表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/68

閑話 ダイエットその2


「くがぁーー、すぴすぴすぴぃーーー。 

 くがぁーーー、すぴすぴすぴぃーーーー」


 ララウがうちにやってきてから、一ヶ月が経とうとしていた。

 世界樹の杖事件も解決し、ホッとしたのも束の間。

 ララウこと惰竜が、更に惰眠を貪るように。


「もう‥‥食えないのらーー‥‥むにゃむにゃ」


「コイツ‥‥‥」


 ソファーでゴロンと寝ているララウ。

 この惰竜。最近、太ってきた。特に腹が! それはもう、ぽっこりと出ている。


「このままではダメだ。‥‥やはり、何処に捨てるか」


「何を言ってるんです店長!」


「しかしだなリィーサ。この現状を見ろ。このままでは、なんでも屋にとっても、ララウにとってもよくない!」


「そうかもしれませんが・・・・。だからって捨てちゃダメですよ! 最後まで責任を持って飼わないと!」


「飼わないとって・・・・リィーサの中でララウはペット扱いなのか?」


「い、いえ、そう言う意味では無くてですね。ララウちゃんは友達ですし、可愛いですし。その、こうなんと言うか・・・・・・・」


「正直、ペットみたいなもんだろ? と言うか、そうでも思わなと俺は、今日までやり切れなかったんだけど?」


「・・・・・・うー、言い返せません」


 二人で、腹を出して寝るララウを見つめた。そして、互いに視線を合わせ、頷いた。


 どうにかしなければ、俺とリィーサはそう考えて、実行に移す事にした。ララウの更生・・・・いや、調教か? 

 まあ、どちらでもいい。もう・・・・甘やかすのはやめだ!





「ふがっ? んーー、腹が減ったのぉー。ん? あれ? えっ?

 動けん? ・・・・なんじゃこりゃあーーーー!!!」


「やっと起きたか」


 ララウは目覚めた。鎖でぐるぐる巻きにされた状態で。

 と言うか、なんで起きない? あんだけ『ジャラジャラ」と音してのに。野生の勘が、無くなってるんじゃないか?

 

「のぉあーーー! 何の真似じゃあーー!!」


「何の真似って、ララウがぐうたらしてるからに決まってるだろ!

 食っちゃ寝ぇの生活しやがって、店の物を勝手に食うし、家の物を壊すし、他にも色々と・・・・この大迷惑トカゲ!」


「貴様! エルー! トカゲと言うたな! 誇り高き古竜たる我をトカゲと!」


「あー、言った。・・・・あー、ララウとトカゲを比べるのは、トカゲに失礼だったな。空飛ぶ爬虫類に訂正してやる」


「むむむっ! 爬虫類? 意味は分からんが、何やら腹たつ言葉!

 エル! もう許さん! ぬぉぉぉぉーーー!!」

 

 ララウは鎖を引き千切りろうと、力を込める。しかし・・・・。


「ぬ! なんじゃこの鎖! 我の力にビクともせぬ!」


「当然だ。ララウを縛るのに、ただの鎖を使う訳ないだろ。

 その鎖には、魔鋼とミスリル。それに、アダマンタイトを加えた特別製の合金鎖だ! ララウの、それも人型の力では無理だ」


「ならば、元の姿になれば! ふん! ・・・・ふん! 

 ・・・・ふん! ・・・・何故だ! 何故元に戻れぬ!」


 ララウは人化の魔法を解いて、元の竜の姿に戻ろうとするが戻れず。「どうなっているのだ!」と頭を抱えていた。


「ララウが元に姿に戻り、鎖から抜け出す可能性を、俺が考えてない訳ないだろ。その鎖には、竜封じの魔法を付与してある。古竜の力すら封じる力だ。おかげで、いい素材を大量に使った。感謝しろ!!」


「ふざけるな! 何が感謝じゃ! おい! リィーサ!

 其方もエルに何とか言うのじゃ!」


 俺の後ろに控えていたリィーサに、ララウは助けを求めた。


「えーと、ララウちゃん? ごめん! このままだと、ララウちゃんがダメな人に・・・・」


「人じゃなくて、竜だけどな。ダメ竜か・・・・史上初じゃないか?

 ダメ竜と呼ばれる古竜は」


 俺はララウを見下ろしながら、そう言った。さすがのララウも、

その言葉には何かくるものがあったらしく。


「ぬっ、ダメ竜。古竜初の・・・・ダメ竜」


 ダメ竜に、かなりこたえたようだ。

 見かねたリィーサが「ララウちゃん。頑張ろう! ダメ竜になっちゃダメだよ」とララウに説いた。


「うぅー、リィーサ。分かった、分かったのだ!」


「ララウちゃん!」


「明日! 明日から頑張る! ・・・・何を頑張ればいいかは知らんが」


「「・・・・・・・・」」


「リィーサ、やっぱり捨ててこよう」


「なっ! エル! ちょっと待て!」


 俺の本気の目に、ララウが慌て出す。


「店長、ダメですって! それに、ララウちゃんを捨てたら、他に迷惑がかかりますよ」


「俺にかからないなら別に構わん」


「店長!」


 正直、ララウが他所に迷惑かけようが知らん! 俺に平和が訪れるなら、悪魔だって魂を売り渡す! ・・・・いや、売り渡すとかダメだな。本当に悪魔が来ても困るし。異世界だから、本当に来かねないし。


「ぬう! 我にどうしよと言うのじゃ!」


「あー、そうだな。取り敢えず、ダイエットからかな?

