置いてきてしまっているから、時間間隔がまったくつかめない。
「彼の事が、心配なんですか?」
「ウーゴ……」
小さな妖精のウーゴが、私の肩に乗ってきた。
確かに彼女(?)の言うとおり、彼がはたしてきちんと帰ってくるのか不安だった。
けれど野中君の機転が無かったら私たちはこの村に入る事は出来なかっただろうし、それに彼以外に戦える人はいないのも事実なのだ。
だから、仕方ないとしか言えないんだけど……。
「でも……」
何も出来なくても、それでも何か私にも出来る事があるはず。
その為には、行動しないと。
「その調子ですよ、斉藤瑠花さん」
「……そういえば、ウーゴって人の心が読めたんだっけ」
なんとなくだけど、野中君の気持ちが分かる気がする。こうもあっさりと自分の心を読まれたりしたら、うざったいにもほどがあるだろう。
けど今はそんな事にも気にせず、動こう。
とりあえずは、まずこの世界を知らないと。
「あの、すみません」
「ん?」
近くにいた、さっき門番をしていた人に声をかける。
「実は、今のこの世界について知りたいんですけど……」
「何故だ?」
「えっと、それは……」
うう、うっかりしてた。今の私たちは旅人という扱いになってるんだった。それなら、この世界について知っていて当たり前のはず。
どうやって、誤魔化そうか……。
「…………それなら、村長に聞いた方がいいだろう。こっちだ」
「え?」
何か言い訳を考えていたら、突然そう言ってきたので驚いた。
一体、どうして……。
「……もしかして、今のウーゴのおかげ?」
「私は皆さんのサポーター役として存在している身です。これぐらいは当然です」
「………………」
何をしたのか分からないけど、とりあえずウーゴのおかげでこの世界について知れるみたいだった。
私は、村長の所まで案内してもらいながら、心の中でありがとうと呟いた。




