衣料品店の立ち上げ その3
「金貨二枚と銀貨八枚・・・・」
「おのれー! あの質屋、足元見やがってーー!」
「パメラ、金貨二枚になっただけでもいい方よ」
「そうですね。リビィーさんの言う通りです」
質屋に売却した服は、金貨二枚と銀貨八枚になった。因みに、金貨は銀貨二十枚の価値だ。
「利子分以上にはなるけど・・・・」
「問題はその後なんですよねー」
どうしたものか・・・・いっその事「俺が買い上げた方が早いよな」
「「えっ?」」
しまった声に出してた。気付いて口を手で塞ぐが、時既に遅く。
二人には、しっかりと聞かれていた。
「えーと、エル君。どう言う意味なのかしら?」
「買い上げる・・・・まさかお店を? はっ! 貴方、それが目的で来たんですね!」
「違いますから。なんでパメラさんは、そう右斜め上に考えるんですか」
「でも・・・・それが一番いいかもね」
「えっ? ちょっと、リビィー! 何言ってるんです!」
「だって、パメラに任すとまた・・・・ねぇ」
「ねぇ、ってなんですか! ねぇ、って! 同じ失敗は繰り返しませんよ私でも!」
「繰り返すも何も。このままだと、やり直す事も出来ないですけど」
「・・・・・・・・」
俺の指摘に黙るパメラさん。なんにせよ、再建するには、借金をどうにかしないといけない。現状、なんでも屋の服をここで販売した所で。金貨五十枚を返すのに、どれだけかかるか。
「パメラさん。いっその事、うちの衣料品を扱う、代理店になりませんか?」
「「代理店?」」
「はい。うちの衣料品を、この店が代理店となって、ここで販売するんです」
「エル君・・・・それは、なんでも屋から商品を卸してもらうとは違うの?」
「・・・・はい。最初はそれでいけるなら良かったのですが。正直、それではダメでしょう」
「どうして?」
「パメラさんが利益を出すには、うちから仕入れた衣料品を、仕入れ値より高く売らないといけません。安くていい品、として認識されてる以上。値段を上げたら、買って貰えなくなる可能性が。それに、ギリギリの値で捌いたとしても、利益は微々たる物です。借金返済の期間に間に合いません」
「えっ? どう言う事? 難しくて分からないー」
パメラさんは、理解出来なかったのか。頭を抱えていた。
ただ、リビィーさんは「成る程、確かにそうね」と理解してくれたようだ。
「それじゃあどうするの?」
「はい、だから俺が借金を肩代わりします」
「「えぇっ!!」」
「勿論、タダじゃ無いですよ? その代わりに、このお店を代理店としての使用権を下さい。あっ、パメラさんは従業員として働いて下さいね。それと、給料はちゃんと払いますよ」
「えっ、えっ、何? 何言ってるの?」
パメラさんは混乱し。更に頭を抱える。
「・・・・・・・・エル君!」
「はい、リビィーさん」
「その条件を飲むわ!」
「ちょっと! なんでリビィーが決めるんですか!」
「こんないい話しは無いわよパメラ? それに・・・・」
「それに?」
「パメラにお店を任すよりずっといいもの」
「酷いですリビィー!」
「酷いもんですか! なおばあちゃんのお大切な店を潰しかけといて、何言ってるのよ!」
「うぅ、それを言われると・・・・」
「エル君なら悪い様にしないから大丈夫よ」
「本当に?」
「えぇ。ねっ、エル君」
「はい、勿論。ただ・・・・」
「「ただ?」」
「何かやらかしたら・・・・ただじゃおかないです」
「・・・・リビィー! この人ダメです! 怖いです!」
「エル君・・・・それでいいわ!」
「リビィーー!!」
こうして、なんでも屋から衣料品専門のお店が、オープンする事になりました。
因みに、売れ行きはと言うと・・・・オープン初日から長蛇の列! その日の内に、お店の商品が完売するという人気ぶりに。
「この服ください!」「この服の色違いの物、ありますか?」
「このスカート可愛いわ!」「きゃーー、コレ素敵ー!」
「がぁーー! 忙しいです! 死にそうなくらい忙しいです!」
「良かったわねパメラ。エル君に借金返す為にも頑張って」
「ぐうーー! これってもしかして、借金した相手が変わっただけなんじゃ? しかも、逆に大変になっただけなんじゃ?」
「何言ってるのよ。マイケルさんに借金返せて、お店も守れて、ここで働けて、いい事尽くめでしょ?」
「リビィー手伝ってー」
「私はお客様として来てるの。あら、これいいわ」
「ぐわぁーーーー!!」
その頃、なんでも屋の店長は・・・・。
「静かになったな、リィーサ」
「そうですね。でも・・・・静か過ぎて心配になりませんか?」
「そうか?」
取り敢えず、テコ入れ成功って事で・・・・。
やっぱり店番は、静かにのんびりするのが一番だな。