 ララウ。お前、自分で気づいてない様だけど。デブ竜になってるぞ」


「何を言っておるか! 我は太ってなどおらん! そもそも、竜の姿より食ってないのに太るか!」


 何故か、太ったと認めないララウ。

 いやいや、お前の腹を見ろ! 縛った鎖から、肉がはみ出てるだろ!


 そう言うが「太ってない」と、言い張るララウ。


「えーと・・・・店長、取り敢えず鎖を外してあげましょうよ」


「リィーサ! よく言った!」


「おい、リィーサ。ララウはまったく反省してないんだぞ?」


「そうかもしれませんが、さすがに鎖でグルグル巻きは・・・・。

 見た目的にもちょっと・・・・」


「見た目ねぇー」


 ・・・・うん。可愛い少女を鎖でぐるぐる巻き。危ない光景だな。

 人に見られたら、間違いなく衛兵を呼ばれるな。


「確かにそうだな。しかし、ララウを今、自由にするのは・・・・。

 あっ、そうだ。アレだ!」


「ちょっと待ってて」と言い残し、作業場に向かう。あるアイテムを取ってくるためだ。


「お待たせ!」


「店長それは! 首輪?」


 俺が取って来たは首輪だ。勿論、ただの首輪じゃない。

 鎖に付与してある、竜封じの力を付与してある。鎖より、その力は数段落ちるけど。


「なっ! そんな物を我につける気か!」


「はい、大人しくしてろよー」


「むがーー! こら! やめるのだ!」


「よし、これでオッケイ。ほれ、鎖外してやる」


『ジャラジャラ』と鎖を外し、ララウを解放してやる。するとララウは「ぬっふー! この時を待っておった! 

 我をコケにした恨み! 決して許さじ! とう!!」


『ぼん』と白煙が部屋に広がる。恐らく、人化を解いたのであろう。鎖より、竜封じの力は数段落ちるので、竜の姿に戻る事は出来るようだ。ただし・・・・。


 煙が晴れると、床の上にちょこんと立つチッコイ竜が居た。


「ララウちゃん? えっ? ララウちゃん? 

 可愛いーーーー!!!」と、リィーサは小さな古竜ララウにときめいたようだ。チビゴンと成り果てたララウにタックルし、ギューッと抱きしめ、頬擦りをして堪能し始めた。


「ララウちゃん! ララウちゃん! ララウちゃん!」


「ぬぉー! や、やめよリィーサ! うなぁーーー!!!」


 俺はその光景を・・・・ただ見ていた。


「あーえーと、リィーサ? そろそろ離しやれ」とリィーサに促す。さすがに、揉みくちゃにされるララウに同情してしまった。


「ぬう、酷い目にあったのだ」


「ご、ごめん。ララウちゃん」


「・・・・・・・・なあ、ララウ? そのまま飛んでみてくれ」


「ぬう? なんで?」


「いいから飛べ」


「むう、分かった。ふん! ふんふんふん!」


「「・・・・・・・・」」


「むふー! ふん! ふんふんふんふん!」


「「・・・・・・・・」」


「むがーー! ふん! ふんふんふんふんふん!!」


 ララウは飛ぼうと、翼を目一杯動かす。しかし、床から三十センチと上がらない。それを何度も何度も繰り返し、そして・・・・。


「・・・・エル。我、太ったかも」と、現実を認めた。


「取り敢えず、今日から食事制限な」


「・・・・うむ」と悲しそうに肩を落とすララウ。

「飛べない竜など竜では無い」と涙を零すしまつ。


「ララウちゃん大丈夫。エル店長のダイエット食品が有れば、元に戻れるから。私もララウちゃんのお手伝いするからね!」


「うぅ、リィーサ」


 リィーサに慰められ、少しは元気が出た様子のララウ。


「後、今日は一緒に寝よう。勿論、その姿でね」


「それは勘弁してほしい・・・・」


「今日くらいいいだろララウ。うん、これを罰にしよう」


「ままま、待て! エル!」


「わーーーい! ララウちゃんと一緒ーー!!」


「うぎゃーーー!!!」


 この後、ララウは自堕落な生活をやめた。食事制限に運動と、規則正しい生活を心がけ、ダイエットに成功する。因みに首輪は、反省した様なので、次の日には外してやった。しかしその後、リィーサが何かにつけて、ララウに首輪をつけようと画策するようになった。


 リィーサと一緒に寝たララウによると「あれは地獄、二度とごめんだ」との事らしい。リィーサ・・・・古竜にそこまで言わすとは、どんな寝相してるんだ?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