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翼のない俺たちに幸せの粉を‼︎  作者: 織部りお
第3.5章 金髪のお団子

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42話 私はセーリエ


「これでよしっと」


 私は鏡を見ながら、自慢の金髪を纏め上げ、綺麗なお団子を作った。

 我ながら上手くできている。小さな頃からこの髪型だったため、もうかなり慣れている。

 

 私はセーリエ。天界騎士団第二部隊に所属している、戦う女の子。

 チャームポイントはお団子。毎日形を保たせるために、早起きして髪を結っている。

 昨日、私はかなり大きな事件に巻き込まれた。「粉持ち」が1人攫われたのだ。私はその現場に居た。でも、何もできなかった。


 噂に聞いていた「粉持ち」のエフィルロ。記憶操作の魔法を使うことができる天使で、天界のルールが変わった際にどこかに逃げ、消息不明だった。

 そんな、大天使ですら恐れている天使が「粉持ち」を攫ったのだ。そしてその日は、たまたま私が「粉持ち」の牢屋を護衛をしていた。

 正直、自分の力を過信していた。人数もいたから捕えられると、増援を呼ばなかったのが1番の判断ミスだったと思う。


 気づいた時には、もう逃げられた後だった。


「団長と面談かあ。絶対怒られる……」


 今日は、団長のミカエルさんとの面談がある。おそらく、昨日の件について根掘り葉掘り聞かれるのだろう。

 昨日の件とはいっても、エフィルロと「粉持ち」を逃したことがメインではないと思う。おそらく、私の同期である、シルエトのことを聞かれるはずだ。

 昨日、シルエトは私たち天界騎士団を、いや、天界全体を裏切った。


 私はゲートを開く。職場である、コハクリアへ向かうために。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 シルエトは、私の同期で、天界騎士団第二部隊の隊長を勤めていた天使だ。

 私の魔法は気配を消せる。シルエトは姿を消せる。つまり、同時に使用すれば、完全に消えることができる。

 だから私たちは、戦場では相棒だった。2人で戦えば、倒せない死神なんていなかった。

 

 シルエトは私の相棒で、戦友。もしかしたら、親友と言ってもいいかもしれない。

 いや、私はもっと、それ以上に。


「入れ」


「あ……はい!」


 部屋のドアをノックした後、余計なことを考えてしまって反応が遅れた。

 私はドアノブに手をかける。緊張する。団長がいるのだ。無理もない。


「座れ。楽にしていい」


「失礼します」


 私はふかふかのソファーに座った。ふかふか。めっちゃふかふか。

 向かいのソファーには、団長が腰掛けている。


「昨日の件だが、ご苦労だった。エフィルロを逃したのは我々も同じだ。責めるつもりはない」


 団長はそう言って、私を労う。顔は怖いが、発言は優しい。しっかり話したことがなく、てっきり怖い天使だと思っていたが、そうではないみたいだ。


「問題はそこではない。昨日、我々はある者の裏切りにより奴らを逃す羽目になった。誰だかわかるか?」


「いえ……存じておりません」


 団長は、シルエトがあの場所から去る瞬間、私がそばにいたことを知らない。だから、シルエトが裏切り者だということを、私は知らないと思っている。


「そうか。非常に残念な話だが、シルエトが裏切りおった。あの魔法は、奴のものだ」


 私は俯き、何も言えなかった。この沈黙で、私が最後に逃してしまったことがバレてしまうかもしれない。


「何も言えないか。無理もない。お前と奴の仲は知っているつもりだ。大切な者の裏切りほど精神にダメージを負うものだ」


 予想外の発言だった。まさか、団長が私とシルエトの仲を把握しているとは。

 大切な者。そうなのかもしれない。私は、シルエトが大切だった。


「無理をするな。傷が癒えるまでは休んでもいい。気負うな。お前のせいではない」


 堪えていたはずの涙が、溢れ出した。

 私は仲間を、大切な親友を失ったのだ。それを、直視しないようにしていた。

 裏切られたことが嫌なんじゃない。私を置いて、どこかへ行ってしまったことが、何よりも、辛かった。


「許せ。我々は奴を始末しなければならない」


 私は頷いた。そうするしかなかった。その道を、シルエトは選んだのだから。


「話は以上だ」


 そう言ってミカエルは立ち上がった。

 そして、私の後ろにある部屋のドアへ向かう。


「それともう1つ」


 団長はそう言って、私の背後で立ち止まった。


「お前、嘘を吐いたな。あの時、ゲートから去るシルエトと話していたはずだ」


 背筋が凍る。バレている。


「ラファエルから聞いてな。お前が奴を逃したことも知っている。1人では、奴には敵わないなどと言ってな」


 終わりだ。裏切り者を逃し、団長に嘘を吐いた。

 私も、シルエトと同じ、裏切り者だ。

 

 このまま、私の首は斬られるのだと、覚悟を決めた時、ミカエルは話を続けた。


「王には黙っておいてやる。お前は仲間の、戦友の想いを汲んだだけなのだろう。まぁ、次は無いがな」


 団長は、その手に剣を握ることはなく、その発言は罵声でも怒声でもなかった。

 そして団長はため息を吐いて続ける。



「もっと自信を持て。お前には、1人で奴を倒せる実力がある」



 そう言って私の肩をそっと叩くと、団長は部屋を出て行った。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 私はセーリエ。天界騎士団第二部隊に所属している、戦う女の子。

 チャームポイントはお団子。毎日形を保たせるために、早起きして髪を結っている。


 昨日の団長との面談があった。とても緊張したが、団長と話せてよかったと思う。

 団長の優しさを見れた気がして、嬉しかった。

 心の傷も、仕事を休むほどではない。

 何よりその傷は、団長が癒してくれたはずだ。

 

 「これよしっと!」


 私は今日も、天界騎士団として、仕事を全うする。

 

 金髪のお団子がフリフリと揺れる。

 私の上機嫌な気持ちを表すかのように。


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