ダークエルフからの依頼 その2
「バカだけではなく、アホまでつけおったなーー!!」
「何だ! つけて何が悪い! じゃあついでに大食いトカゲもつけようか?!」
「ぬがぁーーー!! 誰がトカゲじゃーーー!! もう怒った!!
エル! 表に出ろ!!」
「お、おい。エル、落ち着け!」
「落ち着いてますよナヴィアナさん。落ち着いてこのトカゲに罰を与えますよ」
「ふっふっふっ」と不敵に笑い、ララウと睨み合う。ナヴィアナさんを含め、ナターリアさん、ナターシャさん、オルターニャさんも、今にも始まりそうな古竜との闘いに、慌てていた。
「えっ、えぇっ? あの、エルちゃん? 古竜様? あ、あの、どうか落ち着いて!」
「凄い覇気だ。さすがは古竜と言った所か。
それに、エルも中々負けていないな。ふむ」
「って! 何、真面目に分析してますのナターシャ姉様!」
「バカ者、私もかなり慌てている。その所為だろうか? 逆に頭が冷静なのだ。アレか? 現実を理解しようと、頭がフル回転で動いているからか?」
「だから、真面目に分析してる場合ですか!!!」
「エル・・・・」
ララウと俺の間に『ゴゴゴォォォォォ』と互いの覇気がぶつかっているかのようなら空気が。そして!
「行くぞ! エルーー!!」
ララウが先に動く! 俺はそれを迎え撃つ!
「店長!! ララウちゃん!! ダメーーーー!!!」
突如として、リビングに響く声。その正体はリィーサであった!
「騒がしいと思って来てみたら。何やってるんですか!」
「リィーサ・・・・それはこっちのセリフだ」
「はい?」
「ん!!」と俺は、ララウの食べ散らかした大福を指さす。
するとリィーサは「あは、あはははは」と笑って誤魔化そうとした。なので俺は・・・・。
俺は、リィーサの目を見つめる。
「あの? て、店長?」
俺は、リィーサの目を更に見つめる。
「な、なんです店長。こ、怖いです!」
俺は、リィーサの目を更に更に見つめる。
「・・・・・すいません」
「はあ、まったく」
「むっ! リィーサは悪くない!」
「あーそうだな。一番悪いのはララウだからな」
「むう!」
「店長、ララウちゃんも反省してますからその辺で・・・・」
「いや、リィーサ。ララウはまったく反省してないと思うぞ」
「ほら見ろ」とララウの方なや視線をやると。先程まで、一触即発の状態だったにも関わらず。ララウはテーブルの上のジュースを手に取り、ゴキュゴキュと飲んでいた。
「だとしてもその、お手柔らかに・・・・」
「そう言えばリィーサ」
「はい、なんでしょうか店長」
「大福代は、リィーサの給料から引いとくからな」
「そんなぁーーー!!」
「後・・・・ララウ!」
「むっ、何だ?」
「今度こんな真似したら、ララウの尻尾を切り落として売るからな」
「ふぎゃ! なんじゃと!」
「本気・・・・だからな」
尻尾を切ると言われ、ララウは両手でお尻を押さえた。
よっぽど怖いのか、ちょっと震えていた。
「竜ってトカゲの仲間だから、また生えるだろ?」
「生えるかーーー!!!」
「店長。いくら何でもララウちゃんが可哀想ですよ!」
「リィーサ。三時のオヤツに用意していたチーズケーキ。ララウはリィーサの分も、残さず食べたぞ」
「切りましょう」
「ふぎゃー!」
「大丈夫ですララウちゃん。先っちょだけです」
「大丈夫な訳あるかーー!!」
リィーサはチーズケーキが大好物だ。食い物の恨みは恐ろしいと言うが・・・・更に付け加えるなら、女性の甘いお菓子を横取りするのは、更に大きな恨みになるのだろう。
そんなやりとりを、呆然と見つめていたダークエルフの四人。
我に帰ったオルターニャさんが、数回首を横に振った。
「あのーー、エルちゃん?」
「あっ、すいません。だいぶ話しがそれちゃいましたね」
「何の話しでしたっけ」と椅子に座り直し「話しの続きをしましょう」と促した。
オルターニャ「えーと、何を話してたんでしょうか?」
ナターリア「迷い人についてでしょうか?」
ナターシャ「それはもう話しただろ。それより、杖の・・・・杖を取り戻すための話しをだな」
オルターニャ「そうね。ナヴィアナから、貴方が色々な物を作っていると聞いて、貴方しかいないの。お願いエルちゃん」
「そもそも、何を作るんです?」
「確かにそうだな。エルの言う通りだ。オルターニャ姉上、その商人の欲しい物が分からなければどうしようも無いのでは?」
「「「確かに」」」
これは困ったと、ダークエルフの面々は俯いた。
そもそも・・・・「世界樹の杖って・・・・そんなに大事な物なんですか?」
俺は思わず疑問を口にした。ダークエルフの宝で、大事なのは分かる。でもそれは、苦労してでも取り返さないといけない物なのか。俺はそう思ってしまった。
ダークエルフの面々は、一瞬、何か言いそうになるが。
自分達は、その杖自体見た事すら無い事もあって、ちょっと複雑な顔をしていた。
それに「世界樹の杖か。どんな能力があるんだろ?」
「ふむ。世界樹の杖は、多少魔法の威力などを上げる魔術具程度の物だ。特別、とは言えぬな」
俺のボソッと出した質問に、答えたのはララウだった。
と言うか、ララウは杖の持ち主のダークエルフより知ってない?
オルターニャさんや、ナターシャさんなんかが、目を見開いて驚いてるぞ。
「ダークエルフの宝、世界樹の杖は大した事無いのですか」とオルターニャさんはショックを受けている。
それに対してナターシャさんは「まあ、そんなものだろうな」と溢す。もともと世界樹の杖に関して、そこまでの思い入れは無いようだ。
「特別とは言えないか。じゃあ、そこまでの力はないのか」
「まあな。ただ・・・・」
「ただ?」
「凄まじい力は無いが・・・・うむ。ある意味特別な力を持っている。とは聞いたな」
「「「「そ、それは一体!!!!」」」」
ダークエルフの面々は、身を乗り出す。ララウの、ある意味特別な力に反応して。
「ふむ。我も詳しくは知らんが・・・・何でも、世界樹の苗木を育てるのに必要とか聞いたな」
「「「「「世界樹の苗木?」」」」」
「うむ。世界樹の苗木だ」
杖と苗木がどう関係するんだ?