ララウの初めての街
「ふう、取り敢えず門はクリア出来たか」
ナヴィアナさんをおんぶして、ララウと一緒に門を通った。
門では、ララウが街に入るためのお金を支払うだけですんだ。
「何事も起きなくて、本当に良かった」
「何か引っかかる言い方だな」
「気にするなララウ。俺の家はコッチだ」
「うむ。あないせよ」
お前は何処ぞの、貴族王族のお嬢様か何か?!
・・・・いや、案外古竜の王族とかありそうだな。実は竜王の娘だ! とか・・・・まさかな。そもそも、竜王とか居るか分からんし。
門をくぐった後、ナヴィアナさんとは別れた。冒険者ギルドに報告があるとの事だ。抜けた腰も回復したようで、自分の足で歩いてギルドに向かった。
それも何故か、かなり早歩きで・・・・。怖かったのかな?
「ララウ、コッチだ」
「ふむ」
大通りから、脇道へ入る。ララウは「ほーー」と辺りをキョロキョロしながら着いて来ていた。空から見下ろす事はあっても、街中から見上げるのは初めてなのだろう。見る物全てが、珍しくて興味深いのだと思う。
「ララウ。ここが俺の店だ」
「ほー、店のぉ。美味な物はあるのか?」
「・・・・まだ食う気なのか?」
「歩いたから腹が減った」
「減る程の距離、歩いてないだろ?」
「ふん」
まったく、なんて食いしんぼうな古竜なんだか。
「ほら、さっさと入るぞ。・・・・そう言えば、リィーサは帰って来て・・・・『カランカラン』るな。ただいまぁー」
「あっ、お帰りなさい。店長」
店のドアを開けると、奥からリィーサが出迎えてくれた。
「ただいま、リィーサ。えーーと、後、お客がいるんだ」
チラッと視線を後ろに向ける。その視線につられ、リィーサも俺の後ろに目を向けた。
「えーーと、ララウだ」
「うむ、ララウである」
小さな胸を張る古竜。と言うか、なんでそんなに偉そうなんだ?
まあ、古竜だから偉い・・・のか?
「ララウちゃんですね。私はリィーサと言います。よろしくお願いしますね」
「ぶほっ!!」
「なっ!!」
「えっ、えぇっ?!」
リィーサのララウちゃん呼びに、俺は思わず吹いてしまった。
ララウはララウで、ちゃん呼びに「ななな」と言った顔をしていた。
「えっ、えっ? えぇっ?! わ、私、何か変な事言いましたか?」
「いや、別に変な事は言ってないよ。・・・・ぶぷっ」
「小娘! 我は貴様より年上だ! それとエル! 何故笑っている!」
「わ、笑ってないよ」
「だったらコッチを見ろ!」
チラ・・・・「ぐふっ、ぷあっはっはっは」
「エル! 貴様ーー!!」
「すまんすまん」
「ぐぬぅ!」
「あのぉ、一体、何がどう言う事なんです?」
「えーと、取り敢えず、お茶でもしながら話そう」
「お茶ですか? はい。でも、もうすぐ夕食ですよ?」
「ふがっ! メシ! エル! 我に美味なる物を食わせるのだ!」
「はいはい」
☆☆☆☆☆☆☆☆
「えぇーーーーーーーー!!!」
ララウの正体と、一緒に連れ帰った理由を説明すると。リィーサは今日一番の声をあげた。
「どどど、どう言う事ですか? こここ、古竜って?!
えっ? えぇっ?!」
「あー、落ち着けリィーサ。大丈夫だから」
理解不能と言わんばかりに、頭を抱えるリィーサ。まあ、そうなるのが普通なのかな? 古竜だし。
「ふふふっ、我の偉大さを知ったか」
「食い物寄越せとか言うけどね。偉大な古竜なのに」
「ぐぬ・・・・偉大なる古竜には、美味なる物を献上するべきである!」
「はいはい。そう言う事は、両手に持ったお菓子を置いて言ってくれ」
「むう」
茶菓子にと、駄菓子を出したのだが。ララウはかなり気に入ったようで、両手に持って食べていた。
「お茶も飲めよ」
「ぬう。仕方ないのぉー、砂糖はたっぷり入れてくれ」
「程々にな」
「むう」
因みに、リィーサは思考停止状態に陥っていた。
静かだなと思った。あっ、魂が抜けかけてるような顔してる。
「さてと、夕飯は何にしようかな? 正直、作るの面倒だな今日は」
「おい! 我に美味なる物を食わすと言う約束はどうした!」
「そんな約束、した覚え無いぞ。勝手に着いて来たくせに」
「ぬう」
「あっ、そうだ。今日はアンナさんのお店に行くか。様子見もかねて」
「ぬ? お店?」
「あぁ。美味しいご飯を出すお店だぞ」
「おぉ! よし行こう! 直ぐ行こう!」
「そう、慌てるな。お店に行く前に・・・・おーーーい! リィーサ!
戻ってこーーーーい!」
「はっ! ・・・・店長、夢見てました。古竜さんがお店にやっ来た夢です」
「いや、現実。現実だから、目の前にいるから」
「へっ?」
「うむ。古竜のララウである」
「ひょへぇーーーーー!!!!」
あっ、また旅立ってしまった。リィーサをこの後、二度も同じ事を繰り返した。一般人のリィーサには、刺激がありすぎたのだろう。リィーサごめんねと、心の中で一応謝っておく。
「さて、アンナさんのお店に行きますか」
「美味なる物が、我を呼んでいる!」
「ほへぇーーー」
「リィーサ! リィーサ! 魂が抜けかけてるぞ!」
「別に抜けておらんぞ?」
「いや、そう言う顔してるって意味だ。と言うか、見えるのか?」
「まあ、古竜だからな。我の目なら見える。そなたの魂は何と言うか・・・・・・・・いや、なんでもない」
「おい! 言いかけて止めるなよ! 気にぬるだろうが!」
「そんなのはどうでもいい。さっさと我を、美味なる物の場所へ連れれ行くのだ!」
「・・・・・・・・」・・・・気になる。俺の魂に何が・・・・。
「ほら、さっさと案内せい!」
「・・・・はいはい」