呪符 その3
「オーガを探してたのに、まさかオークの集落を見つけてしまうとは・・・・どうしたものか」
森奥深くへと来てみれば、オークの集落が・・・・。
現在、風下から近寄り、茂みから様子を窺っている。
「かなりの数だ。二十・・・・いや三十はいるか?」
木を地面に突き刺して、簡単に作られた砦や家屋。
嵐でもきたら、飛んでいってしまいそうな造りだ。
「さて、どうし・・・・やっぱり、見られているよな?」
背後から、何やらじぃーーーっと視線が突き刺さる・・・・ような気がする。・・・・・やっぱり気の所為じゃない気が・・・・。
「「「「「フゴ、フゴフゴ」」」」」」
「ん? なんかオークに動き・・・・「グゴォォォォォ!!」
お、オーガ?! なんでオーガが、オークの集落に?
もしかして、オーガがオークを率いてるのか?!
これって、結構ヤバイんじゃ? 冒険者ギルドの連中、この事に気づいてないのか?
一匹二匹ならたいした事ないが、群れになると大変な事になるのが魔物。その中でも、ゴブリンとオークは厄介だ。知能は高く無いが、欲望に忠実なので、欲望のまま暴れまわる厄介者だ。
さて、どうしよう。手持ちの呪符は・・・・まだそれなりにある。やるか? 討伐依頼のオーガも居るしな。よろう!
でも、数が多いな。呪符にこだわる必要は無いけど。うーん、どうせなら、呪符倒したいし。・・・・よし、やってみるか!
まずは、手持ちの呪符を確認と。えーと、残ってるのは・・・・攻撃系の呪符が五枚と、防御系がニ枚。防御系の呪符、まだ使ってなかったな。試そうにも、試す機会もな無かったからな。後は、回復系は作って無いし、付与系は・・・・強化を施す呪符は持って来てないから、敵を弱体化させる呪符だけだ。
「麻痺は使ったから・・・・毒? いや、ここはまだ使ってないコイツにしよう」
選んだ呪符は、眠りの呪符。その名の通り、相手を眠らせる効果がある。うーーん、使用範囲を考えると、手持ちの三枚全て使うか。
上中下級の呪符を、一枚ずつを手にとり。離れた茂みから、オークの集落に向かって放つ。
「うりゃ!」
放たれた三枚の呪符は、宙を舞って集落の方へ。そして、呪符が燃え尽きたと思ったと同時に、オークとオーガがコックリコックリ
とし始め、そのま倒れるように眠りについた。
「全部眠ったかな?」
確認しつつ、茂みからゆっくり出る。まずは、オークの集落入り口を守っていた二匹のオークの側へ。
「「フゴゴゴォォォァァ」」
「なんつうイビキ。さて、ちゃんとトドメを刺しておかないと。
残ってる攻撃系の呪符を試そう。えーと、うん、コレにしよう」
使うのは、水属性の魔法が封じられた呪符だ。
「さて、水球の呪符!」
呪符をかざすと、呪符からサッカーボール程の水球が、二つ出現した。そして、その水球はオークの頭にちゃぷんと張り付く。
「「フ・・・・フゴボボボボボボ・・ボ・・・・ボ・・・・・・」」
二匹のオークは溺死した。
「・・・・・・あれ? 思った魔法と違う」
思ったより死に方がちょっと・・・・。確かゲームだと、水球が勢いよく当たって、ダメージを与える筈なのに。
ゲームとの違いが、こんな形であらわれるとは思わなかった。
「兎に角、オークとオーガにトドメを・・・・」
手持ちの呪符を使い、オーク達を始末していく。あるオークは毒で、またあるオークは、風の刃で切り刻まれ。またあるオークは雷撃で、と言う風に、オーク達にトドメを刺していく。最後に残ったオーガに、トドメを刺そうと思い近づいた瞬間、オーガの上体が起き上がった。
「あっ、目が覚めちゃった?」
「ぐがっ? ぐがぐか」
頭を左右に振り、起き上がるオーガ。何が起きたか分からず、辺りにオークの死体が横たわっているのを見て、首を傾げていた。
「グゴォォォォォ!」
さて、最後の攻撃用の呪符。手持ちでは、一番強力なやつだ。
「目覚めたとこ悪いけど。烈火の呪符!」
「グゴォォォォォ」
オーガは火達磨になり、転がりまわる。しかし、火は消えない。
呪符が燃え尽きるまで、効果は続く。オーガは十秒以上、烈火の如く燃え続け、黒焦げになっていた。
辺りに、肉の焼ける嫌な臭いが充満する。自分で作ってなんだが、おのれの所業に若干引いた。
「・・・・気分悪いな、はあーー。兎に角、呪符は問題ない事が分かったし。よしとす・・」
油断した。俺の馬鹿馬鹿馬鹿!
黒焦げになって、死んだと思ったオーガは、まだ生きていた。
全身を真っ黒に焼かれながらも、立ち上がって俺に反撃しようとしていた。
「ヤバ・・」
「グゴォォォォォ!!」
「エル!」
えっ?
『ドサッ!』
「大丈夫かエル?」
「何油断しているのです!」
「・・・・・・・・なんで二人がいる訳?」
「「あっ、しまった。つい・・・・」」
俺の危機に、二人が飛び出してオーガを倒した事で、二人のスーキングが発覚。さすがに俺も、ちょっぴり怒った。けど、助けてもらったし、あまり強くは怒れなかった。
「所でだ。エルが使っていた物はなんだ?」
「えぇ、そうよ! アレは何よ!」
「呪符の事ですか? 今度売り出す予定ですが?」
「う、売るのかアレを!」
「あんた・・・・冒険者の仕事を奪う気なの?!」
何故か、途中から俺が怒られる事に。なんで冒険者の仕事を奪う事になるんだ? まあいいか。取り敢えず、上中級の呪符は、販売禁止にしとこう。